マガジンのカバー画像

書評

150
運営しているクリエイター

2019年2月の記事一覧

西田昌司(2018)『財務省からアベノミクスを救う』産経新聞出版



プライマリーバランス黒字化目標とか気にせずに、財政出動を拡大することと国の長期計画を示すことが、国民に将来への明るい展望を抱かせ景気の回復に繋がることを主張する一冊。

曰く、税金の存在意義は何もしなくても施しをうけられるんだというモラルハザードを防ぐというもので、足りない分は積極的に国債を発行すればいいらしい。間違っていないように思える。しかし、ここまで来ると果たして物事の真否はこの世界の誰

もっとみる

村山早紀(2016)『桜風堂ものがたり』PHP研究所



希望とか奇跡とか、そういったものを描く言葉は必然的に美しくなるものなのだろうか。ある書店員たちの美しい生き様の物語。そして人は誰も幼いころの悲しみを抱え、明るく生きていくものなのだろうかと考えさせられる。

誰もが認めるカリスマ書店員が、私は本当はこんな女の子になりたかったのだと思うシーン。思い通りにいかない世の中で、それだからこそ誰かを慕い、または憧れ、そうやってこの世界が出来上がっていくの

もっとみる

渋谷秀樹(2014)『憲法への招待 新版』岩波新書



設問が身近な話題で憲法に親しめるのはいい点だが、それ以外は憲法学という学問に対して失望を抱かせる著述であったと言わざるを得ない。政治的な立場の正当性を主張するために憲法学という使い勝手のいい化けの皮を被っている者の多いことを感じさせる。

最も単純化して問題を指摘するならば、論理的に正しい思考が全て正しい結論を導くわけではないという事実への配慮が、全く欠けているという点である。恣意的に「正しい

もっとみる