ミケ(Daisuke Müller)

普通の総合病院に勤務している検査技師。超音波検査、特に腹部・血管・体表領域をメインに担…

ミケ(Daisuke Müller)

普通の総合病院に勤務している検査技師。超音波検査、特に腹部・血管・体表領域をメインに担当。同時に社会人として大学院で博士後期課程に進学中。悩みが尽きない人生。あまりかたっ苦しくなくゆるい記事にしてます。誰かの役に立てればそれでいいのです。

マガジン

  • Fantasy Case Report

    実際にあったようななかったような症例をフィクションでお届けします。こんな症例にあたったら、こんな所見の書き方すればいいよ的なものです。

  • 肝臓エコーの話 ~肝臓なめたらあかんぞうver.~

    腹部エコーは肝臓に始まり肝臓に終わるといっても過言ではない(?)。このマガジンは肝臓の基本的走査法をまとめていますので、読んでみてください。あえて平易な言葉で書いてますがちゃんとした内容です、笑。

  • エコーの論文読んでみようの会

    ミケの独断と偏見で気になった論文をピックアップ!海外のエコーはどんなかな?みんなで勉強しましょう!

  • みけ大学院行くってよ。

    社会人大学院生は苦悩ばかりです。これは、仕事しながら社会人大学院生を目指そうとしている方におすすめです。ぜひ、進学迷っている人へのヒントになればと思うのさ。

  • 消化管エコーのちょっといい話なんだ

    いわゆる教科書的な難しいことは書いてません。読み物です。でも痒いとことに手が届く内容です。これでも消化管エコーの幹事です(この読み物は団体とは一切関係ありませんので悪しからず)。

記事一覧

お腹の"ここ"が痛いんです

※ エコー検査に従事する医療従事者向けの内容です。 みなさまいかがお過ごしでしょうか?今日は憩室炎について考えてみました。出会ったことのない稀な疾患のことを調べ…

お腹の左側が痛くて血便が出るときのエコー検査の話

こんばんわ。こうすぐゴールデンウィークですね!よき休日をお過ごしください☺️このnote(マガジン)はTwitterで投稿したイラストを補足する目的で作っています。さて、今…

「葬送のフリーレン」が教えてくれること  

たまに仕事以外のことも書いてますので、すみません。全然、仕事と関係ないし、内容すごく暗いし、ただのフリーレンオタクが書きたくなったことを書きたくなったので書いて…

10

なんか凄そうな虫垂炎を見つけた時の話

今回の教材はこちら 複雑性虫垂炎とは? 前回は単純性虫垂炎の話をしました。 https://note.com/daisukemuller/n/ncb8db80685ac おさらいですが、虫垂炎の病期はカタル…

限局的に脂肪がついたりつかなかったりする肝臓の話

そろそろ始まる?オンデマンド配信にあたり1個だけ補足入れておきます。一般演題のセッションでコメントしておこうか悩みましたが、focal spared areaのことです。 なぜ脂…

やっとエコーで虫垂炎っぽいものを見つけたら?

今度は虫垂炎っぽいものを見つけた時のお話です。以前、カタル性の中でも正常と見分けがつきにくいものもあることをお話しましたが、今回はthe虫垂炎とも言える蜂窩織炎性…

腸管壁厚を計測することについて [IBUS-SASから考える]

論文の紹介 クローン病における消化管(腸管)エコーの信頼性について述べた論文です。クローン病のみならず、腸管エコー全般に参考になるのではないでしょうか? 簡単にま…

社会人大学院博士後期課程1年生の振り返り ~卒業したいだけなのに~

うろ覚えですが、あとの人のためにも大体のスケジュールを記録しておきます。参考になる方は市中病院勤務のコメディカルで、学校は国立大学の医学系研究科保健学領域です。…

6mm超えたら全部虫垂炎でヨシ! .... なのか? 

こんにちは。なんで、9月なのにこんなに暑いんだろうね?今日は正常虫垂が描出できてからのお話をしたいと思います。 腫大とは? 「腫大=腫脹。炎症などが原因で、から…

Appe描出できるって言ったよね?

目指せ虫垂マスター! 前回(https://note.com/daisukemuller/n/nfc9c28d4fd4c)の続きです。ほんならお前に任せたら全部虫垂出せるんかい!って言われそうなので、今度は僕…

虫垂を見つけるには?

虫垂炎を診断するにもrule outするにも、まずは正常虫垂を見つけることが必要です。「右下腹部の腸腰筋付近にプローブ当てると運が良ければ見えますよね?」みたいなのは今…

2

感染性腸炎と言っても... ウイルス? 細菌?

