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トラウマは克服できない

わたしは10代のとき
学校で担任からの虐待と
同級生からのイジメ被害を経験しました

実は、30歳を過ぎた今でも
その時の恐怖を乗り越えられていません

トラウマはわたしの無意識に
深く刻み込まれている

だから、疲れが溜まっていたり
気圧変動の影響を受けたり
不安を抱いたまま眠りにつくと
決まって同じ夢を見ます



わたしはただ、ただ
ひたすら走り続けている

真っ暗な学校の廊下

今にも喉が切れそうなほど
荒い息切れを続けながら
足元までびしょびしょになりそうなほど
じぶんの限界以上に号泣しながら……

わたしを追うナニカから逃げるために
はやく校舎から外に出るために

でも、どれだけ走っても
校門にたどり着かない

助けを求める人もいない
隠れる場所も見つからない
いつ追いつかれるかわからない

わたしは目が覚めるまでずっと
学校中を泣きながら走り回っています



文章にするとそれだけのことで
「得体の知れない恐怖から走って逃げるコワイ夢」
きっと誰もが一度は見たことがあるとおもう

でも、その夢の根源で
ドクドクと今もなお密かに鼓動を鳴らす
過去のトラウマが鎮座している人にとって

どこにでもありそうな逃げ回る悪夢は
日本国憲法第二十五条でも約束されているはずの
「健康で文化的な最低限度の生活」
それが脅かされてしまうほどの力があります

とてもじゃないけれど
朝の一杯のコーヒーと陽の光で
気持ちを切り替えられるようなものじゃない

慣れることもない
同じ夢なのに。



わたしはこの夢を
初めて教室に行けなくなった
10歳の頃から30歳を過ぎた今でも
ずっと見続けています

「こんな夢、もう見たくない」
何度もそう思った学生時代

「同じような恐怖そのものを
 この世から無くしたい」
社会の一員という意味で
大人としての自覚をもった20代

でも、わたしのトラウマである
いわゆる「イジメ」や「虐待」はなくならない

ニュースやSNSで虐待やイジメ問題、
児童や青少年の自殺の話を見るたびに
ショックと絶望に苛まれました



どうすればこの苦しみや
抱えてしまったトラウマに
人生が崩されてしまう人を減らせるだろう

ずっと考えて、考えて、出た答えが
【諦める】でした



イジメはなくならない
虐待もなくならない
なくすこともできない

もしかしたらこの先の未来で、
解決策は生まれるかもしれない

過去に経験した人のトラウマも含めて
なくすことができる方法が
発明されるかもしれない

でも、
キリストが生まれてから今年で2024年
……二千年以上も歴史は積み重ねられ
その間、たくさんの偉人が産まれ
いろんな文明や技術、思想も発展してきたのに

対他者にしても、対自分にしても
いまだに人は人を傷つけてしまうし
人の心は脆いまま

きっといつか
そんな時代もあったねと
教科書の中だけの話になるような
明るい世界には辿り着けない
そこに希望や期待は持てないだろう

でも、10歳のわたしだったら
この答えを理由に
世界からリタイアする選択しか
できなかったかもしれないけれど

30歳になったわたしは
光の当て方を変えられる

「諦める」の意味を
“the END” で納得させない



わたしが向かう
死んでしまいたいほどの苦しみの原因を
この世界からなくすことを諦めて
そのうえで進む道は

自己治癒力を育むということ
わたしはこの「自己治癒力」を
「セルフケア」と読んでいます



わたしは先にあげたように
ずっと痛みの原因をなくすこと
この世界から虐待やイジメをなくすことばかり
必死になって考えていました

でも、思えば
わたし自身がその苦しみと
うまく付き合えるようになったのは

トラウマは解消されなくとも
最低限、健康で文化的な生活を
おくれるようになったのは

じぶんでじぶんを守る方法を身につけたから

その方法は、人によって違うと思っていて
わたしの場合はクッキーセラピーでした
(クッキーセラピーについては下記の記事をご覧ください)


恐怖の学校内を逃げ回り続けたとしても
目覚めさえすれば
安全な場所へ逃げ込める

じぶんの身の守り方というか、
どうしたらじぶんの身を守れるか?
どうしたらこれ以上、傷付かずにいられるか?

その方法が、わたしの場合は
クッキーセラピーだったわけだけど
これに限らず他のどんな方法にしても
わたしにとってのクッキーセラピーのように
なにかがヒトの心身をケアする力が発揮されるときの
根本的な原則は変わらないと思っていて

その仕組みと、じぶんにとってベストな方法を知り
毎日の洗顔や歯磨きのように
ライフワークの1つとして取り入れ始めたら

じぶんの生活の中心が
トラウマや恐怖心と闘うことから

食事をたのしみ、人とコミュニケーションをはかり
興味のあることに挑戦してみたり
じぶんの感じている喜びや楽しみを
大きくしていこうと頑張れたり……
心身を心地好さで満たしていくことに変わりました



