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新たな価値観に触れて、自分の手で拠点を創り上げた話

話を聞いた拠点オーナー

農家民宿ゲストハウスINASHIKI NEST(茨城県稲敷市)

山本さん
東京都出身。化粧品会社等で海外営業を始めとした様々な職種を経験。海外一人旅愛好家。ドイツ、ニュージーランド、マレーシア、フィリピンなどに長期で滞在経験あり。
現在は畑をやりつつ、古民家をコツコツ改修した農家民宿ゲストハウスINASHIKI NESTをオープンし運営している。

INASHIKI NESTを立ち上げる以前は、どんなことをされていたんでしょうか。

一言で言い表せないくらい、色んな事をしていました。(笑)
10年前くらいにドイツに1人で行き、老朽化していた建物を現地のドイツのアーティストたちと協力してリノベーションし、カフェバー・アトリエ・旅行者用のホテル・難民の住まいも兼ねた複合施設をみんなと立ち上げるといったようなことをやったりとか。リサイクルだけではない、資源を活用してより良いものを作る『アップサイクル』の概念を、滞在中に知りました。

ドイツに行く前は会社員として化粧品会社に勤めていまして、英語を勉強しにいきたいと思い、ニュージーランドやフィリピンへ行ったりなどもしていました。その後また日本に戻ってきて海外営業の仕事をしたりなど、色々と取り組んでいました。行動力があると言われることもありますが、多分何も考えてないんだと思います(笑)

ー具体的に考えすぎると人って動けないものですよね。何かにトライしてみるときに、「こういう事を楽しむようにしている」「こういう直観を大切にしている」という部分はありますか。

もちろん『楽しそうか?』という自分の気持ちはシンプルに大切にしていますが、ドイツに行ったときの話で言うと、丁度年齢的にワーキングホリデーが出来るのが最後のタイミングだったので、「行っちゃえ!」という勢いで行きました(笑)
あとは・・・お金だけではない価値観、自分が全く知らない触れていない価値観に飛び込んでみたかったというのもあります。

会社員時代はずっとデスクワークで、業務としては営業や交渉をすることとか多かったんですが、今思うといざ何か自分の手でやろうと思った時の想像力が欠けていたな、と思います。頭でっかちだったと自分で思っていますね。実際に自分の手を動かして何かやっていく、という側面が欠けていたと思っています。そういう部分でも、海外で現地のアーティストたちや難民の方たちと一緒に活動したりすることで、「実際に自分で手を動かして、新しい価値観に触れていく」ということができたんじゃないかなと思っています。

昔は考えてばっかりだったと、自分で自分のことを思いますね。想像力の深さの欠如があったと思います。何かしようと思った時の、「実際に何かできるかできないかの差」と言えば良いんでしょうか。より具体的に考えられるかどうか。自分はそれができていなかったと思っています。
物事が成り立っている背景に、色んな人が色んな事をやってくれているということ。そういったことを、想像できていなかったなあと思います。東京生まれ・東京育ちだったから、周りの環境が便利過ぎてというのもあるのかもしれません。

海外に行くことだけが全てではないですが、昔から違う価値観、違うこと、新しいことに触れるのが好きだったんですよね。なので、色んな国や地域にサッと足を運びたくなるのかもしれないです。

ー山本さんのお話を聞いていると、そういう風に自分を駆り立てて実際に行動して色んな場所や価値観に触れていくには、好奇心が何より重要なのかなと思いました。一般的に、特に日本人だと「違う事を楽しむ」よりも、「同じところを見つけて安心する」方が傾向として強いのではないかと思っています。

好奇心は重要だと思います。あとは・・・海外に1人で行くときは、余白を大事にしていますね。予定を組み過ぎないようにしています。そして、大体他の旅人と偶然仲良くなることが多いです(笑)

以前ハワイに1人で行ったとき、カップルや家族連ればかりで若干がっかりしていた時に(笑)、ある1人のアメリカ人女性にカフェで話しかけられました。「ハワイでカナダ人の友人とこれから現地交流する予定なんだ」と。話をしてとても社交的で素敵な方だったので、もっと話したいと思い、私も一緒に行っていいか聞いたら、会う約束に私も混ぜてもらえました。結果的に、皆で車をレンタルしてハワイの奥の方にあるビーチに向かったりして楽しい旅となりました(笑)

そのような旅の経験で、いろんな国の色んな方のライフスタイルに自然と触れることができました。例えば、ハワイにアパートを普段の家を別途買って行き来している教員の方、半年働いて半年休むというワークスタイルを取っているお医者さんなど。普段日本で暮らしていると想像がつかないような、それぞれの新しいワークスタイル、ライフスタイルがあるなと気づきました。自然と、「ああ、こんな生き方があるんだな、あってもいいよな」という気持ちになれたんです。

