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豊島紀 ㉘ABEMAトーナメント2023『チーム菅井』解散イベント17日マチネ

22日放映のABEMAトーナメント「チーム藤井vsチーム渡辺」。5ー0でチーム藤井が勝ち、藤井チーム澤田七段の「非人間性」というか「異世界性」には魅力された。それに5ー0で5局しかなくて23時前に終わったのがちょうどよかった。フルセットで5局ぐらいが頃合いですよ。「先に3勝したほうが勝ち」でいいんじゃないか。来年からそうして(と、どこかに向かって頼む)。

さて。
7月17日海の日、ABEMAトーナメント2023でいちばん「みんなを幸せにしたチーム」である『チーム菅井』の解散イベントが行われました。

すべては菅井さんのこのTweetからはじまった。

そして……………………、

このスペシャルゲストという文言を見た瞬間、

「豊島なんじゃないか……?」


とよぎったことは正直に白状しておきます。でもよぎった次の瞬間、「豊島ではありませんように……!」と念じた。なんで豊島がゲストだとイヤなのかというと(イヤなわけじゃないが)、いろいろと複雑な感情がある。

「スペシャルゲスト豊島になってチケット争奪戦に敗れたらどうする」

「チケット取れたとしてチーム菅井イベントで豊島にきゃーきゃーするような無礼なことはできない、がやはり豊島をガン見してしまうのでは……」

「“とよよとすがが”的なきゃーきゃーが盛り上がるのはちょっと……」

などといろいろめんどくさいことを考えていたらスペシャルゲストが井上=ケータマン=慶太九段加藤桃子女流三段と発表になり、そしてそもそもその日は大阪城公園で別の用事がある日だと判明。誰がゲストだろうが行けないじゃんよ!「しょうがない諦めよう。しかしこれゲストが豊島だったら、なんだかんだいってても私は地団駄踏んで夜も眠れず鉄輪の鬼になっただろう。いろいろな意味で、いいところに落ち着いてくれた……」と安堵の息をついたのであった。

が、チケット売り出し詳細が出たら、「午前の部と午後の部がある。午前の部なら行けるんでは?(乗り換え案内を調べる)だいじょうぶだ15時の大阪城公園に間に合う!」ということで午前の部のチケットを取ったのでした。60人定員の午前午後と瞬殺。私は販売開始後3分ぐらいの時点で決済までいってセーフであったが、6分後にちょっと確認したら午前午後とも完売になっていてたまげた。この瞬殺を受け、船江さんの提案により前夜祭(というか前日祭)が追加になった。チーム菅井スゴイ!

以前書いたように、私はABEMAトーナメントというのは「それほど夢中になるもんでもない」のですが、こういう「チーム菅井」のようなすばらしいチームが出現するとなると、意義のあるイベントかもしれないとか思っちゃいますね。チーム動画も菅井さんのところがダントツの面白さだし。その面白さっていうのが「企画の面白さ」じゃないんですよ。

だって、内容は「メンバーで鍋パーティー」ですよ? アベトナのチーム動画ではありがちすぎるような内容ですよ?

あんまりムリをさせられないようなチームにやってもらうヌルイ企画

そのものって感じじゃないですか。ニコニコしながら言葉少なに鍋をつっつくだけ、べつにたいしたことない話を必死で面白がらねばならない、みたいな(何かもうそんな場面が目に浮かぶ。誰のって? ええ、まあそれは聞かないで……汗)。

しかしチーム菅井の鍋パーティーはじゅーぶんに面白かった。企画(NGワードを言わせるゲームがひとつ仕込まれていた)がありきたりでも出演者が良ければそれでいいんだ。菅井さんがドラフトでメンバーを選ぶ上で重視したのが「人間力」だそうだが、それぞれに魅力の方向性のちがう人間力を持った三人、それももとより仲良しの三人。その三人の日常。

リーダーとはきっちり仕事をする人のことです

「これをちがうメンバーでやらせようとしてはいけない。これは、この人たちだからうまくいった。他人に安易にやらせたらぜったい失敗する!」

菅井竜也の愛嬌、船江恒平の知性、西川和宏の柔和、これがうまいこと噛み合って、面白くて楽しくて、その場にいると幸せな気分になる空間が創出されていた。

菅井さんて、けっこうつっこんだことも言うわけですよ。朝日杯の大盤解説の時の話ですが、名古屋対局の会場を歩いてたらファンの人が「がんばってください!」って声かけてきたから喜んでたら、

