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がんを強力に抑制する微生物を発見 新しいがんの診断・治療法につながる可能性 北陸先端科学技術大学院大学

北陸先端科学技術大学院大学は5月8日、マウスの大腸がん由来組織から高い抗腫瘍効果のある複数の微生物を発見したと発表しました。発見された微生物は、A-gyo、UN-gyo、AUNと名付けられ、特にAUNについては、マウスを使った動物実験において、1回の投与で、大腸がん、肉腫(サルコーマ)などのさまざまながんに対して、強力な抗腫瘍効果があることが確認されました。


(上)AUNの1回の投与でがんが消えていく様子。(下)AUNはがん組織に集まる性質があるが、近赤外線を当てると蛍光します。そのためがんの診断に使える可能性があるそうです。北陸先端科学技術大学院大学のプレスリリースより引用

これまでも、がん組織に微生物が生息し、がんの種類によってその種類、数などの構成が異なることは知られていました。しかし、このような微生物をがんの治療薬にしようとする試みは皆無でした。いゃ~研究チームの発想力には本当に驚かされます!

で、今回、研究チームが発見した微生物は、A-gyo、UN-gyo、AUNの3種類です。マウスの大腸がん由来組織から発見されました。なお、これらのうちAUNはA-gyoとUN-gyoからなる複合細菌と呼ばれるものになります。複合細菌について詳しく知りたい方は文末に参考URLが記載してあります。

研究チームはこれらの微生物を大腸がんを皮下移植したマウスに尾の静脈から注入しました。すると、微生物はがん組織に集まり、成長し、増殖。免疫を活性化することで、高い抗腫瘍効果を発揮することが確認されました。

特にAUNについては、A-gyoとUN-gyoの相乗効果によって、免疫がより効果的に活性化。1回の投与で、大腸がん、肉腫(サルコーマ)、転移性肺がん、薬物耐性乳腺がんなどのさまざまながんに対して、強力な抗腫瘍効果を発揮することが確認されました。

なお、研究チームが、マウスを使って、生体適合性試験をおこなったところ、これらの微生物はがん組織以外に対してはほとんど影響を与えないことが確認されました。

さらに、AUNは、近赤外線を当てると、強く蛍光するため、がんの診断にも利用できる可能性があるそうです。まさに一石二鳥ですね。

今回の研究成果は全く新しいアプローチの抗がん剤の開発につながる可能性があり、これからの研究の進展が本当に楽しみです。

最新テクノロジーレビューでは、これからも、医療、環境、宇宙開発などに関する最新の研究成果をどんどん紹介していきます!乞うご期待!!

【参考URL】

北陸先端科学技術大学院大学のプレスリリース 阿吽の呼吸で癌を倒す! -灯台下暗し:最強の薬は腫瘍の中に隠されていた- | JAIST 北陸先端科学技術大学院大学

論文 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202301679

複合微生物とは https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/8906/8906_biomedia_2.pdf









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