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ハワイの植物⑦古代ポリネシア人がカヌーで持ち込んだ24種

ハワイ人は、どこから来たのか?
ひとつの手掛かりは言語。
ハワイ語は、オーストロネシア語に属し、この言語を話す人々は、台湾からフィリピン、インドネシア、マレー半島と南下し、西はインド洋を越えてマダガスカル島へ、東は太平洋の島々に拡散し、日本へ来た人々もいたとか。

オーストロネシア語を話す人々は、ニューギニアの北のビスマルク諸島から、ラビタ土器と黒曜石を交易品として持って、カヌーの横に張り出した浮きをつけたアウトリガー・カヌーで東へ移動し、フィジー、トンガ、サモアへ約3000年前に到着。

フィジー、トンガ、サモアへ約3千年前に到着した後、人々は千年間、ここに留まった。
タヒチの人々に、祖先はどこからきたのかと聞くと、ハワイキという。
サモアで聞くと、祖先はここで生まれたという。
千年の間に、以前の歴史は忘れられ、ポリネシアの文化が育まれていった。

映画『モアナと伝説の海』は、サモアに千年間、留まっていた人々が再び航海に出る物語。

フィジー、トンガ、サモアで約千年間、留まった後、
人々は再び東へ、未知の海へ出航する。
その先の島々は遠く離れていて、
より高度なカヌーと航海術が必要だったのだろう。
タヒチのフアヒネ島から出土した千年前の遠洋航海用カヌーは全長25m、幅1m、帆柱12m、櫂4m。

ポリネシアの海を航海するための双胴のカヌー

再び東へ出航した人々は、どこに着いたのか。
篠遠喜彦博士は各島の釣り針の形を発掘調査し
人々はマルケサス諸島に着き
そこからハワイ、イースター島、タヒチ、ニュージーランドへ。
ハワイへは、まずマルケサスから移住し
その後タヒチから移住し、大きな影響を与えたと考えた。

釣り針の形の変化からポリネシア人の移動の歴史を推測する。

マルケサスには10月頃、北から渡り鳥が飛んでくる。
それを見て、むこうに島があると信じて
犬、豚、鶏、食用植物を舟に乗せて行ってみると
ハワイは良いところ。
そこで家族や親戚や友達を何度も迎えに行った。
ラナイ島の横のケアライカヒキ海峡は「タヒチへの道」という意味。

犬、豚、鶏、食用植物を舟に乗せてハワイへ向かう。

1976年5月1日、
17名を乗せたダブルカヌー「ホクレア」は
4400km離れたタヒチにむけて
マウイ島を出航。
航海士はミクロネシアから招いたマウ・ピアイルグ。
6月4日、タヒチ島のパペエテ港に到着し、
ポリネシア人が伝統航海術で島々へ移住してきたことを証明した。

ダブルカヌー「ホクレア」は、ポリネシア人が伝統航海術で島々へ移住してきたことを証明。

ハワイ諸島に人々が集団で住みついたのは6世紀~12世紀と云われている。マルケサス諸島やソサエティ諸島から到来した人々は、未開の地で生き延びるのに欠かすことのできないものを持ち込んだ。薬、食料、燃料、建材、容器、楽器、敷物、衣服、染料など、暮らしに不可欠なものだ。それらにはすべて植物が用いられた。

ハワイ州では、これらの植物を、伝統植物あるいはカヌープランツと呼んで、他の外来植物と区別している。持ち込まれた植物の数は諸説あるが、次の24種説が主流とされる。

私がワイキキで出会った植物は、そのうちの13種だ。

「ハウ/オオハマボウ アオイ科」
南太平洋原産。
カヌープランツ?
花は1日で、黄色から赤色へ変わり、落花。
樹皮の繊維は、寄り合わせて紐や縄に、
軽い枝や幹は、漁網の浮き、カヌーとアウトリガーのつなぎ、槍や斧の柄、凧の骨組みに、
蕾、葉芽、樹液は、便秘、歯痛、喉や胸の痛みの緩和に用いた。

