樋口大輝

アジアを中心に活動するサッカーコーチ。監督としてアジアを獲ります。“最後に生き残る種は…

樋口大輝

アジアを中心に活動するサッカーコーチ。監督としてアジアを獲ります。“最後に生き残る種は、最も強い種でも最も賢い種でもなく、最も変化に適応できる種だ”

最近の記事

違うこと

「違い」を体験する機会は大変貴重です。現在6歳と5歳になる娘たちは、コロナ後約2年半ぶりに日本へ帰国しており、爺ちゃん婆ちゃんのサポートを受け「違い」を体験する機会を得ています。 例えば今回、爺ちゃん婆ちゃんの計らいでプール付きのホテルに泊まる機会があり、大好きなプールに入った娘たちが「なぜあの人は服を着て椅子に座ってプールを見ているの?」と聞いたそうです。タイのプールに監視員がいることは稀なので、とても珍しかったようです。 温泉に入った際も、真っ裸の人たちがお湯に浸かっ

    • カルロス・アンチェロッティに学ぶマネージメント術

      数々の逆転劇でUEFAチャンピオンズリーグ決勝まで勝ち上がり、見事優勝を果たしたスペインの銀河系軍団レアルマドリードを率いるイタリア監督のカルロス・アンチェロッティは、準決勝でクロースやマルセロと交代策について意見交換する場面がTwitter上で拡散されていたように、選手との対話を重視したマネージメントをする人物だということが彼の著書を通じてよくわかりました。 非常に興味深いのは、そのマネージメントスタイルに行き着いた経緯。カルロス・アンチェロッティの母国イタリアでは、監督

      • 子どもは叱られると強くなるのか

        子どもの教育において、怒ること(怒ることは感情が先行しているため)は良くないと思っていましたが、叱ることもまた自分の基準(私の言っていることは正しいという前提に立っている)で子どもの行動を評価してしまっているので、一概に良いとは言えないですよね。人を傷つけたり、死に直結するようなこと以外、叱る必要はない気がしています。 スポーツ指導の現場でも、“子供は叱られることで強くなる“というようなことをよく耳にしますが、本当にそうなのか私は疑問です。子どもは何か始める動機として「〜し

        • 自信の正体

          監督としてデビューした昨年、リーグ戦、カップ戦合わせてハーフシーズンで26得点をチームとして挙げましたが、大事な局面での得点力不足に悩まされていました。得点機会の創出、シュート練習など試行錯誤の末にたどり着いたのが、シュートが入る場面を想像して自信を持ってもらうという心理的なアプローチでした。 後期途中から加入したチームも、特に前線の外国人選手たちが同じ問題を抱えていました。監督は彼らのメンタルに問題があるとして、それからほぼ毎日シュート練習を繰り返しました。ミスに関係なく

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          無知の知を持つ

          孔子は、「これを知るをこれを知るとなし、知らざるを知らずとなす。これ知るなり」と述べています。きちんと知っていることを「知っている」とし、きちんと知らないことは「知らない」とすることが「知る」ということであり、中途半端に知っていることは、知らないのと同じであるという意味です。 五輪3連覇の偉業を成し遂げたレスリング吉田沙保里選手を育てた栄監督は、「僕は結局、何が理想の指導かわかっていない」とおっしゃっていたそうです。結果を出しているにもかかわらず、常に探究し、疑い、確かめる

          無知の知を持つ

          人は思い込みに支配されている

          4月〜7月生まれの高卒Jリーガーが多いことはよく知られていると思います。それはなぜかというと、早く生まれるということは、遅く生まれた子たちよりも身体的な成熟度が早いと考えられているためです。しかしデータを追いかけると、20歳頃にはその身体的な有意差はなくなっているといいます。 なぜJリーガーの生まれ月に影響が出るのか?心理学では、スポーツを始めた時期を問題提起しています。サッカーを始めた時に、4月生まれの子と3月生まれの子では11ヶ月も差があるので両者の間には身体的な差が出

          人は思い込みに支配されている

          できることを増やす

          アスリートのセカンドキャリアが注目されている昨今。サッカー選手が現役中に起業したり、何か別のキャッシュポイントを作ったり、いわゆる副業が絶対良い!とされる風潮には僕は違和感がある。(副業を否定しているわけではない) 自分の将来を真剣に考えることは大切だし、来たるその日のために準備すべきだと思う。 しかし、寝る間も惜しんでとか、多忙ってプロアスリートとしての本業おろそかにするリスクが多少あるなと。 『できることを増やす』というのは、必ずしも目に見える形にする必要はない。

          できることを増やす

          タイ人はタイ人のことを実はよく知らない

          自国民の性質を知るためには、他国民の性質を知り比較してみると手っ取り早い。 例えば、有名なタイ人のマイペンライ精神 *マイペンライ タイの言葉で、問題ない、大丈夫、という意味で用いること多い タイに住んでいると、重大なミスを犯してもマイペンライで済まされ仕事が遅れるなど、時間にきっちりし細かいところに目の行き届く日本人からするとストレスの溜まるようなことにたくさん出会す。 一方、問題が起きた際、代案を見つけたり、次への行動を起こすのはびっくりするほど早い。(それ最初か

