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ビジネスサイドから技術領域に踏み込んでみる話

こんにちは、高村です。
エイチームコマーステックで事業責任者をしています。

今回は経営/ビジネスサイドにいる私が技術領域に踏み込んでみた背景や実施内容を記事にしています。自己紹介については以前の記事「事業開発におけるドメイン知識の功罪」を見て頂けると幸いです。

なぜビジネスサイドから技術領域に踏み込んでみようと思ったか?

自分が見ている事業において、過去にAI活用やツール導入が思うように進まなかった事があったことがきっかけです。
個人的には技術に優位性のある環境で働きたいという思いがありますので、経営と技術との間に溝のようなものがあるのだとしたら要因を特定して解消したいと考え始めたというのが、ざっくりとした背景です。

この経営と技術の溝のようなもの・課題感について少し整理をしてみます。

事業/会社経営と昨今の技術進歩との間にある課題感の整理

ざっと整理してみた課題感は以下のとおり。

  1. 専門性が高くなると共通言語が乏しくなる

  2. 共通言語が減るとコミュニケーションや議論を適切に行いにくい

  3. 適切な議論・判断がされないと専門性の高い個が活かされにくく、組織としての価値も出しにくい

この課題感はいくつかの仮定の上に成り立っていますので私の見当違いなら良いのですが、もし仮定のとおりだとすると個にとっても組織にとっても高い専門性が発揮されない不幸な状態です。

課題が生まれるシーンの具体的な例

たとえ話を1つしてみましょう。
「何らかの事業にAIを活用して成果を出せないか?」という命題があったとします
私はビジネスサイドの人間であり、ビジネスサイド脳のままでAI活用のコスト・リターンを考えると「どれだけの期間、どの程度のコストを払えば、どの程度の売上/利益の貢献があるか」が真っ先に脳裏に浮かびます。

まずコストの話をしましょう。
AIを使った成果創出に至るには、収集データの整理、データ収集基盤の作成、実際のデータの収集、特徴量選定・モデル構築、モデル改良…などの様に、少なくないプロセスを踏む必要があり、自然と長期投資的な分類になると思います。特に実際の事業データを集める部分は数ヶ月以上掛かるということも多いのではないでしょうか。
収集データの整理や特徴量選定にはドメイン知識を有する者が最低1名、データ収集にはフロントエンドエンジニアが1名…などと、AIエンジニアのみで完結出来る話でもないため巻き込む人員数も少なくありません。

続いてリターンの話です。
AIを活用を検討し始めたとして「いつ、どの程度の、売上/利益の貢献があるか」、これをAI活用プロジェクトの開始段階で高い精度で会話出来る人はどれだけいるでしょうか。売上/利益の貢献度というリターンは正直やってみないとわからないという回答が多いのでは無いでしょうか。

成果創出のコストとリターン。
天秤の片側には「数ヶ月、複数名」という想定コストが既に乗っかっている一方でリターンは見えない。この状況で長期的なコストを払いましょうと判断出来るケースは多くないと思います。

もちろん、AIの適用対象や適用方法を適切に限定・明確化できていればこの限りではありません。ある程度堅い収益面でのリターン予測も可能だと思います。ただしそれが可能なのはAI巧者であり、少なくともビジネスサイド一辺倒の思考しか出来ない私には不可能に近い話です。


専門性の高い技術と経営判断との間において、ビジネスサイドの私がビジネスサイド脳のままで取れる判断は、

  1. わからないことには投資しない

  2. わからないけど目をつぶってなんとなくで投資する

  3. AIエンジニアにビジネスサイドに伝わる共通言語を考えてもらって、理解できるまで翻訳してもらい続ける

こんな所ではないでしょうか。
私としてはいずれも積極的に取りたい選択肢ではありません。

社内外問わず他にも様々な例があると思いますが、上記のようなケースが専門性が高いからこそ生まれる経営と技術との溝なのではと思います。
上記の3. をやってくれるエンジニアサイドの方もいますが、エンジニアサイドの方がビジネスサイドに伝わるように足を踏み込んでくれているのに、私がそれにおんぶに抱っこではいけません。
自助努力可能な範囲で私からも領域横断をすべきだと考えています。


