青木るえか

豊島将之の雷に打たれ戦う男の美に目ざめ、戦う男とそのまわり、およびそれを考えている自分…

青木るえか

豊島将之の雷に打たれ戦う男の美に目ざめ、戦う男とそのまわり、およびそれを考えている自分について書きます。毎回長文です。人名は基本敬称略です戦う男の皆さんはお名前そのものがすでに尊称であるという考え方ですのでご理解ください。

最近の記事

豊島紀 ㉜あまりに人間的な豊島将之の将棋について

「ひきつづき、せいいっぱいがんばりたいとおもいます…」 と、さきほど王将戦挑戦者決定リーグ永瀬拓矢九段戦を投了したのち、インタビューの最後に豊島はそう言った。静かに。この人は腹の底から声を出したことがあるのか?と思うような、吐息みたいな声だった。 その四日前の、王将戦挑戦者決定リーグ3回戦、羽生善治九段を相手に豊島は飛車を振った。おい、相手は羽生善治だぞ、と見物がうろたえるのもものともせず振った。そして、途中やや押されはしたものの勝った。この何日か前にはA級順位戦で天敵(

    • 豊島紀 ㉛JT杯の豊島と王将リーグの豊島は何が違ったか

      九月二十九日、「第73期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ戦豊島将之九段ー佐々木勇気八段戦」があった。97手で豊島九段が勝った。 囲碁将棋プラスで朝からずっと見ていた。それで思ったんだけれど、先日のJT杯で見た豊島と、将棋会館での豊島、ずいぶんちがうもんだな。ま、当たり前ですけどね。かたやタイトル戦(の挑決リーグ)、かたや一般棋戦。豊島さんが一般棋戦だから手を抜くなんてことはあるわけがない。豊島さんは、あんな虫も殺さぬような、いや虫もこわくてさわれないような顔をして誰よりも

      • 豊島紀 ㉚佐藤天彦と菅井竜也のトークを聞いて思うのは豊島将之のことだった

        サムネの画像が「天彦せんせいとの婚約会見で照れてる菅井さん」みたいですが、ちがいます。八月二十日(日)、両国将棋センター主催『「王道」が個性を磨く 〜A級棋士の真髄を堪能せよ〜』の一コマです。 このイベント、解説者と対局者が喋りまくりながらやる席上対局とか、居飛車党トーク、振り飛車党トークとか、いろいろ盛りだくさんだった(4時間以上の長尺イベントでした)んですが、私はとにかく、 佐藤天彦と菅井竜也が二人で語る……! のを見たくて行ったわけです。そしてそれが想像以上に面白

        • 豊島紀 ㉙トヨシマは荒野を目指す

          8月4日、朝から斎戒沐浴して座禅を組み滝があれば打たれたいぐらいの気持ちで、ほとんど食事も採らぬまま王座戦挑決の藤井聡太対豊島将之戦を見守っていたが豊島は敗れた。終局後しばらく、このまま世界が太陽につっこんで焼け落ちてしまえぐらいな気分に陥っていたが翌朝には朝食を食べ読みかけのマンガの続きが気になって読み始めた。所詮その程度のことだ。 この対局は「名局」らしい。そうですか。将棋とはただの勝敗ではなく「後世に棋譜を残す」ことであり、それが文化であり芸術ということであり、芸術は

        豊島紀 ㉜あまりに人間的な豊島将之の将棋について

          豊島紀 ㉘ABEMAトーナメント2023『チーム菅井』解散イベント17日マチネ

          22日放映のABEMAトーナメント「チーム藤井vsチーム渡辺」。5ー0でチーム藤井が勝ち、藤井チーム澤田七段の「非人間性」というか「異世界性」には魅力された。それに5ー0で5局しかなくて23時前に終わったのがちょうどよかった。フルセットで5局ぐらいが頃合いですよ。「先に3勝したほうが勝ち」でいいんじゃないか。来年からそうして(と、どこかに向かって頼む)。 さて。 7月17日海の日、ABEMAトーナメント2023でいちばん「みんなを幸せにしたチーム」である『チーム菅井』の解散

