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「ソーシャルディスタンス」真の未来

この記事での問い

「ソーシャルディスタンス」は、ポスト・コロナの世界に
どんな影響を与えると思いますか?


こんにちは。新卒2年目カスタマーセンターの子です。

コロナ渦の中、最近聞かない日は無い「ソーシャルディスタンス」。
今回はこれをテーマにしてみようと思います。

TVのニュース番組等でも毎日のように耳にするこの「ソーシャルディスタンス」。皆さんも特に最近は意識的に行動の中に取り入れているのではないでしょうか?
この記事では、この「ソーシャルディスタンス」が、ポスト・コロナの世界、すなわちコロナ渦収束後の日本社会においてどんな影響をもたらすのかについて考えてみたいと思います。

ポスト・コロナでの影響を考えるにあたって、論点は大きく3つ。

①そもそも「ソーシャルディスタンス」とは
②現在(コロナ渦真っ只中)の日本社会に、「ソーシャルディスタンス」が
 どんな影響/変化をもたらしているか
③その影響/変化はコロナ渦収束後も続くのか/傾向を変えるのか

今回は上記の流れで、思考を進めてみたいと思います。

①そもそも「ソーシャルディスタンス」とは

コロナ渦の中では「感染防止のために、他者との間に一定の距離を保つ事」としてこの言葉を使う事が多いと思います。ですが直訳すると「社会的な距離」。少しニュアンスが誤解されやすい事もあり、安倍首相は記者会見の中でわざわざ言及し「フィジカルディスタンス」と言い換えさせています。

一方、「ソーシャルディスタンス」と似た言葉で「ソーシャルディスタンシング」という表現もあるようで、聖路加国際大公衆衛生大学院の大西一成准教授は朝日新聞の記事の中でコロナ渦関連の表現として「ソーシャルディスタンシング」が正しいと指摘しています。

確かに、社会学系の学術論文を見てみると、「心理的距離」(物理的な距離ではなく、人間が心の中で感じている距離)という概念の中に

①時間的距離(例:「明日」より「1か月後」の方が遠い)
②空間的距離(例:「国内」より「海外」の方が遠い)
③社会的距離(例:「同期」より「上司・社長・取引先など」の方が遠い)
④仮想的距離(例:「現実」より「仮想空間・妄想など」の方が遠い)

の4種類があるとされていて、「社会的距離(ソーシャルディスタンス)」はそのうちの1つだとされています(Trope and Liberman 2003; Trope, Liberman, and Wakslak 2007)。

少し複雑なので、ざっと整理するとこんな感じです。

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そして、繰り返しではありますが今回は「ソーシャルディスタンス」がテーマですので、人々が感じている「親しさ」「帰属意識」などは、ポスト・コロナの世界でどんな影響をもたらすのだろうか?
という問いが論点になります。

②現在(コロナ渦真っ只中)の日本社会に、「ソーシャルディスタンス」がどんな影響/変化をもたらしているか

上記の表にまとめた4種類の「距離」ですが、コロナ渦の影響を受けて人々に変化をもたらしている事がすぐに想像できるのは、恐らくこの3つでしょう。

①フィジカルディスタンス:3密を避けるようになった
②ソーシャルディスタンシング:3密を避けるようになった
③仮想的距離:オンライン飲み会など、リアルで会わない「場」が増えた

では、今回のテーマである「ソーシャルディスタンス」はどうでしょうか?
そのヒントになりそうな意見が出てきたのは、友人とのオンライン飲み会で「在宅ワーク」について話していた時でした。

僕:在宅ワーク、してる?
Y君:うん!まぁ元々就職先ベンチャーだし、全然家で仕事とかもする事あったからそんなに大きく変わったってわけじゃないけど、今は毎日在宅よ!
M君:俺も在宅やな~
僕:そっかそうよね!俺はそもそも2月末まで店舗勤務だったから、在宅とか考えられなかったな~、でも同じく今は完全在宅!
M君:どうなんだろうね、コロナ落ち着いた後も続くんかな?この感じ。
Y君:特に俺は元々家でも仕事できた人ってのもあるけど、別にコロナ収まった後在宅しない方が良い理由って、そんなに無いと思うのよね。
僕:確かに。
M君:コミュニケーションが取りづらくなる…とかあるんかね?
僕:そういえば、ちょうど昨日会社の同じチームの先輩方とオンライン飲み会した時に、「在宅だからこそ個人チャットで雑談吹っ掛けたりする」って言ってた人いたわ!
Y君:でも逆にさ、在宅になると一切コミュニケーション取る必要なくなる相手とかもいるよね。
僕:いや~それ間違いないよね。昨日のオンライン飲み会で1カ月ぶりに話した先輩とかいたもん普通に。
M君:そういう意味ではさ、(コロナ渦の影響で)わざわざリアルな場で人に会わなくてもオンラインで済むようになったからこそ、自分がコミュニケーション取りたい人とだけコミュニケーション取るようになっていくのかも。
Y君:確かに!しかもさ、そういう(親しい)相手とはリアルな場でも会いたいよね。これだけオンライン化が進んでも、そこは変わらないなって思ったよ。だって今もオンライン飲み会じゃなく3人で会って語り合いたいって思ったもん。

自分が普段からコミュニケーションを取るような「親しい人」とのコミュニケーションは、より加速していく一方、
コミュニケーションを取りたくない相手とは、同じ空間にいないといけないとかでもないので、コミュニケーションを取る必要が無いし、やむを得ず必要になるコミュニケーションはオンラインで済ませればよい。
言い換えると、社会的距離に応じて仮想的距離を都合よく使い分けるようになるので、「社会的距離格差」がより大きくなっていっているのではないでしょうか?
つまり、

