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中国の庶民の心「千年の祈り」

<文学(89歩目)>
イーユン・リーさんの初期短篇集(デビュー作)から、中国の庶民の心を学ぶ。

千年の祈り
イーユン・リー (著), 篠森 ゆりこ (翻訳)
河出書房新社

「89歩目」はイーユン・リーさんのデビュー短篇集。

中国の市井の人々の息遣いが感じられる作品集です。
特に「あまりもの(Extra)」「黄昏(After a Life)」「不滅(Immortality)」「市場の約束(Love in the Marketplace)」「縁組(The Arrangement)」「千年の祈り(A Thousand Years of Good Prayers)」がたまたなくいいです!

「あまりもの(Extra)」
林ばあさん(51歳)の物語。お払い箱で「ばあさん」と言われてしまうのがつらい。
そして超格差社会で林ばあさんが得た幸せに、庶民の心が表現できている。

「黄昏(After a Life)」
蘇夫妻の物語。二人は障がいを持つ娘を育てている。
そして中国らしい「義」がちりばめられています。暗い表題ですが、とてもあたたかい余韻が残る作品です。

「不滅(Immortality)」
宦官という私たちには容易に想像できない方々を題材に、宦官を輩出する一族を主人公にした物語。
一族の掟に身を委ねて、粛々と個人の主体性を封印する。
これはなかなか中国以外では表現が難しいと感じた。とてもいい。

「市場の約束(Love in the Marketplace)」
三三(ミス・カサブランカ)と言う婚期を逃した女性教師の物語。
この作品集で、一番個性的なのは三三さんです。彼女の信念って?ここに中国的な素晴らしい人生を感じる。「いいね!」です。

「縁組(The Arrangement)」
炳おじさんと若蘭のお話し。登場人物の全てが一筋縄ではいかない「愛(love)」の塊のような方々。
若蘭の父母の「愛(love)」も含めて、こんな「愛(love)」って素晴らしいと感じた。
炳おじさん、素晴らしい!

「千年の祈り(A Thousand Years of Good Prayers)」
ロケット工学者の石さんの話。お互いにコミュニケーション取れない、中国人とイラン人の対話が軽快。
そして描かれている「愛(love)」がとても印象深い。

作者のイーユン・リーさんは、とても静かに心を突いてくる作品がとても多いと感じます。

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