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自転車道が途切れない!ドイツが憧れるコペンハーゲンでのサイクリング回想記

2021年9月中旬、スウェーデンに行く用事ができてしまった。私はドイツ移住以来、欧州内の移動なら飛行機を使わない "#飛び恥 生活" をしているので、今回の移動手段も鉄道である。ドイツからスウェーデンに飛ばずに行くには、基本的にデンマークの首都コペンハーゲンを通る。通ってばかりで街を観るためのステイ歴は2泊のみとまだ実体験の浅いこの都市に、今回27時間滞在し、ひたすら自転車で走ることにした。ドイツの走行環境目線から見えたことを、車両編・自転車利用者の姿編・安全面編・駐輪編・アクセプタンス編の5つに分けてアウトプットしてみたい。

車両編

・レンタル車両は体格に合う自転車を!

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何度か #飛び恥 旅程がゆえに利用している寝床がある。コペンハーゲンの物価は高いが底値で一泊一部屋予約ができ、中庭におびただしく並ぶレンタサイクル車両を借りつつもりでいた。しかしどこからか自転車はBaisikeliで借りるべしとの声が。そのためまずはコペンハーゲンの自転車シーンにしっかり根付く、この街の顔的な自転車屋に向かった。

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カゴ付きがよかったので少数派の中から一台選び、鍵をもらう。そして漕ぎ出してから気が付く、上半身とハンドルとの距離に妙に上がっている肩。借りた7ギアのRaleigh号のフレームと身長160cmの私は、ベストマッチではないことを悟るが、とりあえず乗り続けてみることに。しかし宿号と並べてもフレーム差は歴然で、翌日はスーツケースロジの関係もあり、最後の3時間は車両をチェンジ。より体格に合う車両に変えてよかった。案外、宿泊施設が用意する自転車の方が、その想定される体格のレンジにはまる可能性が高いのかもしれない。デンマーク人の身長が、オランダ人に次ぐほど高いことを忘れてはいけない。

・信号待ちの脚置きは、逆踏みブレーキ自転車にぴったり

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ということで2台の自転車をレンタルして乗ったが、両方とも逆踏みブレーキ仕様であった。どうやらオランダと同じく、デンマークでも逆踏みブレーキが主流らしい。大きな交差点なら珍しくない程度にこの脚置きに遭遇したが、主流の自転車のブレーキタイプがこれならと、走り出しをアシストしてくれる自転車フレンドリーな仕掛けに、妙に納得してしまった。

・オランダの自転車サブスクSwapfietsは3種混在

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最近、欧州の各街の自転車インフラの整備状況と、その街で選ばれる車種の関係を気にしている。その比較がしやすいのが、オランダの自転車サブスクSwapfietsだと思っている。"常に使える自転車を"というコンセプトのもと、基本的にはギアなし、7ギア、Eバイクの3種類が定額で提供されている。サービス提供国は、オランダ、ベルギー、デンマーク、ドイツ、フランス、イギリスと拡大。動画で見る限り、オランダはギアなしが圧倒的な一方、ドイツは7ギアがフードデリバリー従事者だけでなく広く人気。コペンハーゲンはというと、3タイプすべて同数くらいに見かけた。上の写真では手前のEバイクに、右端に7ギアタイプが写っている。

・BullittよりOmnium多数!荷物から人まで積載運搬

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オランダより子供&大人がカーゴバイクで運ばれている印象があるコペンハーゲン 。デンマーク発のカーゴバイクメーカーも多い。スポーティな走行感がウリのBullittはドイツでも人気のカーゴバイクだが、なぜだかなかなか見かけず.. その代わりによく見かけたのがOmnium。上の写真のように人が乗っていたり、荷物を載せていたり、自由度が高そうというか、乗り熟しに自由があった。

・ホテルの車寄せに寄せられるカーゴバイク

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コペンハーゲンのすべてのホテルにこんな光景が広がっているわけではないが、こんな光景をドイツのホテルの車寄せで見られるだろうか?