          タイ人はタイ人のことを実はよく知らない

          職業サッカーコーチの僕が子どもたちに伝えたいこと

          1993年にJリーグが開幕し、創成期の華々しいプロサッカー選手たちを見て、僕たちは育った。 プロサッカー選手になりたかった。 サッカーは美しく夢があると思った。 約20年後、念願の夢が叶い幸せな気分だと言いたいところだが、その過程で見てきたものは、金、権力、政治、宗教、賭博、賄賂、決して美しいとは言い難いことばかりだった。 プロの世界に足を踏み入れた時点でそれは避けては通れぬことは重々承知しているんだけれど、それだけでは面白くない。(人それぞれ夢の定義、何を求めるかは

          職業サッカーコーチの僕が子どもたちに伝えたいこと

          少しだけハッピーになる方法

          多様性って別に海外に出なくても身につくと思う。 ではなぜ日本で多様性が身につき難いかというと、日本ではこうじゃなきゃいけない、こうするのが正解だという価値観を押し付けられすぎる。 一方、海外を拠点に生活している人たちは、違う価値観、生活、文化、宗教に普段から触れ、インターネットを引いても出てこないような一次情報を手に入れる機会が圧倒的に多い。 時にため息をつかされるような目に遭ったり、常識では考えられないような出来事にも遭遇するんだけど、それでもその国の社会は普通に回っ

          少しだけハッピーになる方法

          突然ですが、契約解除になりました。

          私事ですが、契約期間満了を待たずにチェンライ・ユナイテッドを解雇されました。 理由は、あることがきっかけでオーナーを怒らせてしまったことによる一方的な契約解除。 長いコロナブレイクが明け、リーグ戦再開に向けてチームとしての準備期間を楽しみにしていた矢先の出来事に、さすがにショックでしたが、何よりも和解のチャンスすらなかったことが非常に残念でした。 僕自身、間違った行動をしたとは思っていません。 しかし直感的に判断し正しいと思うことを伝え、それを受入れてもらえなかった、

          有料
          100

          突然ですが、契約解除になりました。

          感情脳と論理脳

          コロナ明けのJリーグ再開後、J1でプレーするある選手の個人分析を担当していて、とても貴重な経験をさせてもらっています。 その中で気づいたことは、僕がやっていることはサッカーの個人分析ではあるのだけれど、その大前提として人と人のやり取り、そこに生まれるコミュニケーションの上に、個人分析が成り立っているということです。 伝える内容が選手のパフォーマンスに良い影響を与えるなんてことは当たり前ですが、コミュニケーションの取り方には工夫を凝らしています。 人間の脳には、感情を司る

          感情脳と論理脳

          世界戦での怒りのコントロール法

          コロナがタイでも流行り始め頃、自チームのトレーニングも中断し、チェンライに取り残された期間が約3週間ほどありました。 先の見えない状況、でも時間はある。 そこで僕は何か作りたいと思い立ち、サッカーの本を書いてみることにしました。(BS1スペシャル「封鎖都市 武漢 76日間市民の記録」の中で日記を書く武漢の女性を見てめちゃくちゃ共感しました。人間は、自由には向いていなくて、何か課題のある毎日の方が幸せなのかもしれません。課題を作って没頭したかったんですね。) でその本は英

          世界戦での怒りのコントロール法

          グローバル人材(サッカー指導者)にとって顧客は誰?

          日本を飛び出し海外へ渡る指導者も少しづつ増えてきていて、いい傾向だなと感心している一方、日本へ帰る指導者もそれなりに見てきました。 アジア、特に僕が活動しているタイでも、日本人指導者は活躍の場を求めて海を渡ってきたはいいが、理想と現実のギャップに敗れ帰国というケースも少なくありません。 指導力がなかったから?そうは思いません、皆さん素晴らしい指導者です。 語学力?それも大事、でも通訳いればその問題は解消できるよね。 性格の問題?それは知らない。笑 ここで少しマーケテ

          グローバル人材(サッカー指導者)にとって顧客は誰?

          話し手か聞き手か

          まず初めにはっきりさせておきたいことは、どちらかが正しく(良い)、どちらかが間違っている(悪い)ということを言いたいわけではなく、両方の視点を持っておくと良いですよという話です。 人の話は最後までしっかり聞きなさいと教えられ育った日本人の僕は、何度も頬を叩きながら眠気をこらえ、つまらない授業を聞く努力をしました。 が、一つも脳には入ってきません。。。 そんな経験をしたことがある読者も多いはず。 日本では、話を聞く側の責任ってかなり大きいよね。 じゃあグローバルに働く

          話し手か聞き手か

          アジアに期待される日本人

          アジアには日本人選手や指導者の需要があると言われている? 確かにFIFAランキング28位の日本(2020年5月時点)は、サッカー後進国として位置付けられるアジア諸国から見ると、魅力的に映るのかもしれない。 ただ世界には日本よりFIFAランキングが上の国が27か国もあるわけで、日本じゃなくてもいい理由はあるよねと、日本人ながら思う僕はいささかひねくれ者ではある。 じゃあなぜ日本人の需要があると周りから聞こえてくるのだろうか? ある日、日本人としてグローバル・リーダー(僕

          アジアに期待される日本人