この時期気をつけたいのが細菌性腸炎ですね。市中において比較的よく見る細菌感染症です。細菌性腸炎の多くは対症療法のみで軽快するので、抗菌薬を投与する例は限られるみ…

嘔吐・下痢の代表選手 ~Case 1~

 「良いレポートとは何か」という議論がしばしば起こるわけですが、僕が考える良いレポートとは、「簡潔かつ理論的である」ということです。つまり、Aという超音波診断を…

下部消化管(大腸)を攻める 後編

前編の続きです。前編のリンク貼れてるかな?  https://note.com/daisukemuller/n/n1103b6f5cdee 解説イラスト ④ 下行結腸を同定する 王道の攻め方としては、横行結…

炎症性腸疾患における超音波検査の役割

論文の紹介です いつも多忙なお仕事お疲れ様です☕️ 個人的に気になった論文を紹介しています。ポルトガルからの報告です。なかなか世界のエコーってどうなのか知る機会…

下部消化管(大腸)を攻める 前編

こんばんわ。今回は主に大腸の見方を解説してきます。長くなって見にくくなると思うので前編と後編に分けていきますね。 ポイント ☆ 系統的にみる (口側から肛門側に追…

お腹の"ここ"が痛いんです

お腹の"ここ"が痛いんです

※ エコー検査に従事する医療従事者向けの内容です。

みなさまいかがお過ごしでしょうか?今日は憩室炎について考えてみました。出会ったことのない稀な疾患のことを調べるよりもcommon diseasesをしっかり突き詰めて勉強することの方が建設的と思います。

今日の教材はこれ↓↓

どこが痛いですか?

実は、私、学部生〜大学院修士では痛みの研究をしていました。長くなるので、ここでは簡単に。

もっとみる
お腹の左側が痛くて血便が出るときのエコー検査の話

お腹の左側が痛くて血便が出るときのエコー検査の話

こんばんわ。こうすぐゴールデンウィークですね!よき休日をお過ごしください☺️このnote(マガジン)はTwitterで投稿したイラストを補足する目的で作っています。さて、今回は虚血性大腸炎の話をします。個人的に虚血性腸炎という方が馴染みがあるので、あえて虚血性腸炎と呼んでますが、国内では概ね虚血性大腸炎のことを指します。

 虚血性腸炎の始まりを紐解くとBoleyらが1963年に大腸血管の可逆性閉

もっとみる
「葬送のフリーレン」が教えてくれること  

「葬送のフリーレン」が教えてくれること  

たまに仕事以外のことも書いてますので、すみません。全然、仕事と関係ないし、内容すごく暗いし、ただのフリーレンオタクが書きたくなったことを書きたくなったので書いています。なぜかって?勇者ヒンメルならそうしたってことだからです。

私の特性

ここ数年、特に仕事を始めた時から会う方に言われる第1印象は「覇気がない」「走っているのを見たことがない」「冷たそう」などなど大体こんな感じで言われるのですが、ま

もっとみる
なんか凄そうな虫垂炎を見つけた時の話

なんか凄そうな虫垂炎を見つけた時の話

今回の教材はこちら

複雑性虫垂炎とは?

前回は単純性虫垂炎の話をしました。
https://note.com/daisukemuller/n/ncb8db80685ac

おさらいですが、虫垂炎の病期はカタル性、蜂窩織炎性、壊疽性と炎症病期が進展していき、炎症がひどいと穿孔といって虫垂壁に穴があきます。今回取り上げる複雑性虫垂炎はいわゆる壊疽性、穿孔性のことを指します。

虫垂は狭い内腔を持ち

もっとみる
限局的に脂肪がついたりつかなかったりする肝臓の話

限局的に脂肪がついたりつかなかったりする肝臓の話

そろそろ始まる?オンデマンド配信にあたり1個だけ補足入れておきます。一般演題のセッションでコメントしておこうか悩みましたが、focal spared areaのことです。

なぜ脂肪肝になるのか?

画像として脂肪肝を考えるときは、小腸から肝臓にどうやって余剰栄養が運ばれていくかを考えると良いと思います。つまり、門脈を介して肝臓に栄養が運ばれるとも言い換えることができます。裏を返せば、もし門脈を介

もっとみる
やっとエコーで虫垂炎っぽいものを見つけたら?

やっとエコーで虫垂炎っぽいものを見つけたら?

今度は虫垂炎っぽいものを見つけた時のお話です。以前、カタル性の中でも正常と見分けがつきにくいものもあることをお話しましたが、今回はthe虫垂炎とも言える蜂窩織炎性虫垂炎を考えてみました。

こんな感じで「ぶりっ」と腫れるわけですねえ。

虫垂炎の評価に期待されること

まずは虫垂を見つけることからスタートです。見つけた次は以下の病気に分類します。

虫垂炎は病期によって以下のように分類できます:

もっとみる
腸管壁厚を計測することについて [IBUS-SASから考える]

腸管壁厚を計測することについて [IBUS-SASから考える]

論文の紹介

クローン病における消化管(腸管)エコーの信頼性について述べた論文です。クローン病のみならず、腸管エコー全般に参考になるのではないでしょうか?

簡単にまとめると

・腸管エコーでクローン病の病勢を客観的に評価する指標がなかったので、作ってみた。7カ国11人の専門家がいろいろやってみたよ。
・4つの重要なパラメータを見つけたよ (壁厚; 層構造; カラードプラ; 周囲脂肪織肥厚)。しか

もっとみる
社会人大学院博士後期課程1年生の振り返り ~卒業したいだけなのに~

社会人大学院博士後期課程1年生の振り返り ~卒業したいだけなのに~

うろ覚えですが、あとの人のためにも大体のスケジュールを記録しておきます。参考になる方は市中病院勤務のコメディカルで、学校は国立大学の医学系研究科保健学領域です。

長期履修制度

社会人学生には長期履修制度なるものがあるようで、通常博士課程は3年なのですが、4年でやってもいいよという制度です。ただ、自分の気持ちが持たないと思うので、ここはなるべく3年で卒業を目指します。

早期卒業制度

逆に早期

もっとみる
6mm超えたら全部虫垂炎でヨシ! .... なのか? 