「豊島さんのファンですって、なんやそれ!」

ケッて顔して言うんだけど、

「ケッ」という顔

愛嬌にあふれてるんでそれがぜんぜん感じ悪くない(それにセリフの間がいい)。みんな大笑い。

船江さんは、観戦記などを読むとすごく文章うまいし冷静でクレバーな人だなと思わされるが(会計士だし)、それだけじゃなくて「気が利く」し「気遣いができる」し「やさしい」。場の空気も読める。つっこみの名手(そしてつっこんだ自分より、つっこまれたほうがその場でスターになれるような動きをしてくれる。これをできる人はなかなかいない)。

「勉強してみたいから会計士の試験受けようと思いますて井上先生に言うたら、将棋の勉強じゃあかんのか、と言われました」……勉強がしたいというのがすごいよ船江さん!

西川さんは、何かもう存在そのものが「場の空気を和ませる」し、私は関西将棋の日にはじめて西川さんをナマ拝見してその時からずっと思ってるが、

「相当な美少年なんでは?」

ほんまに奥さんとはラブラブのようでありましたよくわかります

少年という年頃ではない人に言っちゃ失礼か。でもまつげが長くて髪型はふわっとしたくせっ毛で、少女マンガみたいなんですよ。それで柔らかい口調と声で、菅井&船江のやりとりを柔らかく包みこみ……たまにポッと面白いことも言うんですよね。いやー、このメンツ選んだ菅井さんえらいな。ただ「気が合う人ら選んだ〜」ってだけかもしれないが、その自然体はもっとえらい。

で、解散イベントをやるというのも、自分たちの手作りイベントですよ。こういうところにABEMAのカメラが入ったり、なんならイベントはシャトーアメーバでやるなんつったったらもードッチラケですから。会場は加古川駅降りてすぐの『加古川まちづくりセンター』ですよ!

この看板を見た瞬間のヨロコビと期待をどう言い表したらいいか

あー、地方都市にはこういう古くさい半官半民の雑居ビルが駅前にありますよ。一階に地域スーパーとかファーストフードとか洋品店とか入ってて、上は事務所や会議室。加古川にははじめて行ったがはじめてとは思えないなつかしさにあふれる会場。市民俳句の会とかやってそうな。受付に並んでると西川さんや船江さんが「もうじき開場しますから受付で名前のチェックだけしますので」「座席の抽選をしてください」と説明してまわってて、よくあるシロート運営の不手際で「だーー、何やってんだよ待たせるなよー」みたいなことがぜんぜんない。すばらしい。

名前チェックしてもらって席番の番号札を引いたところに、菅井さん井上先生カトモモ女流がニコニコと並んでいる。「おはようございます(←朝9時半ですから)」と申し上げたら、菅井さんも井上先生もカトモモ女流もパッとこちらを見てニッコリ挨拶を返してくださるので嬉しい。

そしてイベント始まりの挨拶で菅井さんが言いましたね。

「皆さん、特別ってゲスト誰だと思いました?」
最初に考えたのは豊島さんでしたけど(会場ややざわめく)」

豊島さんというとき目がキラキラ輝く(嘘

「あれ電話でちゃんと依頼すれば来てもらえたのかも」
「会っていきなり17日ヒマですかってきいたから」
「だめですって」
「その時、棋聖戦の挑決とかでまだ予定がわかんない状態だったんですよ」「あとからこういう企画でって説明したら、そういうのなら出てみてもいいみたいなこと言ってましたけど」

やはり豊島ゲストの可能性はあったのか! 出る気もあったのか!(でも出ないでくれてよかったと今でも思ったり←めんどくさい性格)

イベント(17日昼の部)の式次第は、

・開会の辞
・NGワードゲームふたたび
・将棋の反則についてのトーク
・フィッシャー対決ふたたび 予選(船江vs西川)解説菅井竜也
・フィッシャー対決ふたたび 決勝(西川vs菅井)解説井上慶太&加藤桃子
・フィッシャー対決番外編(井上vs加藤)解説チーム菅井
・みんなでトーク大会
・プレゼント抽選会
・閉会の辞

(例によって自分の印象に残ったことしかおぼえてないので、順不同にそれを書いていきます。メモとってるわけでもないので発言などはそのままじゃないです、こっちの聞き間違いもあるかもしれません、ということは先にお断りしときます)

