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自転車から紐解くアジアのファンタジー「自転車泥棒」

<文学(145歩目)>
呉明益さんの作品は、全てに手抜きが無い。濃い作品です。

自転車泥棒
呉明益 (著), 天野健太郎 (翻訳)
文藝春秋

「145歩目」は、呉明益さんで、台湾の小説に向き合えた。とてもいい時間が過ごせました。

20年前に失踪した父親が乗っていった自転車を見つけた「ぼく」の語り。
「眠りの航路 河出書房新社」で、主人公の父親が台北の中山堂の前に自転車を停めるところで終っている、けれど「そのあとは?」との問いかけでこの作品が出来たそうだ。

作家の脳裏に浮かぶ色々なことが読者に伝わるのは読書の醍醐味だが、読者の脳裏に浮かぶことから作家に新たな閃きを与える。

この物語が、読者との対話の中から生まれたこと。素晴らしいと思う。

スゴイな台湾、文学作品を楽しまれる層の厚みを感じました。10章がそれぞれ独立して読める濃度が高い作品でした。

父の失踪とともに消えた自転車の行方を追ううちに、人々と歴史がつながっていく。

台湾からマレー半島、北ビルマまで。マレー半島以降の章がとても濃い。

こんなに近いのに、知らないことがたくさんある国。アジアの本を読んでいきたい。もっと知っていきたいと思った。

呉さんが、「ぼくは小説を書く事で『運命が変わりゆくことを堂々と受け止める」ことができるかを試みている」と書かれているが、この連作により試みは成就されたのでしょうか。

成就されずに、更なる小説が、また試行のなかから生み出されることを待ちます。
台湾からの素晴らしい刺激が楽しみです。

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