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関西の人と関東で合コンした話

大学生というと合コンのイメージがあるが
私はそういった機会に恵まれない大学生だった。

 
 
多分それは、私の通っていた大学が他大学とあまり交流がなかったからだと思われる。

例えばクラス飲みだとか、新歓コンパだとか、運動部合同飲み会(私は大学一年生の時に女子サッカー部だった)だとか
中学や高校時代の友人との飲み会だとか
大なり小なり男女の飲み会は、いくつか参加したことがあった。

 
だが、合コンという飲み会に初めて参加したのは
私が21歳の時である。
合コンデビューは遅い。 

 
  
 
共学の大学に通っていたものの、一年生の時は女子サッカー部、二年生からは料理サークル(女子のみ)と
男子と関わりのない日々を過ごしていた。

 
高校時代に彼氏ができると思っていたが、三年間は無常にも過ぎていった。
ならば大学時代こそは!と意気込んでいたものの
大学と家とバイトの往復で終わった。
講義はビッシリ入っていたし
大学までは片道約二時間。

『大学はテニスサークルに入って~
他大学の学生と飲み会に行って~
バイトして旅行行っちゃって~
大学生活は遊びまくっちゃう♪』

 
大学生はそんなイメージがあったが
あくまでイメージでしかなかった。
研究や課題やレポートに追われており
睡眠時間が三時間を切ることもザラだった。

三年生になったら、ようやく講義数が減るものの
代わりに実習や個人研究が入り
それが落ち着けば就活が入り
同時進行に院試の勉強もしていたし
大学生活は決して気楽なものではなかった。

 
 
そんな時に、料理サークルの友人から声をかけられた。

「ともかちゃん、合コン行ってみない?」

ついに来た!と思った。
青春だ!青春の響きだ!ついに私も合コンデビューだ!!

 

 
私は了承し、サークル仲間四人と合コンに参加した。
他の子も合コンは初めてだった。

 
 
相手は同じ県内にある大学生で、同い年だった。
福祉科の学生だという。
なるほど、福祉を専攻しているだけあって
爽やかで優しい、穏やかな雰囲気の四人だった。
イケメンである。

正直、女子より男子の方がレベルが高かった。
みんな彼女もちなんじゃないかと疑いかかるくらい、合コンにそぐわないイケメンだった。

 
私は居酒屋に行った瞬間、あまりに顔面偏差値が高い四人が待っていたので

おいおいおいおい……

と、本気で思った。
まさか、初めての合コンがこんなことになるとは。


 
いざ合コンが始まっても、女慣れをしていそうなチャラい印象はなく
みんな普通に優しかった。
話を振ってくれたりもしたし、福祉と心理学という似た領域の学問を学んでいたこともあり(合コン参加メンバーは私含め全員、臨床心理学を専攻していた)、そういった分野の話でも盛り上がった。
お互いに飲み過ぎることはなく
ほどよく食べ、ほどよく飲み、ほどよく話した。

 
のちに、男性陣はタバコを吸うことも聞いたが、誰一人合コン中は吸わなかった。
そういった配慮ができるのも当たり前ではないということは
後に私はよく思い知る。

 
 
二次会ではカラオケに行った。
飲み会はともかく、男女混合でカラオケに行くことは久々だった。

「実は今日はね、ともかちゃんのお誕生日なんでーす!」

カラオケ中に友人が言った。
合コン参加者から「おめでとう。」とお祝いされた。
友達とイケメンに囲まれてお祝いされる誕生日は悪くない。

それが、私の21歳の誕生日だった。

この時はまさかこの一年後の誕生日に、初彼ができるとは全く思っていなかった。
まだこの時点では初彼と出会ってさえいなかった。

人生とはどうなるか、本当に分からない。

 
 
さて、初めての合コンはその後どうだったかというと
特に何もなかった。

連絡先を交換し、参加メンバーの中で一番気になった人に私はメールしてみたが
「また機会がありましたら、みんなで集まりましょう」的な
いかにもな社交辞令メールを受け取った。
私もそこまでバカじゃないし
ちょっと気になったレベルだったので
それ以上深追いはしなかった。

 
その二ヶ月後にまさか、大手福祉企業のグループ面接でその人に再会するとは
全く思っていなかった。
再会したとは言っても、面接の場なので軽く挨拶くらいしかしなかった。

私は落ち、彼はそのまま内定をもらい
彼女もできたと噂で聞いたが
その数年後、その企業は違法行為をやっていたことで、大々的にニュースに載った。

彼はその後どうなったか、私は知らない。

 
それでも、初めての合コンに悪い思い出はない。
なんでも初めての体験は、どんな感想だったかが鍵になる。
最初に嫌な思いをしてしまうと、二の足を踏んでしまう。

いいスタートが切れたことは、悪いことではなかった。


 
 