それでもときどき悪夢をみます
ショッキングな報道を目にすれば
記憶がフラッシュバックされ
取り乱されそうになることもあります

それだけ過去におった心の傷は
根深く、なかなか完治はむずかしいのです

だけど、クッキーセラピーを始めて以来、
1日の中でトラウマに苦しむ時間が減り
じぶんを傷つけてしまうことがなくなりました

じぶんのSOSやピンチに気付き
そこから安心な場所へ
じぶんでじぶんを連れて行けるようになりました



もし、わたしが今タイムマシーンに乗って
20年前の引きこもりで鬱だったわたしに会いにいけるなら
クッキーセラピーを教えてあげたい

学校に行けないのなら
外に出ることが怖いのなら
人目に触れたくないのなら

たとえ「フツウ」とは違った生活だとしても
無理にフツウに合わせていこうとしなくてもいい
必要以上にストレスを増やすことをしなくてもいい

まずはじぶんの心の傷を癒すことに
起きている間の時間をつかおう

1日の中で1分でもいいから
「ツライ」と感じる時間より
安心感を抱ける時間を多くしよう

そのためだったら何をしてもいい
誰のためでもなく、
じぶんが癒しを感じるための行動をするのです



そして、このことは
じぶん自身ではなく、じぶんの大切な人が
今まさに苦しんでいるという状況の方にも伝えたい

たとえば、じぶんの家族や
パートナーや友達etc…

特に、我が子が不登校になってしまった親御さん

わたしには子供はいないけれど
わたしはかつて不登校で
引きこもりだった子供でした

不安なのは当然だと思う
わたしの両親も不安でした

わたしの不登校や鬱が原因で
夫婦喧嘩もさせてしまったし
父には何度も会社を休ませ
母もノイローゼのようになってしまい
家庭が崩壊しかけました

でも、今わたしには
たった一人の夫とたくさんの友達、
やりがいのある仕事もあります

大学なんて、修士課程まで通ったし
新卒で正社員として働けました



学校に行かなくても
勉強ができなくても
自立した大人になれます

だから
子供が不登校であることに劣等感を抱いたり
それまでの育て方や育ち方を否定したり
どうかしないで

学校に行けないのなら
家の中でできることを
やらせてあげて

その時、
できれば一緒にできることを
一緒に体験してあげられると
さらに良い

それこそ、女の子だったら
お菓子をつくるとかでいい

そして成し遂げたことを
褒めてあげる
認めてあげる

とにかくこどもの自己肯定感を
こども自身に代わって
高めてあげるのです



幼少期から思春期に
自己肯定感を失い
自己否定を続けてしまうと
大切な我が子を失いかねません

わたしは不登校の子どもたちが
「じぶんは世界に必要のない人間だ」と自己否定し
若くして自ら死を選んでしまうことがないような
そんな世界を目指している

虐待やイジメのない世界は難しくても
じぶんが苦痛を感じる環境や状況から逃げ出し

逃げ出した先で
心や身体に負った傷や不調をまずは回復させ、
ゆっくりじぶんの歩みたい道を
進んでいくための力を養う
(しかも最低限で充分!)

学校に行けていない分、
勉強が遅れていることに劣等感があるのなら、
じぶんがたどり着きたい世界に向かうにあたって
そのために必要な量と内容だけがんばればいい

他の基礎的な学は
後からでもいくらでも間に合う

もちろん、社会人になってから
自宅療養をせざるを得ない状況に
望まずともなってしまった人でも同じ

必要な知識は必要になったときに身につければ充分で
それよりも優先すべきことは
じぶんの中で暴れる劣等感をなだめること
乱れた情緒を落ち着かせること

学校に行けなくてもいい
会社に行けなくてもいい

この先の人生のゴールが
今の苦しみから解放されるための自殺でなければ
どんな方向に舵を切り直していい



この世からトラウマになるような悲劇や
トラウマそのものをなくすことはきっと難しい

でも、心に負った深い傷に
一生悩まされる必要はなくて
その状態を解消、改善させる方法はあります

トラウマを乗り越えようとすることは
過去の痛みに縛り上げられるときの苦しみと
同じくらい、あるいはそれ以上のストレスがあるし

残念ながら、
本当に乗り越え切るのはきっと難しい

だから
今、じぶんの置かれた現状や
あるいはトラウマに悩んでいるみなさん、
その苦しみを乗り越えるために
がんばらなくてもいいです

克服するためのエネルギーを
じぶんを労わるためにつかおう



わたしはこれまでたくさんの人から
どうやってツラかった過去を乗り越えたか
すがるような目で相談を受けました

でも、乗り越えていないのです
乗り越えようとするのはやめたのです

その結果、まわりの人からは
まるで過去の苦しみを乗り越えたかのように見える
そんな生き方ができるようになっています

そう生きられるくらい
苦しみのモトが人生を占める割合が
小さくなったということです

わたしに先の相談をしてくれた方々も
もれなく、絶望を克服する努力を諦めて
今までそこに費やしていた時間やエネルギーを
セルフケアにつかうようにシフトしたことで
人生を明るく再スタートできるようになっています


わたしがこの考え方に至ったのは
絶望を経験し、その絶望を
長い間、引きずり続けたからこそだと思う

もし大量の睡眠薬を飲んだあの日
そのまま絶望のゴールテープを切ってしまっていたら
今、この文章を書き留めることはできなかった

だからこそ、
この世を去りたいほど苦しみながら
それを乗り越えようとがんばっているのに
うまくいかなくて、ますますじぶんでじぶんを
傷つけてしまっている人へ

わたしが経験したこれまでの過程も含めて
伝え続けていきたい
「自己治癒力を養おう」

セルフケアの時間をつくり
じぶんを心の傷をじぶんで回復させるのです
がんばるのはそれだけでいい



自己治癒力を高めることの必要性を伝え続ける
それこそが、2007年に犯してしまった自殺未遂から
たくさんの人の時間と知恵と愛で生かしてもらい
ここまで回復できたわたしが果たすべき使命……

いや、どちらかといえば
連日、誰かの声なき叫びと涙であふれるこの社会に
まだ生きていくことを許されたわたしが
まっとうすべき責任なのです

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サポートありがとうございます。実は2021年にハーブティー専門店の実店舗化に向けて動いていましたが開業資金の1200万円を諸事情で失いました。でもまだ諦めてはいないので、再始動のための資金として活用させていただきます。オープンの際にはぜひお礼の一杯をご馳走させてください!