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思いは伝わる エッセイ#32

思いは、いつか、必ず伝わる。そんなお話です。

私には、5歳になる愛犬がいます。
名前は、オル。元気いっぱいの男の子です。

オルが2歳になった頃、アメリカに移住することになり、オルも私たちと共にアメリカに渡りました。

ただ、アメリカに渡ってからは、私とオルにとって辛抱の時間が続きました。

というのも、環境が大きく変わったことも要因してか、

もともと多少あった吠えグセが、渡米後にひどくなってしまったのです。

半径2メートルくらいの範囲に人や犬が近づいてくると、吠え狂ってしまう。

その吠え方も、気が狂ったような吠え方で声量もあるので、通り過ぎる人たちが、唖然とするorドン引きするような状態でした。今振り返っても、本当に酷かったと思います。

飼い主である私は、HSP気質で特に音に敏感…  突然大きい音がしたりするとビビり芸人顔負けにビックリしてしまうようなタイプで、

オルがギャン吠えをすると、心臓がとまるくらいびっくりしてしまうし、声量とその状況に私自身もパニックになる寸前という状態でした…

私自身、アメリカの環境にまだ慣れていないのもあって、オルが気が狂ったように吠えまくり、周りに白い目で見られるお散歩は、恐怖の時間でした。


人によっては、オルの吠え方を見て、ワンちゃんにも脳の発達障害などがあるから、オルもそういった症状を持っているのではないか?と言われたり、

ここまで酷い吠えグセは一生治らないという人もいました。


けれど、どんな状態でも、オルは私の宝物という事実は1ミリも変わらず、

必ず好転させられるはずだと信じて、

ビビリの私とオルのトレーニングの日々が始まりました。

それからは、いろいろなドッグトレーナーさんからトレーニング方法を学び、本を読んだり、Youtubeを見たりして、

オルに合ったトレーニングを見つけて、とにかく毎日続けました。

オルは犬の幼稚園に行くと、他のワンちゃんと楽しく遊んでいるし、私の友人には懐いているのもあって、人や犬がダメなわけではない。

環境に不慣れでオドオドしている私を、自分が守らなければいけない存在だとオルに認識させてしまったことに反省し、信頼できるリーダーであれるよう、自分自身に対してもトレーニングでした。

毎日毎日、来る日も来る日も、一緒にビビりにながらお散歩に出向いて、トレーニングを続けました。

はじめのうちは、根気強くトレーニングを続けても、吠えグセは改善されず、

もうオルは一生吠え狂ってしまうのかな?
こんなことして、意味があるんだろうか?

と、泣きたくなることも多々ありましたが、

少しでも改善の兆しが見えたらそこに意識を向けて、とにかく毎日トレーニングを続けました。

すると、徐々に、変化が現れ始めました。

最初の変化は、人でした。

人が近付いてきても吠えないでいられるようになってきたのです。

そして、だんだんと、他の犬も1メートルくらいの距離を保てれば落ち着いていられるようになり、その距離も少しずつ短くなっていって、

今では、他のワンちゃんが真横を通っても、落ち着いていられるようになりました。

ワンちゃん同士の相性もあるので、たまに吠えてしまうこともあるけれど、ワンちゃん同士でご挨拶をしたり遊んだりもできるようになりました。

アメリカに渡った時と比べると、別の犬のような変化を遂げたのです。


今では、オルと私は、毎日楽しくお散歩に行っています。

以前は、恐怖だったお散歩の時間。

それが今や、一日の楽しみの一つに。

お散歩に出て、私の隣を嬉しそうに歩いているオルを見ていると、「思いは伝わる」と心底感じます。

私が、毎日毎日オルとトレーニングを続けられたのは、オルのことが大好きだからです。

当たり前だけど、なにがあろうと、絶対に手放さない、諦めないって思っていたし、

毎日毎日教えてあげたら、きっと状況は改善するはずだと信じていました。

オルのことが大好きだから、そう思ってトレーニングを続けられたのだと思います。

そして、今、隣を穏やかに歩いているオルをみると、その思いが伝わったのだなと、心からそう思えるのです。

「思いは伝わる」

時間がかかったとしても、少しずつだったとしても、

「思いは伝わる」

オルと歩んだ軌跡が、私にそう教えてくれました。

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