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豊島紀 ㉖ミュージカル『エリザベート』で豊島が演じる役は何か

熱い……今、豊島が熱い……!(上の記事の無料公開期限はもうすぐ終わってしまいますが金払っても読む価値あります!)

週刊文春好評連載『いまだ成らず 羽生善治の譜』、連載第六回から豊島が登場し、ほぼ豊島のことのみ描かれ、あたかも「豊島将之の譜」が如し。豊島ファンなら知ってるエピソードが、今まで語られたことのない熱さで語られ、熱ければ熱いほど「体温のない豊島の姿」が浮かびあがってくるという絶妙の筆致。(念のため書いておきますが「体温のない」というのはポジティブな意味です)

そして順位戦がはじまり、A級順位戦のトップ切って対稲葉陽戦に勝ち、王座戦の挑決トーナメントで斎藤慎太郎に勝つという上々のスタートを切った今、稲葉との順位戦を見ていて、ものすごく思うことがあって、将棋棋士追究ブログとしてそっちを書くほうがふさわしい、なんでこんなことを先に書いているのか、と自問自答しつつ今日はぜんぜん別の話です。



佐藤天彦タコ焼きパーティーというのがあった。

その時に天彦先生ともうひとつしゃべったことがある。将棋の話ではない。天彦先生が焼いたタコ焼きを串で皿に取って渡してくれる、その10秒ぐらいの間の立ち話である。というか、「私が個人的に天彦先生にお勧めしたいものがあった」のだ。

「天彦先生はミュージカルはご覧になりますか?」と、たぶんご覧になってないだろうなあと思いながら言ってみたら、「あー、ミュージカルは見ないんですよ」とおっしゃった。やっぱりなあと思いつつ、

「あのう、『エリザベート』というミュージカルがありまして、それぜったい天彦先生、ハマると思うんです」

「へえ。それはブロードウエイミュージカルとかですか」
「いや、日本でもやってます(←今思うとこの返答はイマイチだった。ウイーンミュージカルと言えばよかった)」
「ああ、それは聞いたことがないですね」
「あの、とにかくですね、ぜっっったい、天彦先生がお好きな作品だと思います!」

ぜっったい!とか勢いこんで言ったもんで佐藤天彦氏、笑ってましたけど。その後、『エリザベートのDVD』をお贈りしようかと思いつつそのままになっているのが私のダメなところだ。ところで将棋ファンの皆さんで『エリザベート』と言われてわかる人はどれぐらいいるんでしょうか。wiki貼っときます。

wiki長いな。こちらのツイートのほうが端的でわかりやすくていいかも。主な登場人物はこの5人です。

有名ミュージカルで恐いファンもマニアもどっさりいるので、めったなこと言い出すと怒られそうだけど、

棋士劇エリザベート


というのをずっと考えていたのだ。というのも、佐藤天彦にエリザベートを勧めたのは、「天彦氏はエリザベートにぜったいハマる」というのがまずあって、「きっとハマるあまり、自分でもエリザをやろうとする」と思ったからである。エリザをやるって、エリザベート役じゃなくて、

佐藤天彦はぜっっったい、トートにどハマりする

と、思ったんですよ。黄泉の帝王トート閣下! まさに佐藤天彦! 天彦氏はトートのコスプレしたいと思うはず! それで『最後のダンス』をカラオケで歌いたいはず!

それがまた絶妙に似合うはず! 来年のABEMAでやってくれ!

という「佐藤天彦=トート閣下」に気づいた瞬間、「では他のキャストは」って考えるじゃないですか。考えましたよ。主なキャストはこれだ!

エリザベート 藤井聡太

将棋帝国に君臨する后妃

私がプロデューサーならこのキャストでキマリである。タイトルロール・エリザベートは藤井聡太しかない。藤井聡太ならチケットが売れるというのもあるが(興業における券売は最大の重要事項である)、そもそも「藤井聡太は天性のエリザベート役者」だと思う。初夜の翌朝、ナイフ握りしめて「私の命ゆだねる、それは私だけに」って歌い上げるのも、鏡の間で純白のドレスでどばーんと登場するのも、目に浮かぶようである。

こう見るとエリザベートさんは顔も藤井聡太に似てはいまいか

あのドレスと髪型と髪飾り、似合うよ藤井聡太。ヴィンディッシュ嬢(どんな役かは検索してください。これは佐々木勇気を推す)を抱きしめて「もし代われるなら代わってもいいのよ私の孤独に耐えられるなら」なんて、名人の孤独を表現して余りある。

