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234名が参加!JALや積水ハウスなどD&I推進企業8社と金融庁小崎氏らが登壇『ダイバーシティ&インクルージョンカンファレンス2022』イベントレポート(後編)

こんにちは、D&I Award運営事務局です。

株式会社JobRainbow
https://jobrainbow.jp/corp)は、日本のダイバーシティ&インクルージョンを牽引する「D&Iリーダーズ」が集い、日本のD&Iのこれからを考えるイベント、「ダイバーシティ&インクルージョン カンファレンス 2022」を9/1(木)にオンラインにて開催し、D&I推進に携わる全国の企業担当者を中心に200名以上の方にご参加いただきました。
業種・規模も多様な企業8社のご担当者様と金融庁の小崎亜依子様にご登壇いただき、様々な切り口で日本のD&I推進の現状と未来を考えることができる、盛りだくさんのプログラムの様子をレポートします。

本記事はイベントレポートの後編となります。
まだ前編を読んでいない方は、こちらから↓


イベント内容

企業事例紹介3【日本航空株式会社】

ご登壇者:人財戦略部 D&I推進グループ アシスタントマネージャー上野桃子様
企業事例紹介の3社目は、日本航空株式会社 人財戦略部 D&I推進グループ 上野桃子様にご登壇いただき、当社の幅広いD&Iの取組みの中でも、障害のある社員の活躍推進に関する興味深い事例をご紹介いただきました。

日本航空株式会社は、2014年にトップコミットメントとして「ダイバーシティ宣言」を発表し、継続して女性社員・シニア社員・外国籍社員・障害のある社員などの活躍推進に関するトップメッセージの発信や、制度づくりに取り組んでいます。

障害のある社員の活躍推進において、社員が働きやすい環境づくりのための「心のバリアフリー」浸透を目的とした教育やイベントはもちろん、障害のある社員が特性を活かして活躍出来る場や新規事業の開拓に取り組んでいます。例えば客室乗務員として活躍していた女性社員が子会社「JAL サンライト」の社長に就任した際には、障害者雇用×美容の発想から社員向けのネイルルームを開設し、人気を博しています。

さらに車椅子ユーザー社員に旅行のツアーを企画してもらうことで、サービスのアクセシビリティを向上させた旅行を実現するなど、当事者目線を活かし全ての人が自由に旅を楽しめるような未来の実現に向けて取り組んでおられると伺いました。

企業事例紹介4【株式会社アワーズ】

ご登壇者:統轄部総務課 チームリーダー 出口 貴之様
テーマパーク「アドベンチャーワールド」(和歌山県白浜市)などを運営する株式会社アワーズ様からは、統轄部総務課チームリーダー 出口貴之様にご登壇いただきました。

当社は、「こころで時を創るSmile カンパニー」を企業理念に掲げ、誰もが自由に生き方を選択できる多様性溢れる社会の実現を目指しています。

アドベンチャーワールドでは、2017年より、障害のあるお子様やそのご家族を無料でパークに招待する「ドリームデイ・アット・ザ・ナイト」を開催しています。4回目の2021年には、より多くの方に楽しんでいただきたいという思いから、1日貸切の「ドリームデイ・アット・ザ・ズー」を開催しました。全国のボランティアサポーター、様々な企業と連携し、約1000組4000人ものお客様が参加するイベントとなり、イルカショーや動物との触れ合いなどを通して、参加された方からは「人目を気にせず安心して参加できた」など、多くの満足度の高い声が届いたそうです。開催する上で、当社では社員全員で車椅子の使い方等を学ぶなど、より多くのSmileの創造に向けて社員一丸となって取り組まれていることが窺えます。

最後には、当社が大切にする言葉「だれもがキラボシ」をご紹介いただきました。全ての社員や動物たちが大切な存在であるという意味が込められており、当社の理念の根底にある思いだと言います。

「ドリームデイ・アット・ザ・ズー 2022」
2022年11月3日(祝・木)開催
https://aws-dream.com/

企業事例紹介5【 株式会社CRAZY】

ご登壇者:CRAZY WEDDING プロデューサー 渡部恵里様
5社目の事例紹介セッションには、株式会社CRAZY様よりCRAZY WEDDING プロデューサー 渡部恵里様にご登壇いただき、当社のパーパスやパーパスを軸とした組織づくり、LGBTQ+の取組みなどについてお話しいただきました。

