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1億円もらうより息子と映画の話がしたい。                #映画にまつわる思い出 

小さい頃から息子たちの映画を観たい。という、希望には全て応えてきた。
ジジババも私も主人も映画は映画館でみるものと思っていた。

ウルトラマン、仮面ライダー、コナン、ドラえもん、ポケモン、
アンパンマン。ディズニー、ジブリ。
スターウォーズ、ハリーポッター。
春休み。夏休み。冬休み。
あれをみよう、これをみよう。
平日昼間に行くときはバーバが勇んで連れて行ってくれた。

そのうち、無理やり不朽の名作に付き合ってもらった。
「アラビアのロレンス」、「明日に向かって撃て」から始まった。 
10代にして朝10時の映画祭で名作を観るようになり、
気が付くと長男はフランス映画祭にも行くようになっていた。
砂の器で号泣した話、スティングが本当に面白かった話。
細田監督の時をかける少女とサマーウォーズがお気に入りだった。
「ET」をみたのは新宿ミラノ座の閉館プログラム。
息子たちと一緒に並び、スクリーン前で同じ感動を味わいたかったから。
あの自転車が浮かび上がる浮遊感は映画館でしか味わえないと思っていたから。

成長とともに、あれこれと映画の感想を簡単に口に出し合えなくなってきた。
つい、反対意見が口からでてしまったからだろう。
今なら、どうやって話を聞いたらいいかわかるけれど、
あの頃は、ただの映画好きの言い合いになっていた。

最後に長男と話したのは「この世界の片隅に」だった。
素晴らしい映画だった。でも、哀しい話だった。と、長男。
私は、すずは強いと思った。力強い映画だと思った。と。
長男は、がっかりしたように、不満気で話は終わってしまった。
もっと伝える言葉があったんじゃないか。今も思っている。
これが、長男と最後の映画の話となってしまった。

話をしていない5年間にどれだけの映画を彼はみたのだろう。
どれだけ、心に響く映画と出会い、人生に伴走してもらったのだろう。
会ってもらえない。という哀しみをひしひしと感じるのはこんな時だ。

息子と話したくて、寂しくて、悲しくて、泣いてばかりいた時は乗り越えた。
今は、彼は彼なりに熟成期間を過ごしていると思えるようになった。

それでも、映画の話をするたびに、心がざわつく。
映画館のひとつのスクリーンの前にみんなで座り
同じ時間を過ごすことがどれだけ幸福な時間だったか。
何事にも代えがたい時間。

せめて、最近見た映画の話を聞くだけでもいい。

そう。
1億円もらうより、息子と映画のの話をしたい。









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