ていねいに、親切に、本をつくる/編集者の言葉#4
今回は雑誌『暮しの手帖』の創刊編集長だった花森安治さんの言葉を軸にして、「こんな時代に本をつくること」について書いてみたいと思います。
ソックスからマッチ、ティッシュペーパー、宅配便、スティック糊、万年筆、エアコンにいたるまで、毎日の暮らしにかかわる商品を編集部が自腹で買って、その使い心地や性能をテストしながら、熱量をかけて記事を書いてきた花森さんらしい言葉です。
本を商品として取り扱うのには抵抗がありますが、私はこの言葉に出合って「自分が編集している本は、読者に親切な商品たり得ているだろうか」と、常に心に問いかけながら、仕事をしていきたいものだと考えるようになりました。
そして,、そのためにいま私に何ができるだろうと、考えているうちに、こんな言葉が頭に浮かびました。
ていねいに、親切に、本をつくる。
「ていねいに」というのは、逆に言うと「雑な本」をつくらないということでもあります。
「おもしろい本だな」と思って読んでいたら、誤字がいくつも見つかって読む気をなくしたことはないですか? それは一例にすぎませんが、打ち合わせ、取材、編集、校正、すべてにわたって、ていねいさを心がけることで、気持ちよく本を読んでいただくことができるはずです。
そして「親切に」というのは、読み心地の良さ(実用書なら使い心地の良さ)を最大限に高めるということです。
自分が読者なら、どんな企画や工夫があるとうれしいだろうか。かゆいところに手の届いた企画を必死になって考え、文章の章立てや、構成、表現について熱量込めて考え抜き、改善すべき点があれば、書き手の方とも相談して原稿の完成度を高めていく。そうすることで、読書の喜びはさらに高まるはずです。
そんなの当たり前! 確かにそうかもしれません。しかし当たり前を愚直にやり続けることで拓けてくる道もあるように思うのです。そしてそんな本こそが、こんな大変な時代において、多くの方の役に立つ本になる、なってくれたらいいなと願っています。
ちなみに今回とりあげた花森さんの名言集「花森安治 灯をともす言葉」には、心に灯を灯し、生活に灯を灯し、社会に灯を灯すような名言が一杯詰まっています。
2020/05/09 5:31加筆
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