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日本の接客業の切なさ

最近水族館のカフェで働き始めたのですが、数ヶ月前までオーストラリアのラーメン屋で働いていたせいか、3年半ぶりの日本での接客業は、とてもメンタルに来ます。

良いお客さん

一般的によく言われますし自分でもそう思うのですが、接客業で働いた経験があると、自分がお客さんの立場になった時に店員さんに優しくできるようになると思います。

これは、実際に自分が店員となりお客さんと関わることを通して、店員さんも人間であることを認識し、仕事とはいえお客さんに横柄な態度を取られると傷つくということなどを、身をもって知るからだと思います。


そのため、私は大学生の時に接客業を経験していて良かったな、自分は態度の良いお客さんでありたいな、と、そう思いながら店員さんと接してきました。

具体的には、研修中の店員さんが少し手間取っていても温かく見守ったり、ミスしていても全力で許容したり、愛想よくしたり・・・。

それで十分だと思っていましたし、良いお客さんでいるつもりでした。



・・・オーストラリアのラーメン屋で働く前までは。


オーストラリアのラーメン屋

オーストラリアのラーメン屋ではホールスタッフをしていたのですが、お客さんはオーストラリア人が多く、お国柄か、気さくな人が多かったように思います。

そのため、先輩スタッフは勤務中によく常連さんと会話しており(もちろん英語)、そこに巻き込まれることが何度かあったのですが、当時はオージーイングリッシュのなまりや文脈のわからない会話を聞き取ることが苦手だったため、「話しかけないでー!ほっといてー!」とか思いながらラーメンを運んでました(笑)


お客さんと仲良くできるのは職場として好感が持てたものの、常連さんの名前やいつもの注文内容はもちろん、その時会話を通して知ったことを一人ひとり覚えておかなければならないプレッシャーがあり、当時新人で仕事内容を覚えるのに精一杯だった私にとっては、常連さんとの会話はとても負担が大きく感じられました。


そういった意味でも、先輩と常連さんが会話しているところからは、なるべく逃げていました(何のためにワーホリしに行ったんだか笑)


気さくなお客さんたち

もちろん、気さくだったのは常連さんだけでなくお客さんみんなに言えることでしたし、その親しみやすさに救われたことが何度もありました。


例えば、お客さんに「トッピングの野菜って何が入ってるの?」と聞かれた際、”もやし(bean sprout)”という単語がどうしても出てこず、

私「It's bean......bean......Sorry, I forgot...!」(えっと、ビーン・・・ビーン・・・ごめんなさい忘れちゃいました!)
客「Bean sprout??」(もやしかな?)
私「Yes, that' right!! Sorry, I couldn't remember...」(そう!それです!ごめんなさい覚えてなくて・・・)
客「Ha ha ha, that's okay!」(ハハハ、いいんだよ!気にしないで!)

といったような会話がありました。

もしこれが日本だったら先輩に怒られそうなダメっぷりでしたが、お客さんは何でもないことのように笑って助けてくれました。

むしろ、クイズのような楽しさでした(笑)


また、私がお客さんに「枝豆の味付けには、塩・チリオイル・わさびがあります」と、ハンディーの選択肢通りに説明したものの、実はわさび味が店になくオーダーしてくれた方に謝罪しに行った際には、「オッケー、じゃあチリオイルにするよ」とお客さんが一瞬で変更してくださったことがありました。

その時のお客さんはなんというか、ミスを許す許さないといったフェーズがなかったような、別に何気ない会話をしただけのような・・・そんな印象だったため、とても安心した記憶があります。(うまく表現できなくてすみません)


他にも、「Hello, いらっしゃいませ!」と言ったら、お客さんが必ず "Hi" とか "Hello!" って返してくれたり、「Thank you, ありがとうございました!」と言ったら、"Thank you!" とか ”See ya!" って返してくれたりと、店員としての挨拶に対しても、お客さん全員が返事をしてくれていたように思います。

それらのやりとりは、「店員と客」としての関係というより、普通に「人と人」とが会話しているような、そんな感覚でした。


日本の接客

さて、冒頭に戻ります。オーストラリアの接客でそういった経験をした後、帰国して現在水族館のカフェで働いているのですが、当たり前というべきか、日本での接客にお客さんとの距離や格差を感じています。