★本気で将棋の勉強をすれば
菅井さんは木村朱里女流一級をすごく「見どころある、いい将棋指す」と買っているのは有名ですが、この日も何かのはずみでその話になり(確か、女流からアマ?まですべての棋譜を読んでる、自分は棋譜マニア!という話の流れ)、「木村さんが3年間本気になって勉強したら」「里見香奈と三回に一回ぐらい(←ここがうろおぼえなんだけど、確かこう)いい勝負ができるようになるかもしれない」と言った。私はこれにけっこう衝撃を受けた。見どころのある棋士が3年間の本気の勉強をして、到達する地点が、「まだそこなのか」と思ったのであった。将棋道は果てもない。

★加藤桃子関西移籍後初関西イベント

思えば朝日杯有楽町の大盤解説から、カトモモは関西の風に馴染んでたよね

加藤桃子女流の移籍の話。移籍に深い理由があるというよりは、環境を変えたい、というようなことみたいでした。それで、東西の将棋会館の雰囲気の違いみたいなものにもちょっと触れてらしたが、関西だと棋士室に誰か必ずいて行けば将棋指せる、みたいな感じだけど千駄ヶ谷は、棋士がいないってことはないけどそこまで「行って将棋する」空気じゃない、とのこと。

将棋に関東も関西もない、とは思うけどやっぱり文化の差みたいなものがあって、私は西を愛するものであります。『将棋世界』の「元関西奨励会幹事座談会」で、西の将棋が弱かったから「とにかく会館では将棋を指す」ことを徹底させたんだと畠山鎮先生や井上ケータマン慶太先生が語っていたものである。ある時点で意識改革をしたわけですね。それ以前は棋士室のテレビは競馬競輪の中継しか映ってなかったと。
(そういえば、豊島の師匠の桐山先生は競馬大好きだそうだ。知り合いの作家がパーティー会場で桐山先生と同じテーブルになり、熱い競馬トークが交わされたとな。しかし弟子の豊島が競馬が好きなようには到底思えない。まあ、馬券がうまいようにも思えないしおすすめはしない……)
関西馬がG1で勝負にならなかった頃、ウッドチップコースと坂路調教をはじめて関西馬王国にした、という話を思い出す。棋士室のテレビから競馬が消えて、関西棋士室の棋士たちは関西馬のように強くなった。

井上先生「われらのおっちゃん」みたいな人だけど関西将棋界の底上げをした厳父です

★西と東の気風(※トークを見ての私見です)
しかし、このチーム菅井、そしてゲストの井上先生、全員ばっちり「関西の風」である。カトモモ女流も、静岡の人で千駄ヶ谷育ちなのに関西の風が吹いているから移籍してもまるで違和感はない。何回でも書いておくが「どっちがいいとか悪いとかいう話ではない」。西の風と、東の風が将棋界には吹いている。で、菅井さんは西の風がいちばん強い。びゅーびゅー。そして豊島も西の人であって風の質がちがうがぴゅーぴゅー吹いている。風に舞う。

★中国地区ナンバーワン
菅井さんのお姉さんが。中国地区docomoショップナンバーワンの売り上げを誇るそうです。何かすごく納得させられる。私のスマホはauですがお姉さんのいるショップ行ったらdocomoにMNPさせられそう……。

★エビチリ
あのチーム動画撮影の時、菅井さんは一時間かけてエビチリをつくったんだそうだ。すごい美味しくできたらしいが、動画にはまったく使われていなかった、なんで!? とのこと。(でもエビチリつくるのに一時間とは、どこに時間がかかったんだろう。エビのカラむき?)

★アベトナって棋士は見るものなのか
自分のチームが負けたあと「ぜんぜん見てない」菅井さん。井上先生もあんまり見てないと言うてはった。

★反則話は面白い、が怖ろしい
アベトナ予選リーグ、船江さんが佐藤天彦相手に「王手放置」の反則で負けたので、反則話。そうなるとやっぱり出てくるのが、菅井さんがB級1組順位戦で橋本崇載八段相手にやった、俗に言う「角ワープ」。

その時の話をしてくれたわけですが、「記録係がなんか言いたそうにしてもぞもぞしてるんだけど、ぼくイラッとしてね」。会場は爆笑してが私は「ひえー」と震え上がった。

こんなに愛嬌がある菅井さんだが、勝負の時の入り込みようは鬼神の如くであり、そんな鬼神に「反則なんじゃないでしょうか」って声かけるのコワイよなー、あげくにイラッとされたりしたら、おしっこちびるぐらい怖ろしいですよ……!

