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言葉に出来ない感情

大切な曲、思い出の曲、出会えてよかった曲はありますか。

歌や音楽は、心に響く歌詞や声、メロディーが、私を感動させるだけではありません。

その歌に出会えた頃の自分の感情を蘇らせてくれるから、時が経つと更に特別なものになっていくように感じます。



言葉に出来ない感情があります。

それは、大切な音楽や大好きな音楽を聴いた時に感じる気持ちです。
思い出と共に「音楽に乗せられた記憶」が幾度となく沸き立たってきます。

音楽は
忘れかけていた思い出を色褪せずに保存しておくために過去のその瞬間に連れて行ってくれる無形物に感じます。

言葉にすることは出来ないけれど、どうしようもなく沁みてぞくぞくして、油断したら涙が出そうになる。こんな複雑でどうしようもない気持ちになります。

その中でも私には一際感情が揺さぶられる、思い出の曲があります。
ふと、久しぶりにその音楽を再生しました。

「夜明けから日暮れまで」

合唱曲です。

高校時代に合唱部に入り、初めて出会った曲でした。
全国大会に出場できた者だけが、全国の舞台で、出場者全員とこの曲を大合唱することができるという
憧れの曲でした。

様々な演奏会の場でも歌い、3年間何度も練習し続けてきた曲でした。

そして念願の全国大会での大合唱を成し遂げ、
「圧巻」の渦に巻き込まれながら、
この一時を一生忘れないと確信しながら歌った曲でした。

そして、私たちの後輩が憧れ焦がれ、また同じように目標として目指す歌になり、継承されていきました。


私がちょうど卒業式を迎える頃にコロナが流行りだしました。

3月に全国大会が決まっていた後輩らは
コロナで全国大会が潰れました。

当時「歌う」ことが悪になっていましたね。
合唱には「声」しか道具がないのです。
そのたった一つの道具を奪われたのです。

そして、あまりにも小規模に変更された、年1回の定期演奏会で、
後輩らは最後に
「夜明けから日暮れまで」
を先生にプレゼントとして歌ってくれました。

初めの1音を聴いた瞬間から、涙がこぼれました。

どうしても全国大会で歌いたかった。
ようやく手に入れたその瞬間が消えました。
行き場のない気持ちを、最後の集大成という形で、届けてくれたからです。

コロナ禍には溢れる程の悲しい物語ができあがりました。それなのに
届けてくれた歌にはそれ以上の美しい音色が乗せられていました。

どんな歌にも、出会った時や音楽と共にした時間の物語があります。
自分だけの物語があります。

音楽は、時空を飛躍させてくれる無形物だと感じます。
戻れないけれど変わりもしない過去に、自分の生きてきた時間を感じます。

自分にしか分からない、
自分だけにしか得ることの出来ない
音楽から得られる
言葉にできないこの感情が

大切です。




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