まず店員側のプロ意識が高く、言葉遣いも徹底して直されますし、お客さんには常にへりくだった態度を取っています(「〇〇になります」ではなく「〇〇でございます」に直されたりとか、「恐れ入ります」を連呼したりとか)。

※ちなみにオーストラリアのラーメン屋では、接客英語は「ググって」と言われただけで、教えてもらってすらいませんでした(笑)


そしてお客さんも少し上から目線の方が当たり前にいて、挨拶を無視して急に質問してくる方もいますし、注文内容を聞き取れず聞き直したら苛立たれることもあり、対等な人としてではなく、店員という役割の者としてしか見られていないように感じています。

オーストラリアに行く前の自分だったら気にしなかったかもなぁ、というレベルのことですが、今ではいちいち気になってしまうようになりました。


更には、「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」をスルーされたり、レジ対応中にお客さん同士で会話していて話を全く聞いてもらえなかったりなど、今まで気にしなかったどころか日本では当たり前の光景ですら、気になるようになってしまいました。(もちろん中にはとても丁寧に接してくださるお客さんもいます)


店員の言葉をこれほど無視し、デフォルト(定型)の対応だけを望むのなら、接客業って別にロボットでもよくない??と最近よく考えます。

だってロボットの方が正確でミスがないし、その方がお客さんも快く無視できるでしょ?????


・・・・・・話が逸れましたね。戻します。


だから日本の接客って切ない

オーストラリアの接客は、良くも悪くもお互いに立場ではなく個人として接していて、距離が近いように感じました。

お客さんは店員さんに対して、店員さんはお客さんに対して一人の人間として接しているという点が、日本にはないオーストラリアの接客の良さだなぁと思います。


それを体験してしまったためか、私は日本でお客さんから人間として扱ってもらえず、店員側からお客さんへの発信が一方通行になっている気がして、切なく感じてしまうのだと思います。


だって学校でも職場でも、挨拶したのに返してもらえなかったら悲しいでしょう? 

返事を返さない相手なんて、校内放送や自動音声とか、相手が目の前にいないときぐらいでしょう??(あとは喧嘩中の相手とか?)


まあその代わり、接客クオリティは日本の方が断然高いんですけどね!


客の立場としての自分が変わったこと

そのため、私は自分が客として店員さんと接するときは、常に店員さんを一人の人間として、目の前にいる相手として接するようにしています。そして、それが相手にも伝わるよう心掛けています。


例えば、さすがに買い物する先々で店員さんに毎回雑談をぶっこむまではしないのですが、「いらっしゃいませ」と言われたら「こんにちは」と返したりとか、

注文を聞き取ってもらえなかったら「マスクしてると聞き取りづらいですよね~」と言って緊張感を与えないようにしたりとか、

カードやSUICAで支払うときはそのまま無言で差し出すのではなく、「これ使えますか?」と毎回確認したりだとか、

何気ないところで会話というものを意識するようにしています。そして、表情や声色もなるべく明るく親しみやすくしているつもりです。


ただの自己満足かもしれませんが、少しでも店員さんが私という客との会話の中で、緊張せずリラックスしてくれたらいいな~と思っています。


さいごに

さて、今更ながら最後に言っておきたいことがあります。

これまで散々日本の接客についてオーストラリアと比較してあれこれ言ってきたのですが、私は決して日本の接客様式を非難し、オーストラリアを見習え!と言いいたいわけではありません。

そしてもちろん、日本人全員に客としてこういう態度を取って欲しい、と押し付けているわけでもありません。


国も人種も違うのだから文化が違って当たり前だと思いますし、訪日外国人が「日本の接客はすばらしい!」と感動しているシーンをテレビで見ると、私も日本人としてドヤっていますし(笑)

日本の接客は、こういう文化として、これで良いのだと思います。


ただ私がここで伝えたかったのは、オーストラリアで接客業を経験し感じたことを通して、「こういう文化もあるんだよ」「こういうお客さんもアリじゃない?」といった、軽~い情報提供です。


・・・なんか言い訳がましいですね(笑)

不快にさせてしまっていたらごめんなさい。


ちょっとでもこれを読んでくださった方々に、新しい視点を得てもらっていたら嬉しいな、と思います。

ではでは。



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