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腸管壁厚を計測することについて [IBUS-SASから考える]

論文の紹介

Novak KL, Nylund K, Maaser C, et al. Expert consensus on optimal acquisition and development of the International Bowel Ultrasound Segmental Activity Score [IBUS-SAS]: a reliability and inter-rater variability study on intestinal ultrasonography in Crohn’s disease. J Crohns Colitis. 2021;15(4):609-616. doi: 10.1093/ecco-jcc/jjaa216
最後にリンクやクレジット表記があります。

クローン病における消化管(腸管)エコーの信頼性について述べた論文です。クローン病のみならず、腸管エコー全般に参考になるのではないでしょうか?

簡単にまとめると

・腸管エコーでクローン病の病勢を客観的に評価する指標がなかったので、作ってみた。7カ国11人の専門家がいろいろやってみたよ。
・4つの重要なパラメータを見つけたよ (壁厚; 層構造; カラードプラ; 周囲脂肪織肥厚)。しかも病勢をよく反映しているし、再現性もかなりよき。
・なので、これを採用して、International Bowel Ultrasound Segmental Activity Scoreとしよう!

Methods

研究デザイン:phased study design
Phase 1:修正デルファイ法を使用して、炎症に寄与するパラメータのリストアップ。リッカート尺度から盲検順位リストを作成。最終投票でCD活動性を評価するIUSで最も重要な炎症活動性パラメータのコンセンサスを得た。
Phase 2 : CDのカラードプラを含めた静止画と動画を20例収集し評価。
Phase 3 : 新たに30例で評価。

Result

IBUS−SAS(0−100)=4×BWT + 15×i-fat + 7×CDS + 4×BWS
という壁厚・周囲脂肪織肥厚・カラードプラ・層構造を組み合わせた式でクローン病の活動性がよく分かる!という内容です。印象としては妥当だと思うのですが、再現しようとするとどうしても詳細な情報が必要なのです。特にどうやって壁厚を計測しているのか?私は検査技師なので、論文本体の結論よりもsupplemental fileにこそ重要な情報が入っているのです。

Supplemental fileから読み解く、気になる壁厚計測

以下、引用した具体的なmethodsです。

可能であれば、画像内のどの位置で測定するかを選択する際に、以下の基準を使用する:
1. プローブに最も近い腸管壁が望ましい(特に管腔内に空気がある場合、または腸管後部の境界がわかりにくい場合)。
2. 粘膜面と内腔の境界が明瞭な場所(通常、空気が最も良好な境界面を示す)
3. 襞と襞の間を避ける。
4. キャリパーを当てるとき
     測定は内腔から漿膜に対して垂直に行う。
     ズームすることにより、カーソル位置の正確さが増す。
     外側境界は漿膜(高エコー)と固有筋層(低エコー)の正確な界面に当てる。
  内側境界は粘膜(低エコー)と管腔内容物(高エコー)の正確な界面に当てる。

断面で2回、縦方向で2回、1mm単位で測定し、これら4回の測定値の平均をとる
(例:(3.4mm+5.2mm + 4.8mm+4.6mm) ÷ 4 = 4.5mm)。
 (  短1  +  短2   +   長1   +   長2 )÷  4

※短軸:2つの測定は同じ静止画で得ることが可能。ただし、90°以上離す。
※長軸:同じ静止画で測定が可能。ただし、1~2cm以上離す。

Novak KL et  al. 2021, supplemental file

シェーマがこちら

Novak KL et  al. 2021, supplemental file

最初の断面設定のところで誤差は出る可能性は高いですが、腸管壁の計測法としては腑に落ちやすいですよね!別にガイドラインとかではないので、これが正しいわけではないですが。
ポイントは短軸で1回目と2回目は90°以上はあける(近づけすぎない)、長軸は1cm以上あける(近づけすぎない)。
依然と残る課題は最初の短軸断面の設定ポイントの問題ですが、活動性を見るという意味合いでは、各結腸における最強点と決めてしまっていもいいように思います(個人の感想)。

まとめ

さて、今回は腸管計測について考えてみました。計測法に関してはまだ議論があるように思え、日超医主導で多施設研究行い、標準的計測法みたいなやつを策定して欲しいと切実に思います。

Many thanks to the authors for publishing their excellent research!!

CC BY-NC 4.0: This is an Open Access article distributed under the terms of the Creative Commons Attribution-NonCommercial License (http://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/)  

Link to original article: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8023841/

Cite:
Novak KL, Nylund K, Maaser C, Petersen F, Kucharzik T, Lu C, Allocca M, Maconi G, de Voogd F, Christensen B, Vaughan R, Palmela C, Carter D, Wilkens R. Expert Consensus on Optimal Acquisition and Development of the International Bowel Ultrasound Segmental Activity Score [IBUS-SAS]: A Reliability and Inter-rater Variability Study on Intestinal Ultrasonography in Crohn's Disease. J Crohns Colitis. 2021 Apr 6;15(4):609-616. doi: 10.1093/ecco-jcc/jjaa216. PMID: 33098642; PMCID: PMC8023841.


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