・もしかしてトゥクトゥクが流行ってる?

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27時間の滞在中、トゥクトゥクを数台見かけた。対してブロンプトンはゼロ台だった。

自転車利用者の姿編

・出で立ち

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朝のラッシュアワーを見てみたく、9月17日金曜日の朝8時半頃、Niholaストア前の石のベンチの上に立った。デンマークは9月10日にコロナ規制が全廃された。ホームオフィス率については知らないが、朝の自転車ラッシュというものはそこにあった。さすが通勤or通学のための移動のほぼ50%が自転車によって行われる街である。気温は確か16度ほど。オフィスで着替えることを想定しているような人は全く見当たらない。普段の自分が着たい服、通勤カジュアルが大方で、スポーティなウェアの人はかなり珍しかった。今度は議員の60%以上が自転車で通うらしい国会前で張り込んでみたい。

・自転車エアーバックHövding着用率高し!

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いざ、自分もこのDybbølsbro橋前の交差点で二段階左折を前に習ってしてみる。する前からわかっていたことだが、スウェーデンはマルメ発の自転車エアーバックHövdingの着用率がなかなか高い。エーレスンド圏の隣街は、自国だけでなくコペンハーゲンのサイクリストの安全を大いにサポートしている。フランクフルトだとHövding着用者はごく少数派である。一般的なヘルメットよりかなり高額なので、DKK>SEK>EURという物価の差も影響していそうだ。ちなみに、ドイツで「ヘルメット」については、"その扉を開けてしまうと収集が付かなくなるので今日は開けません"という断りのステートメントを何度も聞いているテーマである。

・ヘッドホン

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割とヘッドホンなりイヤホンをして自転車に乗っている人を見かけた。肌感覚で、これはドイツよりもかなり多い。むしろドイツだと、誰かがどこかから注意してきそうな感覚がある。自転車に乗りながら音楽を聴くことは、ドイツでは弱音であれば許可されているが、音量が大きすぎ過失につながるような場合は、15ユーロの罰金対象となる。

・自転車利用者の交差点での動き 

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交差点で信号を渡り中腹まで来ると、減速し、左腕を曲げ、掌を肩の高さに上げ、左折のサイン出す自転車利用者を多く見た。また、横断歩道を渡る時は、自転車を降り自転車を押す歩行者として渡っていた。後者の方が、実行している人が多かった。ちなみに、オランダやスウェーデンなどで聞かれる「カチカチ」という、視覚障害者が信号の切り替えを音でわかる仕組みはないようだった。

安全面編

・途切れない自転車レーンで安全に交差点に侵入

長年に渡る市民側からの働きかけの甲斐もあり、ドイツの自転車走行環境は少しずつ改善しては来ている。しかし、突然に自転車道なり自転車レーンが終わり「は?この後どうしろと?」という心境は、歌のタイトルになるくらい共有される、まだまだ日常茶飯事の現実である。コペンハーゲンから帰ってきた後、初めての交差点で信号を待っていると、なぜか青に一向にならず赤のままだった。そのインフラ落差は随所で激しく、もはや毎日道路でいじめられているような気さえするし、実際そうなのだ。なぜ自転車道は交差点手前で途切れるのだろう?

・唯一危険を感じたランドアバウト侵入路

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オランダがランドアバウト王国だとすれば、コペンハーゲンは二段階左折王国だろう。コペンハーゲンで比較的新そうなランドアバウトに初めて差し掛かり、嬉々として近づいた。しかしこの注意を促すような標識が諭した通り、自転車レーンは細まりほぼ消え、後方からお構いなしに来たバスとの距離が非常に近くなった。唯一「危なっ」とひやっとしたところである。

・工事現場で感動

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工事や整備点検などで自転車道/自転車レーンが通行できなくなっている箇所に数カ所出会した。しかし、どれもに代替ルートが設けられており、同様の安全が保証されているようだった。ドイツだと、この点にも課題が満載であり、コペンハーゲンのそれを通ることは心が震えるような体験である。また、自転車道/自転車レーン上に乗用車や配送トラックが停止していることは全くなかった。

