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おりたらあかんの読書ログ

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年間100冊を15年間続けてきました。でも、本当に知らないことばかり!というかアウトプットがまだ少ないなあと感じています。過去に読んだ本は「読書ログ」としてまとめてきたので、それ…
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#鈴木大拙

中尾良信「日本禅宗の伝説と歴史」吉川弘文館

中尾良信「日本禅宗の伝説と歴史」吉川弘文館


禅宗の開祖達磨について恥ずかしながら初めてわかったことがいくつかあった。「洛陽伽藍記」という信頼性の高い記述に「波斯国(ペルシャ)からきた達磨が洛陽の永寧寺の美しさに感嘆し、連日「南無」と唱えて立ち尽くしていた」とあるらしい。そう、中国禅宗の開祖である達磨はインド人あるいはペルシャ人だということだ。確かに達磨図をみると胸毛も濃いし?風貌も中東系だ。今の禅宗は六祖と呼ばれる慧能が祖と仰がれている。

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鈴木大拙「大拙つれづれ草」読売新聞社

鈴木大拙「大拙つれづれ草」読売新聞社

鈴木大拙は金沢が生んだ世界的な仏教哲学者。単なる国内研究者ではなく、英語で日本の仏教思想を広く翻訳し、広めたという点で他を圧倒している。キリスト教の素養もあり、仏教を客観的な視点から実に深く観察している。俺が一番面白かったのは「エデンの園」と「自由」に関する考察だった。キリスト教的な思想では必ず一神教の神が存在し、その対象あっての自由であり、幸福ということになるが、そうすると自然と人間の位置は確定

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松井健「柳宗悦と民藝の現在」吉川弘文館

松井健「柳宗悦と民藝の現在」吉川弘文館

学習院大学時代に白樺派の気鋭の美術評論家としてゴッホ、セザンヌ、ゴーギャンを初めて的確に紹介した柳宗悦。特に有名なのはウィリアム・ブレイクの神秘主義の研究である。彼はブレイクの中に大乗仏教の菩薩道と通底する普遍性を感じていた。こういう素地の上に「民藝という言葉の創造と発見」が展開される。李朝の白磁壺によって開眼された柳の「民藝の美」に対する感覚は実に直観的なものであったという。柳は学習院時代、師で

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