ハウの花

「ミロ/サキシマハマボウ アオイ科」
ミロは熱帯アジア原産。タヒチでは聖なる木として寺院の周りに植えられハワイにはカヌーで持ち込まれたとも。花はハウに似ており、1日で淡黄色から赤紫色へ。若い葉は食用に根は染料や薬に幹は家具や食器に加工。アラワイゴルフコースで撮影。

ミロの花

「ノニ/ヤエヤマアオキ アカネ科」
東南アジア~オーストラリア原産。カヌープランツ。樹皮と根は、黄色と赤色の顔料に。完熟果実のジュースは糖尿病、心臓病、高血圧に効果があり、果肉は頭痛の湿布薬、葉と樹皮は煎じて強壮剤、若い果実は塩と一緒にすり潰して、切り傷や骨折の治療に用いた。

ノニの花と果実

「オヘ/タケ イネ科」
インド~ジャワ原産のタケで、ハワイには古代ポリネシア人が持ち込んだが在来種の可能性も。火の燃焼を促す管、畑に水をひく管、釣竿、建材、梯子、帆柱、ソリ、水筒、ナイフ、針、カパ布の模様付け、マット、うちわ、籠、家具、農機具、鼻笛、打楽器を作った。

カフナ・ストーン横のオヘ

「コー/サトウキビ イネ科」
ニューギニア原産で、ハワイには古代ポリネシア人が持ち込んだ。茎には竹のような節があるが、内部は糖分を含んだ髄となっており、茎から甘い汁を抽出したり、茎を噛んだり。薬用にも用いられた。11~12月にススキのような花穂を出す。

コー/サトウキビ

「キー(ティ)/センネンボク クサスギカズラ科」
ロイヤルハワイアンのパウアヒ像の周りに植えられています。魔よけ効果があるとされ、家の周りに植えたり、水に浸けた葉を人や場所に振りかけて浄めの儀式を行う。葉は屋根、フラのスカート、雨具、履物、漁網、レイ、食物の包装、薬に、根は食用や酒造に。

パウアヒ像の周りに植えられたキー(ティ)

「ウル/パンノキ クワ科」
南太平洋原産。古代ポリネシア人がハワイへ持ち込み、果実1個は成人男性1日分の栄養を賄い、樹液はカヌーのコーキング剤や皮膚病の軟膏、樹皮はカパの素材、葉は楽器や食器の仕上げ研磨剤や褐色の染色剤、材はサーフボードや楽器に用いられた。

ウルの果実

「アペ/インドクワズイモ サトイモ科」
アペはインド~マレーシア原産で、
ハワイにはポリネシア人がカヌーで移入。
人の背丈を超えて大きくなる。
タロイモ同様、地下茎と球茎は食べられるが、
味が良くないので、
食糧不足の時にだけ食べられた。
ロイヤル・ハワイアンで撮影。

アペ/インドクワズイモ

「カロ/タロイモ サトイモ科」
インド~インドシナ原産。
ポリネシアから持ち込んだカヌープランツで、
ハワイ人の主食。
蒸し焼き後にペースト状の「ポイ」にし、
茹でた葉「ルアウ」も食べた。
ワイキキは「水が湧き出る」という意味で、
タロイモの水田、
養魚池、
ココヤシ林が広がる
湿地帯だった。

カロ(タロイモ)

「ククイ/ハワイアブラギリ トウダイグサ科」
マレー半島~太平洋諸島原産。古代ポリネシア人がハワイへ持ち込み、実は便秘薬、種子はレイや調味料、種子の油は灯りの燃料、茎は薬、樹皮は赤色の染色や薬、花は口内炎薬、葉はレイや薬などに利用。ハワイ州の木。リッツカールトン東側の公園で撮影。 

ククイの花
ククイの果実

「マイア/バナナ バショウ科」
マレー半島原産。ポリネシア人が持ち込んだカヌープランツ。果実はタロイモ不作の時の食用。イム(地下かまど)に焼け石を敷き、食物を置き、バナナの葉でおおい、土をかぶせて蒸し焼きにする。偽茎は染料、酒、薬、衣類、袋、網、飼料、傘、屋根材などに用いた。

