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ことのはいけばな

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花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。地軸の傾いた地球に乗って、太陽の周りを一巡り。花を立て言葉を立てて、遊行します。
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2021年4月の記事一覧

ことのはいけはな;晴明第14候「鴻雁北」

ことのはいけはな;晴明第14候「鴻雁北」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。

*懐かしき桜の中へ鳥たちは花を見捨てて帰るというに

*真っ青な空から聞ゆ桜声中央高速妻子道づれ

*春空と花影の下眩暈して花天月地へ反転するも

*猫となりうたた寝したきこの枝で落ちる夢見て目覚むすり傷

花万朶空へ飛び散る波しぶきこの身に受ける攫われたきが

水ぎわにひた

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ことのはいけはな;晴明 第13候「玄鳥至」

ことのはいけはな;晴明 第13候「玄鳥至」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。

とうめいの胚珠のようなすがたしたうつわ満たされ花水をのむ

光待ち閃く羽の花さきの涙ふくらみこぼれるままに

苧環の透ける白さよ青い葉の薄いガラスに揺れる玉の緒

インドラの網の宝珠を象って遥けきみづを張る玻璃ガラス

息を吹き型より溢れとどまりて花咲くときを夢みるうつわ

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ことのはいけはな; 春分 第12候「雷乃発声」

ことのはいけはな; 春分 第12候「雷乃発声」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。

竣工後約1年のお庭。お引き渡しの時も、喜んでくださっていたけど、花曇りの日曜日に訪ねて、なお一層その可愛がりっぷりが深まっているのがわかった。思うに、植物だって人を見ている。桜を愛でるお花見も相思相愛だからこそ、ここまでみんなが心待ちにするから、彼らも美しく、誇らしげに咲いて

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ことのはいけはな;春分 第11候「桜始開」

ことのはいけはな;春分 第11候「桜始開」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。

花を挿すただその振る舞いを繰り返す花の手つきに絆されていく

花活ける身体が花となっていくお指の先にはな咲き残る

めぐり花見える見えない境い目の不思議な森をはじめの宇宙

さくら咲くわたしの中にまっすぐにわたしのうちで頬笑むさくら

紫のその手に

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ことのはいけはな; 春分 第10候「雀始巣」

ことのはいけはな; 春分 第10候「雀始巣」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。

*春分に 花挿し目覚む 石の下

あちらとこちら 話し花咲く

*春彼岸 お墓の石に水ひかり

春がきたよと 花を挿す君

*春分や 墓苑色づ

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ことのはいけばな ;啓蟄 第9候「菜虫化蝶」

ことのはいけばな ;啓蟄 第9候「菜虫化蝶」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅のはじまり。

「菜虫化蝶」…昨年からデザインしていた屋上庭園がお引き渡し。

まぼろしのやうに小さくひらひらと対岸歩む人を追い抜く

ひるがえる小さな扇てふてふのこの世にいたり消えかけたりと

おい抜かる人は気付かぬてふてふの表に裏にときのまにまに

空港へ向かう巨鳥の烈音に鳥かたむ

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ことのはいけばな;啓蟄 第8候「桃始笑」

ことのはいけばな;啓蟄 第8候「桃始笑」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅のはじまり。

赤坂氷川神社の花手水。

「はなのみち」の生徒さんたちとはじめる。

初回は自分で活けた。

椹(さわら)の剪定枝をいただいた。紅白の桃は若々しい。それに菜の花。

ホワイトデー ほころぶ顔は 桃の花

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ことのはいけばな ;啓蟄 第七候「蟄虫啓戸」

ことのはいけばな ;啓蟄 第七候「蟄虫啓戸」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅のはじまり。

【舞台裏】

暗がりの舞台の袖に抱きとられ

光の中へ生まれ行く鳥

ことのはいけばな ;雨水第5候「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」

ことのはいけばな ;雨水第5候「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅のはじまり。

植栽を手がけたコロナにより営業自粛の続くホテル。植物は擬の地面でも、大気に差し込んだ身体で機微を察し、春を招く。引き寄せたけど、水槽を眺めるような。

カプセルの内より眺む擬似自然アアソウカイの春に霞みて

春霞コロナウィルススギ花粉黄砂も何も祓う松籟

ひたすらに光の

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ことのはいけばな ;雨水第6候「草木萌動」

ことのはいけばな ;雨水第6候「草木萌動」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅のはじまり。

山口へダンスカンパニーのツアーに同行。

https://www.youtube.com/watch?v=X8Y_TiJje2k

湯田という土地に泊まった。

ホテルから劇場へ行く途中に、小山があって、神社があった。

温泉を教えたという白狐が住んでいたらしい巣穴が、

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ことのはいけばな  雨水;第4候「土膠潤う」

ことのはいけばな 雨水;第4候「土膠潤う」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。

松岡正剛さんの『日本文化の核心』を読んで、
僕は面影を立ち上げたいのだと、よくわかった。
あの日、あの場所に花をいけたことが「ことの始まり」だったのか。

大好きな雑木林があって、ちょっと入るとそこは秘密の場所だった。ある時花を始めたばかりの僕はお花屋さんで好きな花を買って、

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