と思ったけど、そのときの記録係は現四段の齋藤裕也だったそうで、齋藤くんだとするとあんまり気にしてないかもしれないな今年のチーム藤井での様子を見てると。いかにもマイペースっぽいし。いや、わかりませんが。それにたぶん、菅井さんが鬼神なのは対局の時だけであって、その時に怒らせたとしても後はひかないだろうと思う。そのへんサッパリしてそう。

あと、ハッシーのことは嫌いじゃないみたいでした。いや、私も、ABEMAでたまにハッシーが解説やってる古い対局映像見ますが、将棋をやることにおいてはふつうに才能ある人だったと思いますね……。

★アベトナの対局話から「佐藤さんの態度」
「あの(王手放置の)時、佐藤さん(て確か言ってた。天彦さんとは言わないんだなーというのが菅井さんらしい)は王様をスッと、こういう手つきで取りましたからね」
「それウソやし!」叫ぶ船江さん。
「チーム佐藤に負けたあと、ぼくら三人で佐藤さんに土下座しました、このあとお願いしますって」
「はははは」
「そしたら佐藤さんが、イスにこんなふうに座ってね(と、かっこつけて足組んで座る格好をマネしつつ)、ぼくらの土下座をこ〜んなふうに見下ろして、んーわかった、って」

たぶん「こんなふうに座って」るんですよね

「それウソやし!」
菅井さん、「六割がウソで四割がホントってのがぼくの話ですから」って朝日杯の大盤解説で豊島に言ってたなあ。でも、土下座を見下ろしながら、イスにすわって足組んで、「髪の毛をこんなんやってかきあげちゃってね」という佐藤天彦の姿は目に浮かびすぎて、もはや真実ということに私の中で決定しております。

ところで、

こ、れ、は……(^_^;)
「全く話した事ない」って、感想戦は。いやそういうことじゃないですね。しかしこれは想像がつかんイベントだな。どうなるんだ。今年上半期でもっとも面白かった大盤解説は「朝日杯有楽町の菅井竜也」と「名人戦椿山荘の佐藤天彦」が東西の横綱だが、この二人の解説の、面白さの質が「まっっったく、ちがう」んよな。菅井さんのは「菅井竜也の人間的魅力解説」で佐藤さん()のは「佐藤天彦の美学開陳解説」ですから。この二人の話が合うような気がしない(汗)。でもまあ二人とも大人だし、イベントとなればサービス精神大放出の人なので、客の背中に冷や汗が流れるようなことにはならないと思うが。配信してくれんもんかなー。ムリか。

こんな調子で、チーム菅井解散イベント17日昼の部は終了しました。レポートすべきことがぜんぜんできてないという気もしますが(席上対局のことをひとつも書いてないってのはどうなのよ)、特筆しておきたいのは、このイベントはとてもアットホームで、しかし馴れ合いっぽい空気はなく、手作り感あふれるがグダグダにはならず、客が快適に楽しく過ごせるように気を遣ってくれていることがよくわかるという、たいへんすばらしいものでした。約3時間にわたるイベントを都合4回も開催したチーム菅井の皆さん、すごい手間がかかってたんじゃないでしょうか。残りの3回がどういう内容だったのかわかりませんが、チーム菅井ならば内容を替えてきたのでは。まあそうじゃないとしてもトークの内容はかぶってないと思われる。4回見たかったものであります。とにかく、ありがとうございました。

たくさん当たるようにたくさんプレゼント用意されてましたが当たりませんでした……菅井四段扇は貴重であります

心残りは、加古川の町を歩けなかったことです。終わったらただちに新快速乗って大阪に向かってしまったので、船江さんがあれほどオススメしてたかつめしも食えず、アーケード街にある菓子屋めぐりなどもできなかったのでこの規模の地方都市好きとしては機会をみつけて加古川訪問をしたい。

まずはかつめしだ!

そして。それはそれとして、「佐藤さんと菅井さん」のイベントがあるなら「豊島さんと菅井さん」のイベントもあり得るわけか……。実現したらどうしたらいいんだ。どうもしないでいいよ! しかし考えこんじゃうよね。いや、ぜったい面白いと思うけど。

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