マイアの果実

「カマニ/テルハボク フクギ科」
東アフリカ~南インド~東南アジア~オーストラリア~太平洋諸島の原産で、古代ポリネシア人がハワイへ持ち込んだ。硬く強い材でカヌーを造った。種子から採れるオイルは、香料、石鹸、灯火用、ロミロミマッサージに用いられる。

カマニの果実

「ニウ/ココヤシ ヤシ科」
メラネシア原産。
ハワイには6世紀頃から
ポリネシア人が持ち込み、
幹は建材、カヌー、楽器、食器に、
葉は屋根、籠、箒、灯火に、
果実は食用、食器、ロープに利用。
ロイヤル・ハワイアンが建つ場所は、
王族が邸宅や別荘を持ち、
1万本のヤシの木が
植えられていたとのこと。

ロイヤルハワイアンホテルのココナッツグローブのニウ

以上が、私がワイキキで出会ったカヌープランツ。
以下は、私がまだ出会っていないカヌープランツ。

「イプ/ヒョウタン ウリ科」
水を運ぶ容器、フラの儀式で用いる楽器となった。ハワイの神話では、天と星を作る役割を果たす。

イプで作られた楽器

「ワウケ/カジノキ クワ科」
カパ(不識布)の素材としてポリネシアで最良とされる。特にベッドの敷物として多用された。また、樹皮の繊維からロープが作られた。

カパと呼ばれるハワイの伝統工芸品

「アヴァ(カヴァ) コショウ科」
葉や茎には鎮静成分が含まれており、アルコールの代用品として飲まれた。また、睡眠導入や解熱、筋肉痛の緩和などに用いられた。アヴァの樹液は、島の外から賓客を迎える時の儀式に欠かせぬ飲み物となる。

アヴァは伝統的にヤシの実の器で供された

「アヴァプヒ・クアヒヴィ/ハナショウガ ショウガ科」
シャンプー・ジンジャーという英名が付けられているように、花穂に含まれている芳香のある水分は、髪やカパの香り付けに用いた。

「オーレナ/ウコン ショウガ科」
根の部分は、黄金色の染色剤としてカパに用いた。根茎は耳痛や結核の治療に、海水と混ぜたエキスは浄めの儀式に用いられた。

「ウアラ/サツマイモ ヒルガオ科」
カロに次いで重要な作物で、カロが不作のニイハウ島では主要作物だった。イモは飼料としてブタに与えたり、釣りの撒き餌に用いた。また異物や毒性のあるものを飲み込んだ時の吐瀉用や、喘息(ぜんそく)、不眠症の治療薬となった。

ルアウでのスイートポテト

「オーヒアアイ/マレーフトモモ フトモモ科」
よく熟した果実は生食された。材と根の部分の樹皮からは褐色の、果実からは赤色の、染色剤を作った。樹皮に含まれる樹液は、喉の痛みを和らげるために用いられた。

「アウフフ/ナンバンクサフジ マメ科」
テフロシンという有毒成分が含まれており、魚を一時的に麻痺されることができる。哺乳類には影響がないため、小川やフィッシュポンドの一部を囲い、そこに樹液を流して、小魚を浮かせ、手づかみで獲った。

「コウ/キバナイヌジシャ ムラサキ科」
芳香のあるオレンジ色の花は、レイの素材となった。樹皮からは、褐色の染色剤を作った。
コウは、カヌープランツとされていたが、近年の遺伝子調査の結果、ポリネシア人がやってくる前からハワイ諸島に分布していたことが判明した。

「ウヒ/ヤムイモ ヤマノイモ科」
カロ(タロイモ)の栽培に向かない乾燥した土地で栽培され、カロが凶作の時の非常食とした。

「ピア/タシロイモ ヤマノイモ科」
根茎のデンプンは、ココナッツと混ぜてハウピアと呼ばれる甘いデザートに用いた。また、腸炎の薬として用いられた。

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