「事実」と「事実」との間に潜む「関係性」を発見せよ/編集者の言葉#20
伝説の雑誌「遊」編集長であり、現在は編集工学研究所の所長としてご活躍されている松岡正剛さんは、編集にとって一番大事なことを次のように説いています。
なぜ「関係を発見すること」が、編集で一番大事なことにつながるのでしょうか。そのためには、松岡さんにとっての「編集の定義」をひもとく必要があります。
松岡さんは、編集とは「情報を知(私たちにとって必要な情報)にしていくこと」と定義しています。つまり情報と情報を取り結ぶことで価値を生み、情報は知となり、編集されるわけです。
だから「関係性を見つける」というのは、松岡さんのいうとおり編集にとって一番大事なことなんですね。
たとえばカレーライスは、ざっくりいうと、ご飯+タマネギ+ジャガイモ+ニンジン+お肉+市販のカレールーを合わせるとできあがります。
さっきの例でいうと、これらのさまざまな素材をそのままにしておかないで、それらの間にある関係をみつめると「カレーを作るための具」という関係性が見えてきます。それがつながって「カレーライス」という料理ができあがります。
ところで、ここでカレーのルーがなかったとすれば、どんな関係が見えてくるでしょう。「肉じゃがをつくるための具」という関係性が見えてくるかもしれません。
あるいは、ニンジンのかわりにショウガを参加させて「コロッケと生姜焼きを作るための具」という関係性が見えてくるかもしれません。
お肉とタマネギに注目すれば「ハンバーグとそのつけあわせを作るための具」という関係性も見えてきますね。
話を編集に戻すと、編集の成果とはわたしたちのまわりにあるバラバラな情報のあいだに、「どんな新しい関係」「価値ある面白い関係」を見つけるかで変わってきます。
「関係発見トレーニング」として使えそうなのは、新聞の見出しや電車の中吊りの見出しをじっと眺めて、なにか関係を見つけてみること。あるいは、書店の平台に並んだ本をながめて、それらに共通する関係性を考えてみる。
それ以外でも、スキマ時間に目に映ったものでこまめに練習していると、編集の筋肉もついてくるかもしれません。ちなみに、本書にはそうした編集力を身につける編集稽古なるコーナーもついています。
最近、「場の編集」や「空間の編集」など、編集という言葉の使われ方がますます広がっています。しかし、その原点は1970年代から「そもそも人間の歴史は編集に始まっていた」として編集的世界観をとなえていた松岡さんであるように思います。そうした意味で一読をお勧めしたい1冊です。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
よい一日を!
ただいま4刷 構成を担当した書籍が発売中です!
面白かった、役に立った、心が軽くなったなど、この記事を読んで、もしそう感じてもらえたら、ぜひサポートをお願いいたします。いただいたご支援は、これからもこのような記事を書くために、大切に使わせていただきます。