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織部
2023年8月27日 08:06
そして最後に残った杏を指で摘んで口に運ぼうとして、止める。 私のことをじっと誰かが見ている。 私は、視線の感じた先に目をやると8歳くらいの綺麗に髪を切り揃えた男の子がこちらを見ていた。 男の子は、私と、そして血の海に沈んだ男達をじっと見る。「映画の撮影だよ」 私は、男の子が聞いてくる前に答える。「急遽、映画にエキストラ出演することになってね。おじさん達は死体役だから動くわけにはいかない
2023年8月25日 07:08
「薬を下さい」 窶れた背の高い男性が私を見下ろしながら言う。 私は、箸を止めて男を見上げる。「いらっしゃい」 私は、思い切り輝いた営業スマイルを浮かべる。 楽しみを奪われた不平不満なんて決して出しはしない。 私の笑みに釣られて彼も小さく笑う。 彼は、先ほどの女性同様に私の商売の常連だ。しかしその顔は、私の知る彼の顔よりも採掘機で彫られたのではないかと思うほど、頬の肉が削れ、小麦粉でも
2023年8月24日 07:07
いい天気だ。 私は、いつもの公園のいつものベンチに深々と腰を下ろし、お気に入りの白いハットのツバを持ち上げて空を仰ぐ。 さめざめと広がった青い空。 叱りつけるように頬を嬲る風。 そして嫌気かするほどに暑い太陽。 まったく、何て商売日和な日なんだ! 私は、妻が用意してくれたお弁当を膝の上に広げる。 これが1日で1番楽しみな時間だ。 今日のおかずは、鮪の照り焼き、卵焼き、蒲鉾、筍の甘辛