筍と木の芽の塩釜焼き
今年の桜の饗宴も、春の雨とともに締めくくりを迎え、
すこし寂しくなりました。
けれど、気づけばずいぶんと日も長くなり、
ひと雨ごとにあたりは暖かくなって、
散歩にはうってつけの心地の良さ。
なかなかゆっくり歩く余裕がないけれど
このやわらかな季節、
大きく手を振ってからだごと楽しみたくなってきました。
4月に入ってからずっと
上ばかりを向いて春を探していた気がしますが、
見れば足元にも。
桜のあとを継ぐように、黄色に紫、オレンジに白、さまざまな春の花が道の端を飾っていたり。
小さな庭のあちこちで出ていた新しい芽はあっという間に頼もしい枝に育ち、ハーブも伸びざかり。
檸檬の木にも、もう蕾が膨らんでいます。
この山椒の葉の繁茂を見て、さあ筍だぁ~!と、嬉しくなりました。
竹かんむりに旬。やっぱり旬のものは良いです。
「初物七十五日」と言う言葉があります。
勢いに満ちた生気が溢れる旬のものを頂くことで
新たな活力を得て長生きができる、と言う意味だと思っていましたが、
昔の罪人が死刑を前に食べたいものを食べて良いと言われて、なるべく先の旬物を頼み、その分生き延びたと言う説まであるそうです。
殊に日本人の心には
何代も前の昔から、旬を味わう悦びが根強く備わっているというのが伝わってきます。
季節がめぐる喜びや、四季それぞれの思い出、次の季節を待ちわびる愉しみというものは、
日々の暮らしに追われて見逃すのは勿体ない幸福と思えてなりません。
ちょうど地元野菜の直売所で、飛び切り新しい筍を見つけたところ。
筍はたっぷりの米ぬかと1〜2本の鷹の爪を入れた水からゆっくりと茹でて、
やわらかくなったら火からおろして茹で汁ごと一日置くと、えぐみが取れると言われますが
そうそう筍にぬかをたくさんおまけでつけてくれる親切なお店ばかりではないし、
時間のないときに、一晩待たずに新筍を食べたい!なんて思うこともありますよね。
そんな時には、全ての皮を剥いて食べやすく切り分け、大根おろしと、同量の水、その1%の塩を合わせたものに1〜2時間つける方法もあります。
もし新しい筍が手に入ったら、
竹山で頂くときのようにダイナミックに炭で丸焼きも良いですが、
塩で包み、オーブンで火を通すことで
野趣溢れる味わいをインドアで楽しめる方法も。
あまり特大の筍では難しいけれど、
小さめのが手に入ったときに
そして、もし庭先などに山椒の木があったら
木の芽が元気にたくさん伸びているか確かめ、
あれば何枚かとって叩き、塩にふんわり混ぜて。
木箱にきれいに並べられた高価な物や、1パック3枚位の貴重な木の芽ではもったいないです。
なければ塩だけでも充分。
シリコン製のスチームロースターは、意外にも塩釜焼きに便利と気付きました。
うまく立ち上がってくれるので、塩を無駄に使わずにすみます。
300gの塩に卵白を1個分混ぜると、
素材になじませやすく、焼き上がったときにぱりんと見栄えが良いですが、もったいないと思ったら塩だけでも大丈夫。
皮が厚いので、優しく塩が入ります。
250度のオーブンで30分ほど焼いて、串を挿してすっと通ったら、
皮をむき、根元のぼつぼつをこそげ取って、
あとはいろいろに使えます。
若竹煮にもタイカレーにも、天ぷらや野菜の餃子にも。
今夜はこの筍と穴子のお寿司にしました。
塩釜の筍をスライスしたら、
お吸い物くらいの味をつけた出汁に入れてさっと煮ます。
穴子はしょうが風味の甘辛味に煮付け
アスパラを刻み炊き込んだごはんに寿司酢をなじませます。
酒の肴にもなるように
今夜は小さめのひさご形に。
こうしたご飯を抜く物相型(もっそうがた)があると簡単におもてなしご飯が出来上がりますが、なくても、ラップや器で成形することであれこれ楽しめます。
上に汁気を切った筍と穴子をのせ、木の芽をあしらいました。
大皿にたくさん作っても、こんなふうに一人分でも。
せいろに入れて蒸したてあつあつの蒸し寿司に仕立てるのも、具が筍と穴子だから美味しくなります。
連休あたりに
こんな好きな具のお寿司を持って、
外でのんびり味わう楽しみもありそう。
桜を過ぎて、新緑真っ盛りの季節。
その勢いを追い風に、
さあ、今年も(なるべく)前だけを向いて、歩いていきたいな。
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