6mm超えたら全部虫垂炎でヨシ! .... なのか? 

こんにちは。なんで、9月なのにこんなに暑いんだろうね?今日は正常虫垂が描出できてからのお話をしたいと思います。

腫大とは?

「腫大=腫脹。炎症などが原因で、からだの組織や器官の一部がはれ上がること。また、細胞の容積が増大した状態。」と大辞泉には書いています。つまり腫大には病的なニュアンスがありますので、虫垂炎が疑われる場合は腫大なのでしょうし、そうではない場合に腫大と書くとニュアンスで誤解を生

もっとみる
Appe描出できるって言ったよね?

Appe描出できるって言ったよね?

目指せ虫垂マスター!

前回(https://note.com/daisukemuller/n/nfc9c28d4fd4c)の続きです。ほんならお前に任せたら全部虫垂出せるんかい!って言われそうなので、今度は僕が出せない虫垂をご説明します。やっぱり出せいない時って、ほとんど腸管のガスが邪魔する場合なんです。自分がやって描出できなければ誰がやっても無理!っていうくらい自信がつけばマスターの称号を付与

もっとみる
虫垂を見つけるには?

虫垂を見つけるには?

虫垂炎を診断するにもrule outするにも、まずは正常虫垂を見つけることが必要です。「右下腹部の腸腰筋付近にプローブ当てると運が良ければ見えますよね?」みたいなのは今っぽくないですね。高精度で描出するには系統的に探すことが必要です。

まずはプローブを確認するのだ!

消化管全般に言えることですが、ターゲットが薄い・細い・浅いという条件にあることが多いので、高周波プローブが必要です。いつもみんな

もっとみる
感染性腸炎と言っても... ウイルス? 細菌?

感染性腸炎と言っても... ウイルス? 細菌?

この時期気をつけたいのが細菌性腸炎ですね。市中において比較的よく見る細菌感染症です。細菌性腸炎の多くは対症療法のみで軽快するので、抗菌薬を投与する例は限られるみたいですが、やはり正確な診断は必要です。さすがに大学病院では見ないですかね??

大腸炎とはなんぞや

感染性腸炎と一口に言っても原因はいくつかあるわけで、多いのがウイルス性腸炎(前回参照)か細菌性腸炎です。病原微生物が口から入って、腸管に

もっとみる
嘔吐・下痢の代表選手 ~Case 1~

嘔吐・下痢の代表選手 ~Case 1~

 「良いレポートとは何か」という議論がしばしば起こるわけですが、僕が考える良いレポートとは、「簡潔かつ理論的である」ということです。つまり、Aという超音波診断をつけたければ、Aという疾患に必要な所見を知っておく必要がありますし、鑑別疾患Bと異なる点も常に考慮する必要があります。
 ここのシリーズではいろんな症例の超音波所見を見ていきます。超音波検査士の試験の抄録も大体こんな感じで書けば大丈夫と思い

もっとみる
下部消化管(大腸)を攻める 後編

下部消化管(大腸)を攻める 後編

前編の続きです。前編のリンク貼れてるかな? 

https://note.com/daisukemuller/n/n1103b6f5cdee

解説イラスト

④ 下行結腸を同定する

王道の攻め方としては、横行結腸から連続で追っかけていくのですが、その場合は、左の肋間を跨ぎながら脾弯曲部まで到達します(③→④)。ただ、これもなかなか難しいので、④'の方法(下行結腸から逆走)をおすすめしています

もっとみる
炎症性腸疾患における超音波検査の役割

炎症性腸疾患における超音波検査の役割

論文の紹介です

いつも多忙なお仕事お疲れ様です☕️
個人的に気になった論文を紹介しています。ポルトガルからの報告です。なかなか世界のエコーってどうなのか知る機会が少ないので気になりますね!

言いたいことは?

☆ クローン病や潰瘍性大腸炎の診断や治療のモニタリングに消化管エコーは有効だよ!
☆ 壁厚を見ていくことが治療効果判定として有効だよ!
というような内容です。

はじめに

なぜこの研究

もっとみる
下部消化管(大腸)を攻める 前編

下部消化管(大腸)を攻める 前編

こんばんわ。今回は主に大腸の見方を解説してきます。長くなって見にくくなると思うので前編と後編に分けていきますね。

ポイント

☆ 系統的にみる (口側から肛門側に追いかける)

☆ 固定点から固定点へ

☆ 慣れたらコンベックスでスクリーニング可能だか、基本的には高周波コンベックスorリニア推奨

☆ 正常が一番分かりにくい。異常になれば向こうから主張してくる。

とこんな感じで、消化管全般に言

もっとみる