・時速40km制限の道路で感じる安全

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ドイツの市街地内に時速30km制限を求めない自転車団体、環境系交通団体、自転車都市決議などの市民グループはないだろう。フランクフルトの市内中心部に、真っ赤に塗装された自転車レーンが登場したが、そこの時速40km制限とこのコペンハーゲンのそれでは、全く感じるものが異なる。時速40km制限の道路で安全を感じられるなんて、思いもしなかった。

・CopenHillを諦め交通児童公園に

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廃棄物発電施設CopenHillに行こうかと思っていた。ルート選定も兼ねて地図の東の方を物色していると、交通児童公園を発見。CopenHillはまたの機会にすることに... CopenHillも交通児童公園もAmager Østという地区にある。公園は空港のあるKastrup地区の近くまで住宅街を進み、エアメーターとバス停に隣接して作られていた。そこには親子が1組、推定2、3歳の子供が絶賛練習中。コンテナを改造した自転車図書館も設けられており、実践学習の場としても活用されていそうだった。

・交差点でのクルマの動き

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自動車交通のための停止線が、自転車交通のそれと一直線に並び、危険を感じるようなことは皆無だった。基本的には自動車交通の停止線が下げられ、信号も自転車交通用が先に青に変わるため、ドライバーは自転車利用者の姿がよく見える。ドライバーが右折しようも信号待ちをしていた全ての自転車利用者が通り切ったか、見る姿勢、待つ意識が、ドイツのそれよりも格段に高かった。歩行者に対しても、スウェーデン含め停止するのが早く、停止したクルマとの距離感覚がドイツのそれとは違った。遠いのだ。

駐輪編

・駐輪は日本と一緒?細いチェーンの出番を知る

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実は最も驚いたのは駐輪の仕方かもしれない。駅前や色んな駐輪スペースを実際に利用し辺りを見ると、大多数の自転車がその場所に"置かれている"だけで、駐輪ハンガーなどに太いチェーンで括り付けられていないのだ。深緑の自転車は、後輪にロックがない代わりに細いチェーンを後輪に通しているが、それだけである。ドイツでは出る幕すらない、簡単に切れそうな細いチェーンだけで"持ち去られない"なんて、「世界で最も安全な都市」の1位にコペンハーゲンが選ばれるのも合点が行く。前述のCopenHillのような環境施設があるなら尚更だ。黄色い自転車は自転車と柵を固定しているが、ヘルメットは自転車とセットでいいらしい。この手のまとめ方はちらほら見かけたが、ドイツでは(鍵付き駐輪ボックスでもない限り)ヘルメットは持ち歩き必須である。tex-lockのような、切れないチェーンはコペンハーゲンでは売れないだろう。彼らは鍵にお金を掛けなくて済む分、Hövdingに投資できるのかもしれない。あぁなんたる安全。カーゴバイクの駐輪に関しては着目し忘れた。ちなみに左奥の"PARKERING AF BILER OG CYKLER FORBUDT"とは、車や自転車のパーキング禁止の意らしいが、対象範囲は狭そうだ。

・キッズ自転車が並ぶ学校前

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小さい自転車から門の近くに駐輪していい、暗黙の序列がありそうだった。

アクセプタンス編

・自転車交通のための動線に寄り添うインフラ

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デザイン編としてもいいのかもしれないが、日々受ける否定感が強いので、アクセプタンス編としたい。自転車交通が道路交通にインクルージョンされているの意でもある。右には歩行者自転車専用橋Lille Langebroがある。左折時に「あぁこう通ればいいんだ」ということが明確で、尚且つ身体の動きに合う誘導がされているのを感じた。こういうインフラは気持ちがいいし、心理的・身体的に負担が軽い。ドイツでまだまだ希少価値の高い、単純明快な自転車道を通過中の私の頭の中には1x「なるほど〜」が鳴る。