  
 
 
就活後、思いがけない形で初彼ができ、別れてから次の彼ができ
私はしばらく合コンから離れた生活をしていた。

 
しかし、私は婚約破棄した時が、もうすぐ27歳になろうという時である。
アラサーであり、家を継ぐ使命がある私は、例え気乗りしなくても休んでいる暇はなかった。
適齢期であり、出産を考えると早く出会いを探さなければいけない。

「これからは婚活ね。」  

母が告げた。拒否権はない。
時代はちょうど「婚活」「アラサー」という言葉が流行し出した頃で
流されるままに、私は婚活人生がスタートする。

 
 
「今度、合コンあるんだけど、行ってみない?」

私にそう言ってきたのは、婚活仲間だ。
私とほぼ同時期に婚約破棄になった友達とは絆が深まり、私達は三人で婚活同盟を組んでいた。

「4対4だから、もう一人女子が必要なんだけど、誰か知り合いいない?」

そう言われて私は、他の独身仲間に声をかけた。
一人、都合がついたので、その子を含めた四人で合コンに乗り込むことになった。

 
 
 
私はさほど期待していなかった。
あの初めての合コン以降、何回か合コンに行き、私は仕組みが分かっていたからだ。

私は合コンに向いていない。

合コンに参加すればするほど
私はそれを痛感した。

 
 
まず、合コンは圧倒的に、かわいい子がモテる。
容姿に恵まれていない私は、完全に不利であった。
婚活同盟の二人は、容姿に恵まれていたし
他の友達にしても、みんな私よりスタイルが良く、かわいかった。

かわいくて、サラダを取り分けるような気遣いができて、家庭的で、聞き上手。

そういった子が、合コンでは圧倒的に有利だった。

 
 
さて、私はといえば、決してかわいくはない。
身長も165cmと高く、かといってスタイル抜群とはいえないスタイルだった。

サラダはみんな取り分けるので、私が出る幕はない。

家事力が高くもない。得意料理を即答できないし、お味噌汁を作る時も、手間暇かけて出汁をとるタイプじゃない。今はインスタントの粉状の出汁も、非常にいい出来だと思っていた。

聞き上手、でもない。
私は女性に対しては人見知りしないが、男性は人による。
話しやすいタイプがいればベラベラ話し、苦手な人がそばにいると硬直してしまうタイプだった。

 
かといって、合コンを断ることはできない。
どこに出会いがあるかは分からない。
根が真面目な私は、婚約破棄をしてから、ありとあらゆる婚活をしてきた。
「例え気乗りしなくても、誰かに誘われたら最低一回は会う。」という目標を掲げていたし
今でも掲げている。

 
アラサーで家と職場の往復の私に、合コン拒否権などないのだ。

 
 
 
その日の合コン場所は、初めて行くお店だった。
お洒落なお店で、料理が美味しいと評判だった。

時間になり、男性が四人やってきた。
個性豊かな四人だった。年齢もバラバラである。

 
合コン定番の簡単な自己紹介タイムをした。
私達女性陣は、学校勤務、病院勤務、福祉施設勤務が二名。
男性陣は、みんな同じ会社で働いていた。私は詳しくないが、友人が大手企業だと言っていた。

「実は俺ら、みんな関西出身なんや。」

私は面食らった。
どうりでイントネーションや語尾に軽い違和感を覚えたわけだ。
 
 
 
話によると、全員転勤で関東に来て、同じ関西出身ということで、年齢がバラバラでも意気投合し、こうして仲良くなった、ということだった。

女性陣は、三人が同じ学校出身、一人は私の友達だと説明し、「つまり、ともかちゃんが三人の友達なんです。友達思いのいい子なんです。」と三人がプレゼンし出した。
いやいや、照れるからそういった露骨なアピールはやめてくれ。

 
 
関東で、関西出身の人四人と合コンはレアだな、と思った。
さすが関西出身なだけあり、ノリが良く、話が上手い。
そこで私はついつい、普段通り振る舞ってしまった。
盛り上げ役に徹してしまったのである。

「ともかちゃん、おもろいなー。ほんまに福祉職か?」

「吉本入れー吉本。」

「関西の女の子でも、こんなにおもろい子はなかなかおらんで。」

 
私のトークや物真似はウケに受けた。
……そう、こんなことをやっているから、私はモテないのだ。
ついつい笑いに走ってしまう性分だから、私はモテないのだ。
自分でもよく分かっていた。