株式会社CRAZYがパーパスとして掲げるのは、「私たちは、人々が愛し合うための機会と勇気を提供し、パートナーシップの分断を解消します」。それをお祝いを通じて実現し、人と人が繋がる機会を創出しています。

組織づくりでもパーパスは軸になっており、社員間での感情共有や、パートナーシップについて学ぶ機会を継続的に設ける事で、人間関係を深められるカルチャーを実現しています。例えば、「ライフプレゼンテーション」の取組みでは、入社する社員がライフヒストリーと未来への希望を全社員に伝える機会を作り、その社員と共に歩んでいく雰囲気を創り出しています。働き方では、あえて固定化した制度ではなく、個々の望む働き方と家族のあり方に合ったワークスタイルを実現しています。

LGBTQ+の取組みは、渡部様が発起人として「CELEBRATION for ALL」の立上げから始まり、3年間で、実例ゼロから25組のセクシュアルマイノリティカップルの結婚式と人生の祝福をしてきました。お客様をカテゴライズするのではなく、一人のお客様としてその方に合った祝福ができるように、毎週の社内勉強会などを通じて学びながら実践されていると言います。より良いパートナーシップの実現に向け、これからもD&Iを進めていきたいとお話しされていました。

資料:
CRAZY MAGAZINE
https://www.crazy.co.jp/magazine

キーノートセッション1「『ちがい』を『つよみ』に転換するDEI 〜Equityの観点から『一人ひとりが活躍する社会』を再考する〜」

ご登壇者様:デロイト トーマツ グループ Diversity, Equity & Inclusion (DEI) マネージャー 高畑有未様
キーノートセッションでは、デロイト トーマツ グループ Diversity, Equity & Inclusion マネージャー 高畑有未様にご登壇いただき、当グループのDEIのお取組みだけでなく、Equity(公平性)の観点を取り入れた、「ちがい」を「つよみ」に変えられる組織づくりなどについてお話しをいただきました。

VUCAの時代では、多様な人材が集まることで、新たな視点での課題発見やサービス創出が可能になり、イノベーションや持続可能な社会・経済に繋がります。それができる、しなやかな組織は変革に対応できるため、DEIは非常に大事な道標であると言えます。

Equity(公平性)とは
混同しやすい「平等」と「公平性」の違いについてご説明いただきました。「平等」は、個々の違いを視野に入れずに、全員に平等に同じものを提供している状態を指します。それにより必要なサポートが必要とする人に十分に届かないことがあります。
「公平」は、個人の違いに着目して、それぞれに必要な分のサポートを提供することで、機会が平等になっている状態のことです。
世の中では、人によって見えている景色が異なるものの、同じ特性の人々のみで制度等を作ってしまうことで、自分達に見えていない視点を無いものにしてしまうと言います。それを是正する考え方として、Equity(公平性)がとても重要です。

『ちがいに「気づき」つよみを「築く」』
デロイト トーマツ グループ様では、ちがいに「気づき」つよみを「築く」をDEIのビジョンに掲げられています。
個々の違い(ジェンダー/人種・民族/障害/ライフスタイル/特性・専門性など)を大事にして強みにできるように、定量的な取組みと定性的な取組みの両面で進めています。さらにそれらの取組みが当グループ内だけで閉じてしまわず、社内のインクルージョン推進を社会のインクルージョン推進に繋げられるようにされているそうです。

「ちがい」を「つよみ」に変える具体的な取組み
今回、具体的なお取組みとしてご紹介いただいたのが、「パネルプロミス」です。当グループが協賛・登壇する社内外のイベント等にて、登壇者の多様性を確保することで、新たな視点とイノベーション創出に繋げる施策です。ねらいは2つあると言います。
1つ目は、リーダーやプロフェッショナルの人物像を多様化することで、バイアスを軽減し、イベント自体のエクスペリエンスを向上すること、
2つ目は、「数合わせ」の多様性ではなく、これまで看過されてきた視点から革新的な質の高い議論・対話を生み出すこと
です。

施策を導入してから2年。試行錯誤を重ねる中で気付きや課題もあったそうです。
議題によっては専門家が男性しかいないという声が上がる時もあり、その場合、「専門家」の意味を一度棚卸する必要があると言います。それでもいない場合は、(社会や業界で)公平な機会が欠如しているということ。スポットライトが当たらない人々に対して、Equityの観点からコーチング等の機会の必要性が求められます。
「パネルプロミス」の実践によって、新たな視点と化学反応が生まれ、組織やビジネスにおいて変化の連鎖が起きるようになったと、そのインパクトについても語っていただきました。

