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本のはなし

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読書記録や、本をめぐるエッセイをまとめています。
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#本

読書のコスパ

読書のコスパ

小説を一冊、読み終えた。物語からテーマがはっきりと浮かび上がってくるような作品だった。だらだらとストーリーが続くのではなく、背景にある筆者の考えに手が届きそうな感覚があった。こういう作品に会えたとき、表現力ってすごいなあ、といつも感じる。

そんななか、思春期に出会った「わけわからん小説」たちを思い出す。

梶井基次郎の『檸檬』も謎だったし、カフカの『変身』も意味がわからなかった。わたしは思考が浅

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最近読んだ本たち(秋をかみしめた10月分)

最近読んだ本たち(秋をかみしめた10月分)

もう11月。こわい。

……最近、こういうことしか言っていない気がする。先月も「もう10月だなんておそろしい」と書いていた。こわいのは時の流れじゃなくて自分の脳内だということにやっと気づいた。今年もあと2ヶ月、後悔のないよう突っ走る所存である。

『書く仕事がしたい』 佐藤友美

「読んでなかったんかーい!」とツッコまれそう(誰に……?)な、ライター界隈では有名な一冊。平易な言葉が連なる親しみやす

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最近読んだ本たち(駆け抜けた8月分)

最近読んだ本たち(駆け抜けた8月分)

8月はあれこれ立てこんでいて、忙しかった。夏休みがあったので、娘たちの昼食をつくり、遊びにも参加し、もちろん仕事もした。

終えてみると、駆け抜けた感じ、達成感が大きい。一つの山を越えては「なんとかなるもんだ」と、息をつく。そんなことを繰り返して、ここまできた気がする。

『旅をする木』 星野道夫

写真家としてアラスカで暮らした、星野道夫のエッセイ集。

アラスカの州都・ジュノーや、オーロラの町

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女らしさについての雑感あれこれ

女らしさについての雑感あれこれ

ジェーン・スーさんと中野信子さんの『女らしさは誰のため?』を読んだ。

女性性やジェンダーについて論じる書籍は数あれど、これはカジュアルな対談形式で「女らしさ」を扱っているところがとても意義深いと思う。いまいち納得感を得られない項もあれば、「あー、それ! それよ!」とページに向かって叫びたくなる箇所もある。女子会に参加しているノリで「女らしさ」について考えられる。

とくに、社会から求められる「女

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最近読んだ本たち(走り去った6月分)

最近読んだ本たち(走り去った6月分)

6月はいきなり台風による大雨に見舞われた、気がする。1か月も経つと記憶がおぼろげになるのが悲しい。

以前、5月は逃げていったと書いたけれど、6月は走りさっていった。手もとに一瞬たりともとどまらぬ時の流れ、どうにかならないものだろうか。

『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』 宮崎伸治

村井理子『本を読んだら散歩に行こう』のなかで紹介されていた一冊。もちろん私は出版翻訳家ではないけれど、読

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