鮭おにぎりと海 #45

<前回のストーリー>

シカゴのカフェにて満席のため、ひとつのテーブルで見ず知らずの女の子と座ることになった。その時点で俺の頭は少し混乱している。どこからともなく、柑橘系の薫りがふわりと漂う。

まず彼女が先に名乗り、自然とお互い英語で自己紹介し合うことに。

彼女の名はマリーで、シカゴ大学に通う大学生。アートを専攻中。大学の講義を受ける中で、日本の文化である「わび・さび」に興味を持ったそうだ。

「いつか日本に行って、自分の目で実際に日本古来の美意識を感じたいの。どうしても忙しいと忘れてしまうじゃない?自然や季節ごとの風景の中にある美しさを。それをもう一度、日本で見つめ直したくて。」

彼女の瞳は、澄んだ碧い色をしている。その瞳は、我が故郷である茨城の淀みない海を想起させた。生一本の芸術家のような、意志の強さ。

マリーとはその後30分ほど話し、3日後また同じ場所同じ時間に会うことを約束して別れたのだった。

この記事が参加している募集

末筆ながら、応援いただけますと嬉しいです。いただいたご支援に関しましては、新たな本や映画を見たり次の旅の準備に備えるために使いたいと思います。