パンデミックによるニューノーマル x Equity
新型コロナウイルスパンデミックにより企業と個人の関係性に変化が見られるようになりました。公(work)と私(personal)の2つの領域の重なりが拡大し、これまで私的な問題と考えられてきた事柄も企業のサポートが必要になってきています。例えば、生殖医療や更年期、メンタルヘルス、家庭内暴力(DV)など。
当グループでは、これらについて外部団体との連携や調査、社内勉強会の実施等の取組みを進めており、会社として、企業と個人の新たな関係を踏まえて、多様なメンバーが生き生きと活躍できるように、個人の違いを前提にした取組みに注力されています

セッションの最後に、今後のDEI推進について、コメントをいただきました。
1つ目は、DEIは「自然に進む状態」ではない、ということ。
2つ目は、"制度"と"風土"がセットで初めて機能する、ということ。
3つ目は、多様な視点で、ニーズとサポートが合致していない領域(=Equityが必要な層)に対する施策を検討することで、インクルーシブな組織づくりと新たな課題発掘・価値創造に繋がる、ということ。

課題は新たな価値創造に直結する、という思いで、これからもDEIを推進していきたい」と締め括っていただきました。

高畑様、ありがとうございました!

資料:
「2022 Women@Work」日本版レポート
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/about-deloitte/news-releases/jp-2022-deloitte-global-women-at-work-report-jp.pdf

キーノートセッション2「D&Iと金融を取り巻く国内外の動向〜スタートアップのジェンダーダイバーシティから課題を紐解く」

ご登壇者様:金融庁 総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室 
課長補佐 小崎亜依子様
本カンファレンス最後のセッションには、金融庁 小崎亜依子様にご登壇いただき、国内外のサステナブルファイナンスの動向やスタートアップエコシステムにおけるジェンダーダイバーシティなどについてお話しいただきました。

D&Iと金融界の状況
世界では、D&I含むサステナブルイシューに考慮していない企業とは取引がされないなどの動きもあり、PRI(責任投資原則)署名機関数と運用資産も急増しています。
IPO支援において、取締役会の多様性の条件を満たしている企業のみ支援対象とする方針が打ち出されたり、NASDAQや台湾の取引所においても、上場企業に対して取締役会のダイバーシティの目標値を定めて、多様なメンバーを登用できない場合はその理由の説明が義務付けられたりという動きも出てきています。世界的にサステナブルファイナンス市場は急拡大しています。

日本においても、昨年金融庁がサステナブルファイナンス推進室を設置してサステナビリティ推進に取り組んでいます。また、ガバナンスコードの改訂(2021年6月)がされるなど、企業の中核人材の多様性を確保する動きや、それを評価・後押しする投資家が増えていくのではないか、と予想されます。

このようにマクロレベルでは、ダイバーシティの重要性は合意されています。しかし、ミクロレベルになると、合意形成や課題解決が一筋縄ではいかない部分があるという、鋭いご指摘もありました。

スタートアップエコシステムのジェンダーダイバーシティ課題
小崎様が金融庁政策オープンラボにて中心となって作成・公開された、「スタートアップエコシステムの ジェンダーダイバーシティ課題解決に向けた提案」をもとに、スタートアップコミュニティにおけるジェンダーダイバーシティの問題についてもお話しいただきました。

この問題は、これまでデータがなかったために顕在化してこなかったと言います。しかし調査を通じて、起業家(フリーランス含む)女性比率は34%、資金調達上位50社のうち創業者/社長が女性の割合は2%(2019年)、上場企業(2021年)の女性比率は2%など、ジェンダーの偏りの問題が浮き彫りとなりました。

この原因には、構造的な課題があると言います。
起業家コミュニティへのアクセスが限られていることから、特に女性が有益な情報を得にくかったり、キャピタリストや資金の出し手にジェンダーバイアスがあったり、起業家ネットワーク内に女性起業家が少ないことで評価されづらかったりなど。
解決をするにも、どこから着手すれば良いか分からない状態になっていると言いますが、一人ひとりの行動変容が重要だとお話しいただきました。

