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良質の「歴史改変SF」。ファーストコンタクト「異星人の郷」

<SF(65歩目)>
SF者を楽しませ、且つ歴史もの好きをも楽しませる名作です。

異星人の郷 上
マイクル・フリン (著), 嶋田 洋一 (翻訳)
東京創元社

異星人の郷 下
マイクル・フリン (著), 嶋田 洋一 (翻訳)
東京創元社

「65歩目」は、SF作品で中世ヨーロッパ社会、特にキリスト教社会が学べる作品です。

マイクル・フリンさんの作品は初めてでした。もっと作品を出してもらいたい作家の一人です。

この作品は、途中でSF作品ではなく歴史物語を読んでいる気分になれます。それくらい、歴史にかかわる描写が素晴らしい。

現代から考えると「科学」が無いと思われる。中世ヨーロッパ。多くの迷信がはびこり、疫病・戦争等で人間の人生はとても短い。そんなところに異星人が不慮の事故でやってきて、帰郷をのぞむ異星人(クレンク人)と人類がコミュニケーションをした結果、何が変わるのか。

読み進めると、特に下巻に色々と心に残る文章が多い。「宇宙を航行できる種族だからって、高い倫理観を持ってるとは限らない。海洋を航行できたヨーロッパ人が、インディアンより高い倫理観を持ってたわけじゃないのと同じこと」との言葉がこの作品に流れている考えだと思います。

科学は確かに、中世を持ち出すまでもなくどんどん進歩している。しかし「倫理観」はどうなのだろうか。これを新しい手法(過去の宗教社会と未来の科学社会の融合)で描いている。

とても長い作品ですが、色々と考えさせる投げかけが多く、最後まで一気読みでした。

久しぶりに、読みながら、作者の提示する様々な心を突く言葉に立ち止まって、思いを巡らしての読書になりました。傑作だと私は思います。

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