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境界線が消えるとき



自分がなんにもないところへ還るのを、手助けをしてくれるような音楽がある。

ただ、そこに佇んでいてくれる。

その人の音楽に触れると、わたしはゼロになり、空洞だったことを思い出す。


彼女の名前は、荒井由実。


『水の影』


たとえ異国の白い街でも
風がのどかなとなり町でも
私はたぶん同じ旅人
遠いイマージュ 水面におとす

時は川 きのうは岸辺
人はみなゴンドラに乗り
いつか離れて
想い出に手をふるの


この曲に漂うような、

消すことのできない切なさと共に生きてきた。

だけど、切なさってなんだろう?って

考えたことはあまりなかった。


でも、今ならわかる。


切なさって、

悦びと悲しみが溶け合った状態だったんだね。


それは、

わたしがわたしの悲しみに触れられた悦び。

悲しいのにうれしい。

悲しみに気づいてくれてうれしい。

悲しみが教えてくれた、悦び。

うれしすぎたときの涙の訳も。


生きている、生かされている、

わたしはここにいる、

確かな実感からの、恍惚。


切なさという現象を通して奥深くまで届けられる

魂の振動。


悦びと悲しみの境界線が消えるとき、

わたしは真ん中に還る。



『晩夏』 



丘の上 銀河の降りるグラウンドに
子どもの声は犬の名をくりかえし
ふもとの町へ帰る

藍色は群青に 薄暮は紫に
ふるさとは深いしじまに輝きだす
輝きだす




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いつも目の前には、

優しくて懐かしい風景が溢れている。










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