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人事の仕事⑧ 人の性質と扱い方について

皆さん、「人ってどんな生き物、どんな性質を持っている」と思いますか?

今回は、理論理屈だけでなく私自身の経験から紐解いた人の性質についてお伝えしていきます。人事担当者や管理者、経営者といった、「人を扱う立場にある人」に共通して求められる態度だと思いますので、ぜひ参考にされてください。

人はどんな生き物か、というと、ズバリ「社会的な生き物」と言えます。

これは、未来永劫変わることがないと思われる性質です。

社会では、「他人から好かれるか?嫌われるか?」と「他人から信用されているか?されていないか?」が合算されて「その人に対する評価(=レッテル)」が成り立っている、という側面があります。

日本は古来から村社会であり、その名残が地方になればなるほど色濃く残っていますが、会社組織も多かれ少なかれ、村的な要素(=いわゆる"規範")があります。また、現代社会では一般人でも情報発信ができるようになりましたから、個人がより広く大きな影響力を行使できる社会になってきています。そういう意味では、これまで特定の人からの評価だったものが、時代を経て不特定多数の人からの評価へと移り変わってきたともいえるわけです。

どのみち、「他人から好かれるか?信用されるか?(=その人への評価)」は、個人にとって非常に重要な位置を占めることとなります。

「評価される」という考えが常にまとわりついているから、通常の会社組織では上司などの自分を評価する人に対しては多くの方が良い顔・良い発言をします。(もちろん、現代社会では炎上という売り方がありますが、会社内で絶妙にそこまで計算した上で振る舞っている人はまだ少ないといえるでしょう。)

正直なところ、評価がまとわりついた時点で、「その人の本音というのは、ほぼ見えない」のが実状です。

なぜ、こういうことが言えるのか?というと、人事コンサルタントとして仕事をしているから、でもありますが、当社で展開しているサービス「ココトレ」で従業員のキャラクターや心身の状態を管理していく中で、実に半数近くの従業員の方が「自分の気持ち・状態」と「周囲に見せている態度・行動」が異なるのです。結果、突然出社しなくなったり、休職や退職につながったり、または各種トラブルへと発展して対応が後手に回っています。

ある意味、全員が正直に振る舞い、発言してくれていればラクなのですが、この「他人からの評価」がまとわりついているがために、本音を言わない、また、経営者はそれに気づいていない、という現状が組織を複雑にしているといえます。

ですから、人を扱う立場にある人は、「人という生き物は、組織の中でどのような性質を持ち、どう振る舞うのか?」ということをよく理解したうえで上手に対応していく必要があります。

それでは、人事施策を推進する中で出くわすことが多い、人の性質について5つを紹介していきます。こうしたことをしっかりと理解したうえで、ある意味一線引いて役者として対応していくと良いでしょう。

人の性質① 人は感情の生き物であるということ

人は、頭で正しいとわかっていても、イライラしているときは怒りやすくなったり、ちょっとした出来心で魔がさしたりします。また、気分や調子が良ければ気持ちも大きくなりやすいものです。

特に、ネガティブな状態にある相手に対して、いくら話しかけたり提案したりしたとしても、「まともに聞いてもらえない」「即座に否定される」「これまでと全く異なる見解を突きつけられる」といった反応に見舞われることがあるかもしれません。

特に、経営者や管理者には感情の起伏が激しい方や、感情を包み隠さずにぶつけてくる気性の荒い方がいますので、そうした場面に出くわしたときは、早々に「今日はタイミングじゃないな」と判断して、食い下がらずに「改めますね」とサッと引き下がり、時間や日を改めて提案し直すようにしましょう。

大抵、別の日にはケロッとしていたり、時間を置くことで心を開いてくれたりするものです。もし、話がこじれてしまったり、気難しい状況が続くようであれば話の持って行き方を変えて、提案する形式ではなく相談する形式を取ってみたり、良好な関係を築いているような人をうまく巻き込むことが大切となります。

相手の感情に波があるように、私たちの感情にも波があります。相手から怪訝な顔をされたり、素っ気ない対応を取られることが数回続くと、「自分は嫌われているのではないか」「以前から好きではなかったけどそれが確信に変わった」などと思い込んでしまうことがあります。

しかしながら、相手が上司や先輩であったり得意先であるような場合、相手を変えることはなかなかできませんから、自分で思い込んでしまえばしまうほど、その場が非常に苦しくなり「この場から離れてしまいたい」と思うようになります。これは宜しくない状態です。

ですから、あまり深く考えすぎずに笑顔で挨拶をしてからスッと会話に入る、または一旦、自分の考えや気持ちを横に置いてから相手と話し込んでみる、といったことをしていくと、自身の心に変化が表れてきますから、試してみると良いでしょう。

一方、相手から「あなたの顔を見るのも嫌だ」と言われるようなこともあるかと思います。実際のところ私たちも、好きな人もいれば、生理的に受けつけない人もいるわけですから、「それは仕方ないですね。人間、好き嫌いありますもんね。」と相手に同意してから、伝えるべきことを伝えると良いと思います。仕事上のお付き合い、と思えばやり過ごすことはできるので。

人の性質② 人はプライドの塊であるということ

人間は、プライドの塊であるといっても過言ではありません。

口では「私にはプライドがない」などと言われる方も、そのほとんどの場合は高いプライドを持っています(プライドの有無を自覚している時点でプライドがあるということなので)。

人は、これまでの人生経験から築かれたアイデンティティ(=自分はこういうものだ、という感覚)を必ず持っています。そしてそれは、誰しもが「自分は正しいことを考え、正しいことをしている」という感覚につながります。これは悪いことではなく、その方が自信(自己効力感・自己肯定感)を持っているからに他なりません。