 
「吉本に入れば?」は、これで言われるのが人生三度目だった。
中学時代から私は、ついつい笑いに走るようになってしまった。
多分それは、女性らしく振る舞って真っ向勝負をしても、他の女性に勝てないからだし
散々「ブス」「デブ」「暗い」と罵られてきたからだ。

明るく面白ければ、デブでブスでも許される。

私はそう思っていた。
バカにされて笑われるのならば、私が笑わせる側に回ればいい。
デブでブスとして生まれた私は、お姫様にはなれない。
いいんだ。女友達には恵まれた。女友達は私を受け入れてくれる。
男子はみんな、かわいい子が好き。
分かってる。
女子はみんな、基本かわいいもの。

私が一番にはなれない。
私は女性として扱われない。
元彼達はただの物好き。

私は自分の容姿がどんなレベルか分かっていたし
自分の立ち位置もよく分かっていた。

 
…………つもりだった。

 
 
 
トイレに行った際、友達に言われた。

友「男性陣、みんなともかに気があるみたいよ。」

私「んなバカな!?あんな、女を捨てて笑いに走ってるのに。」

友「マジマジ。ともかがトイレ行った瞬間、男性陣がともかについて噂したり、質問攻めだったんだよ。」

友「自信持って。ともかはかわいいよ。優しいし、面白いよ。男は元彼だけじゃない。次に行こうよ。」

 
 
 
飲み会の後、カラオケに行くことになった。
参加メンバーのうちの一人から、私はかなり露骨にプッシュされた。

周りの話によると、四人が私を気に入ってくれたが、その内の一人が初日ですっかり私を気に入ったので、「本気で落としたい。」と言ったらしい。

 
どうやら友達の話は、本当だったらしい。
確かに男性陣はみんなに優しくしつつも、私に対しては特別だったし
その内の一人に関しては、彼はガンガン押してきた。
今までの合コンではあり得なかった展開だ。
いつもモテモテの友達より、私の方がウケがよかった。

「私達、特に今回気になる人はいないよ。私達はともかに、恋で幸せになってほしい。協力する。」

 
どうやら私がいない間に、女性陣三人は意気投合し、私の良さを男性陣に話したり、さり気に男性と私が二人きりになれるようにし出した。
私はジーンと来てしまった。
自分以外の女子がチヤホヤされる辛さを、私は身をもってよく知っている。
楽しいわけない。
それなのに、飲み会の後のカラオケまで、女性陣は付き合ってくれた。

私は学校時代からの仲だから知っているのだ。
婚活同盟の二人は、カラオケが嫌いだった。

 
 
 
カラオケ後、私達は連絡先を交換した。

「今度は二人で会いたい。」

私はストレートにアタックされた。

 
 
 
 
だが、私はダメだった。

その人に関しては怖かった。
いくら周りや親がススメても、私はどうしてもダメだった。
元彼が忘れられないからではない。

重かったからだ。

婚活中、私が気になった人は私に興味がなく
私に好意を持つ人は、大抵重かった。

 
 
メールが鳴り止まず、内容も病んでいたり、過激であり
私を想ってくれる人に前向きになろうとすればするほど
私はパワーを吸い取られ、病んでいった。

その人も、そのタイプだった。
とてもじゃないが怖くて、二人で会う気は起きなかった。
合コンで過ごした数時間と、数日間のメールで
私はその人がどんな人か、おおよそ分かってしまった。

私の婚活は、振り出しに戻った。

 
 
 
 
 
考えてみれば、私の元彼や仲の良い男友達は大抵、他県出身だった。
私は県内の男性にウケが悪いのかもしれない。

本家を継ぐ存在として家から離れない私が
他県出身の人からウケがいいなんて
なんたる皮肉だろうか。

 
「多分、結婚するなら、他県出身だけど転勤族じゃなくて、長男じゃない人が相性いいんだろうな。」

私はその頃よく、友達にそう言っていた。

 
 
だけど結果的にだが
私はいつも長男の人と付き合った。もしくは仲良くなった。
この合コンの後に付き合った人も、やはり他県出身者であった。

 
「う~ん………。」

 
私は唸るしかない。

年下・年上・同い年、A・B・O・AB型全てと付き合ってきたし
プロポーズも何人かにされたが
結局誰とも上手くいかずに今に至るのだ。
昔は、ある程度好みがあったし、明言できたが
もはや誰となら上手くいくか分からない。

 
結婚できる気がしない。

その思いは日に日に強くなりつつも
私はまだ諦めきれずに、今に至る。







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