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#本

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気になった本をただただ読む。そのまとめ。
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#村田沙耶香

私の中の「信仰」

私の中の「信仰」

私はいつしか、「私」を捨てることになった。

「なんで、胸の下に線があるの?おもしろい。」
小学校のプールの授業の時間に言われたこの言葉を、十数年たった今でも、鮮明に思いだすことができる。

それは、初夏盛りの午後だった。お昼休みのあと、水泳の授業のために水着に着替え、プールサイドに集まって整列していた時のことだ。
この発言をした同級生は、きっと面白半分で言ったことなのだろう。
ただ、私にとっては

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私たちが生き延びている世界の中で 『地球星人』/村田沙耶香

私たちが生き延びている世界の中で 『地球星人』/村田沙耶香

「殺人出産」「コンビニ人間」の次に、『地球星人』を読了しました。

あらすじ:恋愛や生殖を強制する世間になじめず、ネットで見つけた夫と性行為なしの婚姻生活を送る34歳の奈月。夫とともに田舎の親戚の家を訪れた彼女は、いとこの由宇に再会する。小学生のころ、自らを魔法少女と宇宙人だと信じていた2人は秘密の恋人同士だった。だが大人になった由宇は「地球星人」の常識に洗脳されかけていて…。

私たちの周囲に存

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私はコンビニ店員が大嫌いだった 『コンビニ人間』/村田沙耶香

私はコンビニ店員が大嫌いだった 『コンビニ人間』/村田沙耶香

村田さんの小説にはまってしまい、すぐさま次の作品を読了。

本著を読みながらまず想起したのが、「過去のコンビニでのアルバイト」の出来事である。

恐らくそのころ、私自身は相当、まわりの店員(昼勤の既婚女性)に馬鹿にされていたと思う。その経験が、自分の思い込みであるという範疇からは、完全に抜け出せないかもしれないが、当時も、今も、そう思う。

何でなのか、今も分からない。仕事っぷりがくそだから?性格

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何かを産み落とすということ 『殺人出産』/村田沙耶香

何かを産み落とすということ 『殺人出産』/村田沙耶香

殺人/出産、という相対する(ようにみえる)題目に惹かれて、数か月前に買った本。(ようやっと読めた。)

概要:今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪うものが保つ日本。会社員の育子(主人公)には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは、彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変異する。

まず、「殺人」「出産」、生を消去す

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