一方、「自分に自信がない」という方も全体の3割ほどいるのですが、そういう方であっても、心の底では「自分の頑張りや存在を認めて欲しい」「自分にかまってほしい」という気持ちを持っています。何でもどうでもいいと言う人ですら、本当に何でもどうでもいいわけではなく、やはりプライドがあるからこそ、自分の存在にこだわります。

経営者は、それまでの人生経験から、上記のような「自分はうまくやってきた」という感覚を有しています。また、その度合いは違えども、管理者や従業員も似たり寄ったりです。ですので、意地と意地をぶつけても仕方ありませんし、かといって、下手に出ても気分が良いものにはなりません。

相手のプライドを傷つけることのないように敬意をもって接することが大切といえます。

では、どうすれば良いのかというと、相手の話を受け止める、ということです。話を聞く機会が無ければ機会を増やす、相手の話を「なるほどですね。」「すごいですね。」「勉強になります。」と一旦は聴くわけです。そのうえで、「では、私の話も聞いてもらって良いですか。」と切り出すようにしましょう。

人の性質③ 人によって価値観や考え方が大きく異なるということ

日本人は、諸外国と比べて調和や協調性、連帯感を重んじる傾向がありますが、それでも個々人で価値観や考え方が大きく異なります。

特に、世代差や性差は、かなり大きな違いを生んでいます。ミドル層が「ゆとり」「さとり」などと呼ぶ若者世代とのコミュニケーションに困惑している様は、世代差に対する上司世代のアレルギーととらえることができます。個人で見ても、結婚や出産、親の死別等のライフイベントによって、価値観や考え方は変化していきます。

そうであるにも関わらず、個々人の価値観や考え方の違いを受け入れることができずに、「多くの人は自分と同じように考えている」と感じ、「自分と同じように考えなければならない」という思い込みを持つのが人間です。そこから人と人との争いが生じることになります。

ただ、実際のところは世代が違っていてもゲームが好きだったり、アニメが好きだったり、スポーツをしていたり、と共通点があるのも事実です。つまり、「相違」にフォーカスするのではなく、「共通」にフォーカスしていくことで乗り越えていくことができます。相手と「そうそう!」と同調できる話に意識を向けられるかどうかがポイントとなると考えてコミュニケーションを取っていくと良いでしょう。

人の性質④ 人は置かれた立場や状況で価値観や考え方が変わるということ

人間は良くも悪くも環境に順応する生き物です。所属する部門や担当する仕事によって、価値観や考え方が真逆になることだってあり得るのです。

例えば、とある自動車部品メーカーで、利害関係から営業部に対して批判的な態度を取っていた生産部の管理者がいたとします。その管理者が営業部に異動になった場合、これまでと立場が逆になることで、それまでの批判的な態度を今度は生産部に向けるということがあります。

周囲の人は、「立場が変わっただけでよくこんなことが言えるな」と驚くでしょうが、本人は環境に順応しているために、そうした態度がおかしいなどとは思っていません。むしろ、「営業部に貢献するためなのだから当たり前でしょ」といった感覚です。

他には、産休育休に否定的だった上司が、自身に子どもができることで考え方が180度変わり、産休育休に非常に肯定的・協力的になることだってあります。人間は、自分中心で物事を考えますので、価値観や考え方は移ろいやすいものととらえ、固定的には考えないほうが良いといえます。

多くの場合は、何を伝えるか?よりも、誰が伝えるか?のほうが重要ですので、相手にとって影響力を持つ人を味方に引き入れるとスムーズに事が運ぶといえます。

人の性質⑤ 人は事実よりも噂話を信じる傾向があること

多くの人は噂話の類が好きです。

自分とは全く関係のないことであるにも関わらず、芸能人などのゴシップを取り上げた番組やコーナーに人気があるのは、そうした人の心理をついたものだといえます。当然、企業内でもこうした噂話やゴシップが出回ります。昼食時や飲み会などの席では、そうした話題が中心になるものです。

厄介なことは、事実よりも尾ひれがついた噂話のほうが信じられてしまうことです。人は、本人の直接的な言動よりも、噂話として出回った情報を信じる傾向があります。これは、利害関係のある本人は自身に都合の良いことを言うに決まっていて本当のことは言わないはずだ、噂話は客観性があって正しいのだ、という心理と、表向きに見せている清廉潔白な顔とは異なる生々しい話(=ギャップ)がネタとして面白い、という心理から来ています。

よって、人事としては、噂話やゴシップになる可能性のある話、そうした疑いをもたれる行動を取らないことが大切です。特に、経営に関するトップシークレットや従業員のプライベートな情報、給与や賞与などのお金に関する情報など、業務上の秘密を迂闊に漏らすことのないように注意しなければなりません。

秘密を知ることで他人に話したい衝動にかられることもあると思いますが、うっかり話をしてしまうと、一気に信頼を失ってしまい、必要な情報が入ってこないばかりか、良好な関係を崩してしまいます。

現場からすると、人事担当者や人事責任者は「問題やトラブルがあった時にしか現場に来ない」「異動の内示やリストラに関する時にだけ来る」といった秘密警察的イメージを持たれることが多いので、日頃からちょくちょく現場の悩み相談や安全衛生視察などの目的で巡回すると良いでしょう。


以上のような、「人の社会的性質」をしっかりと踏まえてうえで、人事としての振る舞いを意識していくと良いです。正直なところ、人事という仕事は「人の心を扱う」という点で非常に鍛えられる仕事といえます。それが、人生の肥やしになると前向きに考えていきましょう。

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