以下は余談ですが、本稿記載中に似た課題感を持っていそうなアドベントカレンダーを見つけました。

私はビジネスサイドから技術に足を踏み入れようとしていますが、上記は技術→経営目線での話が中心の印象です。興味深いテーマなので公開を楽しみに待ちたいと思います。

経営と技術の溝を埋めるために、実際に色々やってみた

本記事の冒頭で「個人的にデータサイエンス文脈での時系列分析、機械学習に取り組んでいる」と記載したのは、これまで述べた溝の様なものを解消したいという理由に尽きます。
インフラやセキュリティなど他の技術分野もありますがAIはより直接的に商売に近く、ビジネス基礎力としてもなるべく持っておきたい領域だというイメージがありましたので、まずはここから取り組んでいます。

本業のエンジニアには敵いませんし、ゼネラリストになるにしても限界はあると思いますが、理解しようとする努力はすべきだと考えますので四の五の言わずにやってみようということで手を動かしてみてます。

まだまだわからないことだらけですが…とりあえず以下のようなことをやってみています。

  • Pythonの環境構築

  • KaggleにてTitanicやボストンの住宅価格予測を触ってみた

  • TitanicのLeaderboardの解法を参考にsubmitし直してモデル改良によるscoreの改善を体感

  • (サッカー好きなので) Kaggleのfootball関連のコンペに参加したがテーブルデータでは無かったためsubmitすら出来ず挫折

  • Numeraiコミュニティに入って議論内容見つつモデルをいくつか作成した

  • 作ったモデルと自己資金で金融商品tradeをしてみた

  • SVM / LightGBM / Optunaなどをinstallして自前のテーブルデータで特徴量選択や目的変数設定/工夫などを触りだけやってみた

  • 機械学習アルゴリズムの基礎的な事がよくわからなかったのでARIMA等の数理モデルによる時系列分析にも手を出してみた

  • 確率・統計の基礎から勉強し始めた

色々やってみて思ったこと

リターンが売上や利益などの数字ならビジネスサイド脳でもわかりやすいのですが、それだけで語ると判断を誤る領域があるのでは?という思いが強くなりました。話は変わりますがデザイン領域も経営としてbetしたときのリターンがビジネスサイド脳のままでは言語化・理解が難しいと感じています。

また特定の技術領域の専門性を高めるという1点においては餅は餅屋で良いと思いますが、その専門性の高い個の力を会社・組織体としての価値につなげるためには餅屋任せにしすぎるのは私個人としては違う気がしていますし、会社や事業を主語とした時の競争力に技術レベルが強く相関している会社なのだとしたら、経営と技術の溝を埋めることは技術競争力を担保するだけでなく事業競争力や会社競争力に直結する話になると思いますので、個人的には技術領域を理解するための努力は可能な限りしていこうと思います。

さいごに

思考実験的な話ですが、今回仮定した通りの経営と技術の溝という課題が顕著になったとしたら、どんな世界になっていくでしょうか。

溝のある組織と溝のない組織との意思決定・成長スピードは今まで以上に乖離しそうですね。産業革命的な事も起き続けるのだと思います。
歴史上の出来事で言えば19世紀に産業革命への抵抗としてラッダイト運動という出来事がありましたが、AIなどには破壊する実体がないので何が起きるのでしょう。現代の先端技術の"先端さ"と一般平均的な技術への認知との間にある乖離は、歴史上類を見ないレベルの乖離なのでは?と感じてます。

触れれば触れるほど技術の凄さと応用するアイデアが広がってきている感覚になりますが、実際のビジネスの上の実利も大切ですので、双方バランス良く思考出来る知識や力を身に着けた人でいれるよう、学習を続けたいと思います。

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