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【初バイト奮闘記①】 始まる以前の始まり

人生初のバイトは唐突に。

10月12日火曜日、私は家出をした。家にいることが苦痛だったから、友達の家に泊まりに行った。きっと、多くの人にとってはただのお泊まり。だけど、私にとっては大きな変化だったんだ。

大学に入学したのは、コロナが始まった年だった。

そもそも高校の卒業式もコロナにより規模を縮小して行われたし、大学は入学式も行われなかった。
だから、入学してない可能性もある。

だけど、やっぱり学費を支払っているので大学生のはずなのだ。けれど、夢に描いていたようなキャンパスライフは訪れなかった。

オンライン授業ばかりでほぼ24時間365日家にいるような日々が続いていた。
コロナだから遊びに行くこともままならない。
感染を拡大させるのは世界に申し訳ないから、出来るだけ家にいるようにした。
バイトもこの中では怖いだろう。
そもそも、アルバイトを募集しているところが少なかった。
同期に聞いても何個も落とされたと言っていた。
そんな中で働かないと行けないほど、趣味にお金をかけることも生活が圧迫されていることもなかった。それは、実家暮らしであり父親がきちんと働いてくれていたからだ。本当にありがたい話だ。

だから、バイトをしたことがなかった。

有難いことに今年は優秀成績者として、50万の奨学金を受け取ることが出来た。
バイトをせず、ただただ勉学に励んだからだろう。そこでしか自分の存在価値を作れなかったから。バイトをして稼いだ、と同じぐらいのお金を手に入れれたのだから、無理にまだバイトをしなくてもいいか、そう思っていた。

だけど、家にいる苦痛を感じると、
バイトという口実で家を出たくなった。
いなくていい時間を作りたかった。
そして、稼いではいるという言い訳が欲しかった。

家出をした日、その足でバイトのアポを取りに行った。

地元の個人店の居酒屋さん。
その付近とは交友があったため、よく知っていた。
そして、2年前ほどからバイトを募集しているのを知っていた。ただ、『美味しいまかない付き』ということ以外の情報がなかった。
だから、バイトしたいと思いつつ出来なかった。
だが、もういい。勢いだ。
そのお店とも仲のいい方が私ならすぐ好かれそう、とオススメもしてくれていた。

いってやれ!

乗り込んで、バイトの面接のお願いをした。
週末の土曜日に面接。
ドキドキしたせいでわなわなと揺れる体、人生で初めてのバイトのための行為。
そのまま、家を出て夜の街を友達の家に歩いていくのはまた別の話。

そして、面接の日。

面接に行く適切な服というものすら分からない。
履歴書の正しい書き方というものも分からない。
私は何も知らないんだ。

それが少しだけ気持ちよかった。
知らない世界を知ることが出来る。
自分ってダメだなぁって思うと同時に、緊張とともになにかの興奮のようなものが現れる。

自転車に乗り、坂を下ると風が少し冷たくて心地よかった。もう1枚羽織るべきだったか、なんて後悔を毎日している。

面接は簡単であった。
個人店であるから、店長が1人、バイトが1人で回している。アルバイトの人は何人かいるようだ。みんな東京の大学生でオンライン授業だから地元であるこっちに帰ってきているそうだ。だから、学校が始まったらバイトがいなくなってしまう。故に、アルバイト自体はいるけど、募集をしていたのだろう。

その点、私は既に大学も始まっているし、実家暮らし。変化はこれ以上起こらない。今年はオンデマンドと決め込んでいる授業以外は、ほとんど対面授業になっている。大学卒業まで家を出ることもないだろう。ある意味、安定している。

そういえば、以前に一度、お店の近くにあるケーキ屋さんの主人にこの店に連れてきてもらったことを覚えていてくれた。たった1回なのに。

つつがなく終わり、検討すると言われた。
1週間以内に電話をかけると。

だが、しかし、1週間待てど暮らせど、電話が来ない。
私が間違って電話番号を書いてしまったか?
不採用の場合は電話しないか聞かなかった……。
色々とした思いが渦巻く。
これ受からなかったら、今後お店行きづらいな……。
それだけでなく、ほかの活動もやりにくくなるかも……。

なんて考えていたまる1週間後の土曜日(23日)の昼。
知らない番号から電話。
携帯電話に電話がかかってくることなど、滅多にないから心臓が止まるぐらい驚いてしまう。

「採用です」

「でも、まだ東京の学生スタッフがいるから、もうひとつの店舗でもバイトできるけど……」

「とりあえず、26日の17時半に来てください」

……安堵により、力が抜ける。
それにしても、3日後とは早い。11月からだと思っていたのに。あれか、契約とかだけするんか?

ひとまず、受かったー!!わーい!!

ところで、このお店がある土地の中には、3つぐらいの店舗があり、たぶん、母体会社?は一緒なのだろう?全然違うお店なのだが、ひとまず何らかの繋がりがある。
故に、その別のお店もバイトを募集しているからそっちにも行ってもらえないかな?みたいなことを言われたのが採用の次の言葉だ。

よくわからんが、どっちにしようか迷ってこちらにしただけなので、問題はない。

そして、26日。
火曜日、全休にしている日。12時頃。
……おや、なにか大学掲示板に連絡が。
『今日の授業はzoomでやります』
土曜日の授業がそう言ってくる。
……え、今日土曜日授業の日なん?!
幸い授業は一つだけ。しかも四限。16時30分には終わる。
危ねぇ!もう少し連絡して欲しいところですよ?!

私の確認ミスでしかないのだけど、少しだけ命が擦り切れた。

授業終わり、課題をやる。
17時。お腹がすいた。このままでは、ぶっ倒れる。
少しだけご飯をよそい、大バカ野郎はちょっとだけ胃を満たす。しかし、もうすでに10分になっている。20分にはつきたいところだ、というか着いておくといいと言われていた。
水筒に水を入れ、た、のに、その蓋を閉めていなかったせいで、落とし椅子にぶちまけた。
濡れた椅子とケージに入れられた猫。

もういいや、と少しだけ拭いて逃げるように家を出る。自転車に乗り、風を切る。大して寒くはなかった。

踏切に阻まれる。
1台通る。
もう1台。さあ開くか、と思えば残念でしたと嘲笑うようなカンカンとなる音。
5台目?
まだ開かないの?
え??開かずの踏切?
時間はギリギリだ、よし、別の道を通ろう。走り出してもなおカンカンと警戒音がなっている。
細い道を通る。薄暗くなってきただけでなく、その道は細すぎていつも暗い。

パッと通る、何か。
危うく轢くところだった。

それは、茶トラのハチワレ子猫だった。我が愛猫ナギよりも小さいように感じられる。かわいい、美にゃんこ……。

うちの子にしたい!!

そう思うけれど、私は時間に遅れている。一刻も早く行かなければ。止まることすら許されない。

今これを書いている今日の私は、その猫を探して寄り道までする。

もしや、お主が昨日の子の親か?

果たして、小柳とかげは初バイトに間に合うのか!そして、そこで上手く馴染めるのか?!覚えることが出来るのだろうか?!

果たして、小柳とかげは子猫を保護することが出来るのか!

次回!酒の種類多すぎて訳分からんわっ!

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