シェア
Cofui
2021年6月5日 20:22
電車のシートに腰かけながら、ぼくはワイヤレスイヤホンをそっと耳に差し入れた。頭が痛く、というか顔の右半分がピリピリとさすように痛んでいた。目の中には何か眼球のカーブに沿わない異物が入り込んでいるようで、目を開けているのも辛いくらいだった。 ワイヤレスイヤホンとスマートフォンを接続し、アマゾンミュージックを開く。本でもなく、オーディオブックでもなく、何故か無性に音楽という音の波に浸りたかったのだ
2021年6月20日 12:02
朝の教室はなんだか埃っぽい匂いがした。 「オッス」 男友だち何人かと軽くあいさつを交わして、サトシは前から2列目の席についた。 「おはよう」 隣の席のカエデが声をかけてきた。低いけれど、張りのある声だった。 「おはよう」 サトシは口ごもるように返した。サトシと目が合うと、カエデはすぐに前を向き、サトシにその横顔を見せた。左の方から淡く射し込む朝の陽に、カエデの横顔と短くなった髪がくっ