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好きな詩 とか(2022年)

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#自由詩

「1カウント」【詩】

もし
ここから
今すぐに
消えてしまえたなら

名前も
国籍も
血、肉、骨
においさえ

この世に存在したという
あらゆる
痕跡を
すべて消し去り

スマホ操作のごとく
ワンクリックで
簡単に
なかったことに
してしまえたら

宇宙にも行ける
この時代
それぐらいのこと
できてしまうんじゃないか?

ふとそんな幻想を
抱いてみるけど

曲がりなりに生きてきた
経験が
不可能であることを
私にわから

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世界の猫へ、この夜を捧ぐ

世界の猫へ、この夜を捧ぐ

夜は猫たちの国だ
光源の知れない僅かな反射光で煌めく両眼が
誰にも見えない黒の果てを射抜く
誰も喋らないただ静かな夜がくることを
猫たちは太古から祈っている
祈りの中で彼らは生まれくる

触れられぬことを代償に生きるのだ
強さではなく弱さ故に
闇の中で形作る歪んだ輪郭を
月光が撫でる
あの白さえ、あの冷たささえ
ここでは救済になる

走る、はしる、あてもなく、
独りだ、どこまでも、独りで
だからこ

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優しくなる

優しくなる

それでいいんだ

きみがどんどん大人になって

打算を覚えて ずる賢くなり

夢さえ忘れて 諦念を選び

無意味なことが

本当に無意味に思えても

それでいいんだ

もう素敵な詩が書けなくなっても

もう世界が青く見えなくても

あのころのきみの面影が

消えてなくなるわけじゃない

きみは優しくなるだけだ

なにもなかった孤独な世界を

はじめて照らした光のように

きみは優しくなるだけだ

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