          豊島紀 ㉘ABEMAトーナメント2023『チーム菅井』解散イベント17日マチネ

          豊島紀 ㉗王座戦準決勝の夜、豊島将之の夜

          第71期王座戦挑戦者決定トーナメント準決勝、豊島将之は渡辺明との対決を制した。次は決勝である。藤井聡太が待ち構えている。 対局のあとの豊島という人は、ぞっとするような孤独をまとわりつかせている。なんといったらいいのか、暗殺者が一仕事を終えて、一人でアパートに帰ってきて暗い台所で血のついた手を洗いながら暗いため息をついている、というような風情がある。「なぜ俺は(ココは「俺」)こうして手を血に染めているのか。しかし私はそれをやらなければならないから仕方がない」。べつにその仕事を

          豊島紀 ㉗王座戦準決勝の夜、豊島将之の夜

          豊島紀 ㉖ミュージカル『エリザベート』で豊島が演じる役は何か

          熱い……今、豊島が熱い……!(上の記事の無料公開期限はもうすぐ終わってしまいますが金払っても読む価値あります!) 週刊文春好評連載『いまだ成らず 羽生善治の譜』、連載第六回から豊島が登場し、ほぼ豊島のことのみ描かれ、あたかも「豊島将之の譜」が如し。豊島ファンなら知ってるエピソードが、今まで語られたことのない熱さで語られ、熱ければ熱いほど「体温のない豊島の姿」が浮かびあがってくるという絶妙の筆致。(念のため書いておきますが「体温のない」というのはポジティブな意味です) そし

          豊島紀 ㉖ミュージカル『エリザベート』で豊島が演じる役は何か

          豊島紀 ㉕豊島が飛車を振った

          豊島が飛車を振った。タイトルと同じ文言を本文に書くのはスマートじゃないが、書いてしまう、豊島が飛車を振った。 6月5日のNHK『クローズアップ現代 最年少名人・七冠 藤井聡太の強さに迫る』を見ていたら、藤井聡太の将棋AIとの対し方について師匠の杉本八段が語っていた。 「AIの答えというものを決して何か妄信するわけでもなく」 「何でその手なんだということを見て新たに自分で考えて消化して」 「理解しているからうまく使いこなせているのかな」 「もともと持っている深く読める能力と

          豊島紀 ㉕豊島が飛車を振った

          豊島紀 ㉔ABEMAトーナメント2023予選Aリーグ・チーム豊島の限りなき戦い

          ABEMAトーナメント2023・チーム豊島は終わりました。予選Aリーグ、0勝2敗で早々に予選敗退……。 (って、それもう4月放映の話ですよ。今やもう予選Cリーグまで進んでますし。世界では藤井聡太が名人奪取の翌朝、豊島が3手目に飛車を振る、という想像もつかなかった現実がやってきておりますが) ※こちらに貼っつけてるABEMAの動画はプレミアム会員じゃないと見られないやつばかりですすみません。 しかし将棋ファンみんなアベトナ好きですよねえ。私は、チーム豊島が負けたから言うわ

          豊島紀 ㉔ABEMAトーナメント2023予選Aリーグ・チーム豊島の限りなき戦い

          豊島紀 ㉓糸谷哲郎ボヘミアン・ラプソディを熱唱す

          令和5年5月5日こどもの日、『森一門祝賀会』に行ってきた。 私が森信雄先生の存在を知ったのは河口俊彦の本でだ。その中で「森信雄と村山聖の師弟関係」について書かれていていて、それがたいへんに衝撃的で忘れられなかった。曰く「森は村山を自分の家に住まわせ、時には一杯のかけそばを分け合って食べた時もあったという」。いや、これは私の記憶の捏造で、かけそばを分け合ってたなんて書いてなかったですが、「二人は貧しさに耐えながら身を寄せ合って生きていた(大意)」みたいなことが書いてあったんで

          豊島紀 ㉓糸谷哲郎ボヘミアン・ラプソディを熱唱す

          豊島紀 ㉒豊島は129分考えて次の手を指した

          ABEMAトーナメントのチーム豊島のことを書こうと思ったが、『伊藤園お〜いお茶杯第64期挑戦者決定リーグ紅組5回戦、羽生善治九段ー豊島将之九段戦』があまりにもすごい対局で、身も心もへろへろになったのでその話をします。 というわけで豊島は負けちゃいました。勝負というのは勝ったり負けたりするものなので、負けた時は家の中のそのへんで倒れて気を失うぐらいなものですが、この対局は「ただ負けた」というにはあまりにもいろいろなことがありすぎた……。 朝10時に対局開始して、昼休憩までは

