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好きな詩 とか(2022年)

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#詩人

気付かれない

気付かれない

鮮やかな輝きを纏い
気ままな美しさと共に
この世の果てでさえも
いとも容易く飛び越えそうな

そんな姿

気付かれないなら
その存在は
果たして意義を持つのか
自己満足の権化として

何一つ

三次元世界に対する
証明を持たず
パスポートを投棄し
孤独に朽ちるのか

よしんば

気付かれたとしても
どれだけの者が
それを当たり前に
ありのまま祝福できようか

願わくば

私は気付いていたい
私はそ

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詩の生命

詩の生命

詩に宿る生命とは
現世を超える永遠か
否単なる流行りか
我儘な時代の要請か
残された想いの形見が
引き継がれるとしても
それは形を変えるだろう
そうして生きていく程に
新たな息吹が吹き込まれ
褪せることのない
響きを纏うのだ

たとえば現代の栄光を
徒花と揶揄すべきか
過去と未来を繋ぐべきか
つまるところ
俺には正しさなんて分からない
故に凡ゆる想いは人任せ
俺が拾い上げた詩を愛する
そんな奴もい

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飽き性

飽き性

好奇心は旺盛です
誰とも比べていないけど
そういう事にしておこう

旅を愛するボヘミアン
最小限の生活圏
そこを無限としておこう

爪弾く私の天性に
光の粒子を垣間見て
至福の至りで読み解こう

結論私は飽き性です
ポポイと吐息で吹き消して
止まらぬ理由としておこう

「1カウント」【詩】

もし
ここから
今すぐに
消えてしまえたなら

名前も
国籍も
血、肉、骨
においさえ

この世に存在したという
あらゆる
痕跡を
すべて消し去り

スマホ操作のごとく
ワンクリックで
簡単に
なかったことに
してしまえたら

宇宙にも行ける
この時代
それぐらいのこと
できてしまうんじゃないか?

ふとそんな幻想を
抱いてみるけど

曲がりなりに生きてきた
経験が
不可能であることを
私にわから

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夏夜

夏夜

電線に
絡まりながら
アンタレス
夏夜に浸した
歌を手元に

繰り返す
虫の羽音に
せせらいだ
水場の風に
言葉を預け

僕はもう
何になるかも
忘れたら
声の全てが
宇宙に届く

アジト

アジト

令和元年某日未明決行
邪魔する者は速やかに排除
如何なる関係性においても
その例外は認めるに及ばず
此度の決起集会において
身分の相違関わらず血を流せ
神々の度肝を抜き去るべく
世界人類幸福追求による
永劫不滅的なデータ降臨の
勿体なくも礎とならん

アジトに焼け残った紙切れ
俺の平和と奴の平和は
百年戦争に明け暮れた
子供だっておかしいと思うだろう
けれどそれが大人ってもんだ
お前と同じ人間なん

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現実

現実

休んでいる
仕方ないんだ
やりたい事をやっている
とでも言えたなら
気が紛れるか
いや
紛らすための気持ちって
どこにあったっけ
植木鉢の下
玄関ポストの裏
ロングブーツの爪先
頭に引っ掛けた眼鏡
ないか
現実ってのは
幻の総意だ
逃れられそうで
だいたいしくじる
それが現実だって
吐いたら負け
わかっているんだよ
また負けか
そういや
梅雨入りしたんだってな
それも現実かって
まったく
どうだっ

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変えるべき変わらないもの

変えるべき変わらないもの

高尚な理念の着ぐるみによって、組み立てられた太古の威厳。
支配する側と支配される側、それを護る者と破る者が、多数の野次馬の背中を押す。
時代の大いなるうねりにおいて、誰が野垂れ死にしようが、まるで無関心が正当である根拠としての、正義信仰が広く流布され、守るべきは唯一、自分自身であるという共通認識によって、こちらでは存在意義を見出したヘイトクライム、あちらではデフォルト的善人による道徳的バッシング。

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おてあげ

おてあげ

わかってた
筈の事さえ
目の前に
立ちはだかれば
無力に尽きる

幼さは
無闇矢鱈な
想像力
怖くて泣いた
ベッドの梯子

青春は
支離滅裂な
哲学者
裏の裏見て
恋に焦がれる

存在は
不思議の国の
種明かし
願いが下手な
魔法の呪文

わかってる
筈の事だと
蓋をして
開けるつもりも
無力に尽きた

ヴォイド

ヴォイド

辿り着かない場所
遥か遥か無量から
覗き見る事でさえ
拒絶もしないまま
不可能を告知する
存在を知ろうとも
気付いてなくとも
浮かんで消えては
不生不滅に結ばれ
発狂を以ってして
遭遇を試みる密室
平静に至ってこそ
接近を仄めかす常
だから生きていく
最後に言うだけの
辿り着けない場所