ルイジ・ルキーニ 永瀬拓矢/菅井竜也

ダブルキャスト。くしくも今日(6月22日)A級順位戦で対局している。ルキーニは誰だ、と考えたら同時にこの二人が思い浮かんだ。どっちもルキーニそのものであり、それもタイプ真逆のルキーニ。ラストでエリザベートを暗殺するわけだが、永瀬ルキーニは狂気のストーキングの果ての凶行だし、菅井ルキーニは怒りの刺客である。

オープニングの煉獄の場面、エリザベートを殺したのは本人が望んだから殺してやったんだとうそぶき、「精神錯乱のふりをして逃れようとしている」と地獄の裁判長に決めつけられて、

「俺はマジだぜ」

のひと言を、永瀬ルキーニはまったく笑っていない目でキャハキャハ笑いながら言い、菅井ルキーニはこの瞬間、目をカッと見開き怒りを爆発させる。ああこの二人のルキーニが見たい。二人とも黒ボーダーシャツが似合うぜ。A日程(永瀬)とB日程(菅井)のチケット売れ行きにもファンの注目は集まる。永瀬会と竜棋会がギンギンになって券売を頑張る(役替わり公演あるある)。私は両日程買いますけどね。

フランツ・ヨーゼフ 渡辺明

帝国の滅亡を見つめるラストエンペラー

フランツ・ヨーゼフは、斎藤慎太郎というのも考えたし広瀬章人というのも考えた。大穴で山崎隆之。でもエリザベートとトートという二大巨頭に対峙するのは渡辺明の強度(キャラの)が必要であるし、エリザベートとノミの夫婦というのも良い。なにより、藤井聡太と二人で『夜のボート』を歌うのは誰だ、と考えたら渡辺明しかいない。

渡辺明はああ見えて、泣かせる切なさを出せる人だと思う。でも渡辺明が目を吊り上げてゾフィー(フランツの母。キョーレツに恐い)やるのもまあ上手いでしょうな。「冷静に〜、冷酷に〜」って扇持ってフランツを威圧してる場面は容易に目に浮かぶ。渡辺明がフランツ・ヨーゼフとゾフィーの二役やるとか。同時にやるんだ。右向いたらゾフィーで左向いたらフランツ。そりゃコントか……。

トート Der Tod

ナルシスティックな黄泉の帝王

何しろこの公演(違)は、彼の存在が発端ですから。棋力と美意識が必要。棋界で他にトートやる人材いないだろう。青田買いで山下数毅くんというのも考えているがまだそれは先のことです。天彦トートの名場面としては、渡辺フランツに求婚されて藤井エリザがウキウキで受け入れる場面を「ぐぬぬぬ」と見てるとことか、藤井エリザと渡辺フランツが夫婦喧嘩してるのを戸棚に隠れて覗き見してるとことか、まあいちばん、天彦トート的に「絵になる」のは、鏡の間で渡辺フランツの哀願に、藤井エリザが応えて手を取り合い、「でも私の人生は私のもの」と藤井エリザが歌い上げるのを銀橋からじいーっと見てる後ろ姿だな(宝塚歌劇verです)。

ルドルフ

王座に座るんだ王座

ついに出た。本命登場。豊島将之、皇太子ルドルフ殿下です。天彦トートと『闇が広がる』をデュエットしてもらいましょう。

♩闇が広がる この世の終わりは近い♩

が、やっぱりルドルフのキモは、ママ・エリザベートとの関係性であろう。少年ルドルフ(も豊島にやってもらおう。童顔だし)が「ママ、どこなの? 聞こえてるの? 寒いんだ、抱きしめてよ」と藤井エリザベートを思いながら、がらんとした暗い宮殿で、ひとりぼっちで歌うんですよ。そしてフィナーレの階段降りで(ということは宝塚歌劇団ver)、

「ぼくたちは似た者同士だ この世界で安らげる居所がないよ ぼくはきみの鏡だから きみはぼくの思いすべてわかるはず 二人きり 話がしたい」

ぼくは豊島、きみは藤井聡太。やや恥ずかしそうに笑いながらこれを歌う豊島将之の姿が、私はもう目に見える(涙)。


『エリザベート』には他にもいっぱい登場人物がいて、エリザベートのパパが久保利明と糸谷哲郎のダブル、などと考えはじめると果てがないので最後に一つだけ。トートダンサーズ(黒天使)というトートの眷属みたいなのがおります。これは伊藤匠、池永天志、三枚堂達也、石井健太郎、澤田真吾でぜひ。それで澤田真吾はマデレーネ(美女に化けてフランツを誘惑、夫婦仲を裂く)もやってください。

お読みの皆さんで「この配役はちがうやろ!」と思う方もいらっしゃるでしょう。そういうご意見もお聞きしたいのでぜひ皆さんの『棋士劇エリザベート』の配役をおしえてください。こんなこと考えてる人いないかなあ。

ルキーニ対決は、きょうのところは菅井さんが勝ちました

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