          豊島紀 ㉒豊島は129分考えて次の手を指した

          豊島紀 ㉑豊島先生の華麗なる講師術(追記あり)

          『将棋フォーカス』の将棋講座「初段を目指す!スキがない将棋」、新講師豊島将之先生、絶好調である。 将棋フォーカスをご覧になる皆さまがたへ向けて、豊島先生の「予習のススメ」がツイートされた。先生がおっしゃるんですから当然、われわれもテキストを開きました。すると、 ものすごくマジメ一方のツイートである、ということがわかった。そして次の週には……、 テンプレかよ! いやちがうね。たぶん豊島先生は、心から思っているのだ。 「初段を目指してもらうためには、事前にテキストを見てお

          豊島紀 ㉑豊島先生の華麗なる講師術(追記あり)

          豊島紀 ⑳タコ焼きパーティーで佐藤天彦に将棋の未来を聞く

          ABEMAトーナメントが始まり、さらに将棋フォーカス豊島講師第一回登場、トドメに豊島将之個人Twitterがいきなり始まってしまった(゚д゚) この、思いもよらぬ事態に世界が蜂の巣をつついたような大騒ぎになっているというのに、 佐藤天彦九段とタコ焼きパーティー の話をします(いつもながらに間が悪いぜ)。これは3月24日に、大阪福島『将棋barルゥク』の企画で行われたイベントで、チケット発売になった瞬間、買った。買ってしまってから「これどう考えても濃い天彦ファンのためのイベ

          豊島紀 ⑳タコ焼きパーティーで佐藤天彦に将棋の未来を聞く

          豊島紀 ⑲棋士の研究についての研究1

          『伊藤園お〜いお茶杯第64期王位戦挑戦者決定リーグ紅組 豊島将之九段ー徳田拳士四段戦』の日(春分の日)はずっと外に出ていたのでたまにスマホでチラチラと途中経過を見てたのだが、明らかに押されていて形勢が悪い。常に「負けるのでは」とおびえて生きているわりにじっさい負けそうになるとさらに動揺する。 豊島先生が『将棋フォーカス』の新講師就任で「これからは普及や後進の育成に軸足を移すのでは」などとさんざん言われてるのがアタマの中にぐわーっとよみがえる。この頃やたら「普及をやる豊島」が

          豊島紀 ⑲棋士の研究についての研究1

          豊島紀 ⑱藤井聡太六冠達成の日に思う豊島将之と将棋のこれから

          (まず)菅井さん叡王戦挑戦者決定おめでとうございます。菅井さんのタイトル戦は王位戦以来と思いますが、当時と菅井さんてルックス変わりましたよね。整形とかじゃなくて。肉体改造とともに顔もぜったい変わった。とにかくあらゆるものの張りつめ方がちがうというか。で、着物の着こなしなども自然とちがってくるのではないかと思われ、どんな着こなしで登場するかとても楽しみです。そして、ああいうわかりやすいファイティングポーズをとる人が現在の将棋界にはぜったい必要だと思うのでいろんなものを爆発させて

          豊島紀 ⑱藤井聡太六冠達成の日に思う豊島将之と将棋のこれから

          豊島紀 ⑰虚無で何が悪い! 虚無講師バンザイ!

          豊島先生、NHK『将棋フォーカス』新講師就任おめでとうございます! 講座のタイトル『初段を目指す!スキがない将棋』です! NHK将棋講座テキストの3月号に、すでに講座タイトルは発表されていたにもかかわらずそのことをご存じなかったらしい豊島先生はずっと「講座のタイトルは……初段目指す、みたいな、ははは」と、「出演者がフライングで情報を漏らすわけにはいかない」とごまかし続け、いかにも生真面目な豊島先生らしさを発揮なさっていました。しかし、えりりんと並んでこの笑顔。素晴らしいで

          豊島紀 ⑰虚無で何が悪い! 虚無講師バンザイ!