旅に行くたびに面白い出会いがあります。勿論、綺麗な景色や美味しいご飯も大事なんですが、思い出を振り返った時、記憶に強く残っているのは”各地での偶然の出会い”なんですよね。その時そこに行かなければ出会うことのなかった人たちとの、一つ一つの出会いが印象に残っています。

INASHIKI NESTに滞在されたゲストの方々には、「ここに来ると、何かしなきゃと焦ることなく、自分のペースで時間が過ごせる、何もしないことを楽しめる」と言っていただけます。とても嬉しいです。例えば普段読めていなかった本が読めたとか、そういったきっかけの時間にもなるようです。ここは都内から車で1時間強ほどで来れる風光明媚な田舎にあるのですが、「何もしないことを楽しめる」というのは、より成熟した新しい旅のカタチだと感じました。

ー海外での滞在経験を経て、どういった経緯で茨城県稲敷市で宿泊施設を開業するに至ったのでしょうか。

ドイツからマレーシアに移って、働いていた時期もあり、その後はしばらく職を点々としていたのですが、「小さくてもいいので自分でビジネスをやってみたいなあ」思っていました。そんな時、色んな地方自治体が集まる地域おこし協力隊のブースイベントに参加してみたんです。その際に出店していた茨城県稲敷市の市役所の方に声をかけられました。

稲敷市のお話を聞いて、何か事業を興していきたいという時に「思った以上にやりたいようにやれそうだなあ、自由度が高いなあ」という印象を持ち、ここでやってみようかな、という気持ちになったんです。そこからは1年かけて滞在場所として使えそうな空き家を探して、そして開業に至ったという経緯ですね。

地方で生活や仕事をしていく上で必要な車の免許も持っていなかったので、免許合宿で何とかとりました。(笑)
活用する空き家が決まって、リノベーションなど開業に向けての準備をしている時が、丁度コロナが来た時期でした。

思い返してみると、会社員の時も自分で1から仕事を創るということはありました。いざ自分で海外の方や色んな人が滞在する場所をつくっていくとなると、空き家情報を集めたり、市役所の方と連携したり、地域の行事に参加して地域の理解を深めたりと、自分で動くことばかりでした。

田舎なので空き家は沢山あると聞いていましたが、活用する空き家を見つけて決めていくのは思った以上に難航しました。空き家の持ち主から探していく、登記簿上の所有者が複雑、ボロボロすぎてそもそもリノベーションでの再活用が困難など・・・。色々な課題に直面しました。宿泊施設の運営だけではなく、私は畑もやってみたかったので畑付きの古民家を探していました。空き家は沢山あるのですが、活用できる空き家を探して決めるまで約1年かかりました。

INASHIKI NESTとして運営しているこの家は、最初は持ち主さんからの提示金額が高いと感じており、購入は断念していたんです。また、他の空き家を検討していて、確定する手前まで話が進んでいたんですが、登記簿上の所有者が複数いて、宿泊施設の運営に使えない可能性が後から出てきてしまったんです。

その時に今の家の持ち主さんから値段を下げてもいいよとの連絡があり・・・。ここにしようと決めました。活用できる空き家を探し始めてようやく、1年かかりました。

空き家を決められていない間は、自分にとって本当の活動が開始できていないという焦りがありました。場所を決められたときは、やっと開業の準備に着手できる!という気持ちで嬉しかったですね。
空き家をリノベーションしている時にコロナが広がり、こんなにも日本が鎖国のような状態になるとは思いもしませんでしたが・・・。外から人を地域に呼んでくることがそもそもダメ、みたいな雰囲気が日本全体に漂っていましたよね。宿泊施設が果たして地域に受け入れられるかな、という怖さはあったんですが、このコロナでの状況が永遠に続くとは思いませんでしたし、何もない田舎でこうやって海外から人を呼ぼうとしている人はほぼいなかったので、凄く地域の方々にも協力していただけたんです。
草や大木を切ってくれたり、片づけを手伝ってくれたりと、とても応援していただきました。

ー空き家を何とか見つけて開業に至るまでのご苦労をお聞きし、より一層INASHIKI NESTを大切に育てていきたいという山本さんの想いを感じることができました・・・!
今後滞在しにやってくるユーザーの皆さんに、メッセージをお願いします。

茨城県稲敷市は、そもそも観光地ではない場所ですが、INASHIKI NESTに来て下さる皆様がお互いに心地よい時間を過ごし、地域の方々含め関わってくださる方々がハッピーになれるように、今後も運営していきたいと思います。
どうぞご自身にとって心地よいひとときをお過ごしください。


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