・段差のなさから痛感。ドイツ仕様化した身体を嘆く

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コペンハーゲンの自転車道は車道より一段上がっている。これによって享受できる安全と"段差"を感じる機会は多い。自転車利用者の通行ニーズをよく汲み取った動線があれば、さらに"段差"の場所は増える。そしてどこにでも、まさにどこにでもスロープが付けられ「ガタン」と身体が受ける衝撃が打ち消されている。ドイツはあんな動線が用意されていないので、差し掛かった際、身体が咄嗟に「ガタン構え」をしてしまった。そんなドイツ仕様化してしまった身体の残念な条件反射が悲しい。裏切るように存在するスロープにさめざめする。こんなことだからいつまでも肩こりが治らない。カーゴバイクだと余計に縁石が下がっていることは重要である。

・自転車x○○禁止の少なさ

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オランダと異なり、デンマークは自転車の荷台に人が乗ること(普通車の二人乗り)が禁止されている。基本的には、自転車利用者の動き方をインフラがサポートしている(と感じる)ので、自転車交通を否定するような負のメッセージは受けなかった。あったとしても、駐輪編のような軽めの"適切な場所に移動を願う"程度に留まっていた。

・老若男女が自転車での併走を享受

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人は自転車で並走したい生き物である。そしてその生き物の動きを受け入れ、サポートしているのがコペンハーゲンの自転車インフラである。余談だが、ドイツの道で私が並走に適さないと判断して走っていても、後ろからパートナーが上がってきて並走しようとするので困っている。そんな道路上の緊張も肩こりにいいはずがない。ちなみにドイツで並走は、他者の邪魔にならない限り許可されているが、追いついていないインフラが多い。

・父x子供の組み合わせがより多い北欧

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これは金曜日の朝8時47分。車道から一段上がった、追い越し&並走可能な幅の自転車道をアジア系な親子が自転車で走っている。さらにもう一段上がった歩道には別の親子が。ドイツの自転車界隈が、もはや何度唱えたかカウント不可能な「構造的に分離された自転車道」である。Nihola前のラッシュ時には、子供の通園/通学後に空いたチャイルドシートにカバンを乗せ通勤する人も印象的だった。スウェーデンも含めて、父と子供だけで街で時を過ごしている光景はドイツより多い。

・誰も口出ししてこない。

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コペンハーゲンを自転車で走るのは実質3日目だったので、走り慣れているわけでも、地元の人の動きに慣れているわけでもない。だから地元の自転車利用者からすれば、変な動きやイライラさせるような動きがあったかもしれない。ただ、自分としては「やってしまった..」「そう走るのが正解か..」などと思うようなことはなく、また、誰かに何か小言を言われることも全くなかった。

ドイツの私の生活圏ではそうではない。川沿いの自転車歩行者道の標識がある道で、歩行者は「ここって歩行者専用じゃないの?」なんて口にするし、クルマのドライバーは自転車デモに「ヘルメットしろ!」なんて窓を開けて言ってくる。自転車利用者同士でも、道路はシェアするものと心得ていないスピードで走ってくる(大抵は男性の)サイクリストがドヤしてくる。そんな風に嫌な気持ちになることが少なくないので、放置されている感があった。誰も、私のことなんて気にせず、自分の移動に集中している。

8月下旬にドイツの中では自動車の交通分担率が低く、自転車のそれが高いフライブルクに行ったが、その時も同じようなことを思った。それぞれが利用する道上で感じる危険が少なく、自転車利用者が多くなると、人に口を出したくなる心境にはならないのかもしれない。

他にも色々あるが、とりあえずはこんなところで。


PS: コペンハーゲンの橋を見たい方は >> https://youtu.be/53DiVnWcFiE

PS1: デンマークとオランダの違い >> https://youtu.be/0Ggh1Jx7--o

PS2: コペンハーゲンはアムステルダムでない >> https://youtu.be/HjzzV2Akyds

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