社会的距離が近い相手:仮想的距離が近い方法を使う→より「近い」関係に
社会的距離が遠い相手:仮想的距離が遠い方法を使う→より「遠い」関係に

なっているのでは?という事なのです。

この話は、別の友人と話していた時にも。

僕:在宅ワーク増えた事によるメリットって、なんかあるんかなぁ?
S君:そうね、何だろう…。思ったのは、上司とか取引先とかと会うことがストレスだった人にとっては、精神的苦痛から開放されるよね。
僕:確かに。
S君:そういう意味ではさ、アフターコロナの世界では、より「会いたい人にだけ会える」世の中になっていく説もあるのかもなあ。
僕:そう、そこなんよ!コロナ終わった後もそうなるのかどうか。なんだかんだ続いてく気がするんだよなぁ~。
S君:でもなんかさ、会いたい人にだけ会える(会いたくない人には会わなくても済む)世の中って、ちょっと危険だなとも思うのよね。SNSのタイムラインって、自分の好みのものだけが並んでると思うんだけど、それに近い状態が人間関係にも生じるのかなって。

もし、彼らの言う通り、人間関係の選りすぐりの加速化によって起こる「社会的距離格差」が、「SNSのタイムラインのようなもの」なんだとしたら、
よりSNS慣れしている若者にこそ、今まさに起きている事なのかもしれません。

そして、まさにこうした「話したい人とだけ話すようになる」世相を反映したかのようなオンラインテレビ電話ツールが登場したのです。

このSpatialChatは、いわば飲み会での「席移動」をオンライン上でも可能にしたもので、
大人数での飲み会で発生する「あ~あっちの席の方が面白そうじゃん、席移動しよっ」をオンラインでも可能にしています。
「話したい人とだけ、話したい」社会的距離格差がより色濃くなってきたからこそ、必要とされた概念だと捉える事ができます。

③その影響/変化はコロナ渦収束後も続くのか/傾向を変えるのか

ここまで、コロナ渦による影響を「ソーシャルディスタンス」という側面から深掘りし、「近い人とはより近く、遠い人とはより遠い関係に」なっているとして思考を進めてみました。
こういった価値観の変化は、もちろん前述の通り「コロナ渦の影響で」起きた/加速した事な訳ですが、コロナが「良い方向に」作用した面と「悪い方向に」作用した面、両方があると思うのです。

良い面への作用:「遠い関係」の相手とのやり取りを遮断した
悪い面への作用:「近い関係」の相手とリアルで会えなくなった

皆さんも感じているであろう「会いたい人と(リアルで)会えない」ストレスは、コロナ渦が収まっていくと同時に自然と回復していくでしょう。オンライン化により「相手にコンタクト・アポイントを取る事自体は容易化している」事を考えると、その選択肢にリアルが加わるわけですから「近い関係」はより加速度的に強固になっていく事が予想されます。
一方、問題は「コミュニケーションを取りたくない相手」との間に作用したコロナ渦の「良い面への作用」が、コロナ渦終焉後も持続するのかどうかです。

結論、僕は「学生は持続するが、社会人には持続しない」と思っています。
まず前提として、前述の通り「社会的距離格差」が「SNSのタイムラインのようなもの」と仮定すると、よりSNS慣れしている若者にこそ「遠い相手」とのコミュニケーション遮断機能が働きやすいと考えられます。
そうなると「ポスト・コロナでも持続するか否かの境界線」がどこなのかが論点となりますが、それを社会人に置いたのは、社会人が「嫌いな人」(=関係性に壁を作っている、非常に社会的距離の遠い相手)はダントツで「上司」だからです。

マネジメントレイヤーの役職の人となる「上司」は、その名の通り「管理」が仕事ですから、相手が何をしているかを常に握っている必要が出てきます。
つまり、部下に当たる「上司の事が嫌いな、社会人大多数」が上司に対してコミュニケーションを遮断しようとすればするほど、それは逆効果となっていってしまうのです。
これを回避するためには、「上司がコミュニケーションを取りに来る必要がなくなる必要最小限のコミュニケーションを、上司からアクションをされる前にこちらから差し出す」しかありません。でもそれができないからこそ「嫌いな相手」なわけですので、社会人においてはコロナ渦の「良い面への作用」は持続しなくなります。

よって、

良い面への作用:社会人に関しては今ほどのメリットは持続しない
悪い面への作用:「リアルな場」でも会えるようになり良い意味で変化する

となるのではないかと思っています。

まとめ

・「ソーシャルディスタンス」は人が心理的に感じる「親しさ」等の事
・コロナ渦の影響で人間関係がSNSのタイムライン化している
・コロナ後も若者の「話したい人とだけ話す」人間関係には拍車がかかる


参考文献
・Trope, Yaacov and Nira Liberman (2003), “Temporal Construal,” Psychological Review, 110 (3), 403-421.
・Trope, Yaacov, Nira Liberman, and Cheryl Wakslak (2007), “Construal Levels and Psychological Distance: Effects on Representation, Prediction, Evaluation, and Behavior,” Journal of Consumer Psychology, 17 (2), 83-95.
・井上裕珠・阿久津聡(2015)「「特性」としての解釈レベルを考える─ BIF尺度に注目して ─」『マーケティング・ジャーナル』Vol.34 No.3、83-98.
・外川拓・石井裕明・恩蔵直人(2016)「パッケージへの画像掲載が製品評価に及ぼす効果─解釈レベル理論にもとづく検討─」『流通研究』第18巻 第1号、7-27.


最後まで読んでくださりありがとうございました! 社会人経験たった2年の拙い思考によるものですので、至らぬ点はご容赦ください。 あくまで個人的発信ですので、サポートは不要です。 代わりに、多様な視点からのインプットのためにも、是非他のご意見等お持ちの方はコメントの程お願い致します!