続いて、国のD&Iへの姿勢について小崎様個人としてのご意見を伺いました。
「D&Iは企業の成長戦略である」という認識は普及しており、内閣や経産省等も取り組んできました。マクロでは重要性の認識が合致しているものの、ミクロとなると、取組む目的の腹落ちや合意形成がされていないケースが多々あると言います。

人的資本開示の義務化とガイドラインの年内発表を受けて、人的資本可視化についても言及いただきました。

情報開示については、金融庁でワーキンググループを設置し議論が進められてきました。人材育成方針、指標や目標進捗、男女賃金格差や男性育休取得比率、女性管理職比率などの法定開示項目が定められており、これらは投資家への有益な情報を提示するという法律に基づいてミスや抜け漏れなく開示することが求められます。一方で、詳細は任意事項として開示するなど、各社でバランスを取っていくことになると思われます。
男女賃金格差などの項目は非常に定量化されていますが、このような数値がどのように競争力に繋がるのか、などの定性的な点に関しては、定量的成果を補完する形で、各社で開示をしていくことになります。

セッションの最後には、今後のD&I推進について、「このようなカンファレンスに多くの方が参加し、話し合えるのはとても大事なこと。同時に、カンファレンスに来ていない人に対して、ネットワークなどを活用していかに届けていくか、がとても重要である」とコメントいただきました。

小崎様、ありがとうございました!

資料:
金融庁政策オープンラボ「スタートアップエコシステムの ジェンダーダイバーシティ課題解決に向けた提案」
https://www.fsa.go.jp/common/about/kaikaku/openpolicylab/dei_startup01.pdf


参加者の声

総勢200名以上の方にご参加いただき、満足度は95%以上にのぼりました。
参加いただいた方の声を一部ご紹介いたします。

「多種多様な企業のD&I推進のそれぞれのアプローチ方法が知れて興味深い」
「普段は聞けない他社事例が参考になった」
「最新情報がまとまっていて有益だった」  

カンファレンスのトピックの多様性や、普段は知ることのできない他社事例の紹介があったことなどが好評でした!

ネットワーキングについては、参加者間で新たなコラボレーションが生まれる機会になったとのことでした。
時間が足りないというご意見や、登壇者と参加者でより双方向のコミュニケーションができたら良い、というご意見もいただきましたので、次回以降の改善に役立ててまいります。貴重なご意見をありがとうございました。

来年度以降は、対面での開催を目指し、D&I推進に携わる方々が一つの場所に集まって化学反応を生み出せるように、運営チーム一同精進してまいります。

カンファレンスを終えて

D&I推進はリソースが豊富な大企業やイノベーションを重要視する企業がやるもの、というイメージをお持ちの方が多いのが現状です。しかし今回のカンファレンスで企業規模や業種も様々な企業にそれぞれのD&I推進事例を紹介していただくことで、「D&I推進における多様性」も発信する機会になったのではないかと思います。

経営トップがD&Iを牽引すること、社内制度を整えていくこと、カルチャー醸成を重要視すること、官民力を合わせて日本のD&Iを引っ張っていくことなど、様々な切り口でD&I推進に奮闘する方のお話が聞ける濃厚な一日でした。また、業種の垣根を越えてD&Iについて真剣に取り組んでいらっしゃる方が集まることで、日本のD&Iの明るい未来を描くことが出来ました。

JobRainbowはこれからも、D&Iに取り組む人々が繋がれるプラットフォームを作っていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします!


関連情報

無料オンラインセミナー「2022年のD&Iのトレンドと2030年のD&Iの未来予測」
日時:9月28日(水)13:00〜
場所:オンライン(Zoom)
セミナーお申込みはこちらhttps://share.hsforms.com/11SDlBhhlQESWl46GynNxIQcgi9h

「D&Iアワード2022」締切まで残り2ヶ月!
「D&Iアワード2022」のエントリー締め切りまであと2か月を切りました!
今回カンファレンスにご登壇いただいた8社も、昨年度のアワードの認定・授賞企業というご縁で各社の素晴らしい取り組みを発信していただきました。これからもJobRainbowは、D&I推進に携わる人たちが情報交換し、繋がることが出来る場所を提供して参りたいと思います。
アワードに参加して日本のD&I推進コミュニティの一員になりませんか?
皆様のご応募お待ちしております!
D&Iアワード公式HP:https://diaward.jobrainbow.jp/


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