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記事一覧
[ショートショート] 搾取される者
この世は不条理である。
煙草という麻薬が合法的に売買される中で、堂々と煙草を吸う事が出来ない現実。
法律で許されているものに対して、その仕打ちはない。喫煙者をまるで人殺しのような顔で見てくる市民。喫煙者はお店に入ることすら出来ない。街の片隅の吐き溜めみたいな所に集められ、寂しく煙草をふかすことしか出来ない。
俺らはその殆どが税金の煙草を高い金を払って、消費し続けている。公共事業が廻るのは俺ら
[ショートショート] 手洗う嫌われもの
何処にだってレベルの低い給料泥棒はいる。
新入社員みたいな仕事を何十年もやっていて、平気で会社に居座り続ける。普通の感性を持っていたらとっくに辞表を提出しているはずだ。
私の職場にいるそいつは、顔も宇宙人みたいで誰からも嫌われている木偶の坊で、何か嫌な事があるとすぐに勝手に休み、数週間後に医師の診断書を持って現れる。
鬱だかPTSDだか知らないが、そうやって何もやらずに嫌な事から逃げて逃げて
[ショートショート]ABO戦争
突然だが、血液型は長く戦争状態にある。
現在、人間の血液型は大きく分けて4種類A、B、AB、Oだ。
それらグループは、何かするわけでもなく、血液の性質によって4分類されただけの人達の組織であり、特別な活動もなければ何もない。ただ、唯一、あるとすれば、彼等は血液の性質が似ているがゆえにお互いの血液の共有をすることができるのだ。
4つのグループはそれぞれの戦略によって勢力を拡大させてきた。Aは真面
[ショートショート]弔辞のための人生
あいつは、いつも言っていた。
「俺の夢は、俺が死んだときに葬式会場に入りきらない程の大勢の人が集まって悲しんでくれることだ。大切な人に、最高の弔辞を読んでもらうことだ。その為には、人に尊敬され、感謝され、愛されなければならない。俺はそういう人になりたいんだ」
あいつは、そうやって、多くの人のために生きた。猛勉強して医者になり、苦しむ多くの人を救った。ボランティアを精力的に行い、毎年、多額の寄付
[ショートショート]ショートショートの作り方
ショートショートの作り方を教えられるほど、私は偉くはないけれど、こういう題名を付けてしまったからには、書かないわけにはいかないわけです。
ルールとか定義とか、そんなのは知らない。きっとウィキペディアに色々載っているだろうし、どこかの偉い作家さんがちゃんと定義しているはずです。
私が思うのは、たったの一つ。
オチがあればすべて良し。
ショートショートなんだから、短編小説じゃなきゃダメだ。物語と
【ショートショート】乗り物酔い
俺は生まれた時から乗り物酔いをするほうだった。
お母さんの抱っこで酔い、ゆりかごで酔った。
自転車も頑張って練習して乗れるようになったが、気づけば酔っていた。
車は当然、電車に飛行機、船にエレベーター
乗り物であれば何でもかんでも全部酔った。
理由は分からない。病院にも言った。
医者は赤ん坊の頃のトラウマによる精神的なものだと言って、カウンセリングを受け続けているが彼此30年、一向に良
【ショートショート】哲学者の嘆き
哲学が不足している。
哲学とは問いかけの学問。
ほんとうは何処にあるのか。
目の前のそれはほんとうなのか?
例えば、1+1は2なのか?
水槽に魚が1匹いました。
追加でもう1匹いれました。
魚は何匹なのか?2匹?
その魚はもう1匹に食べられるかもしれない。
そしたら、魚は1匹だ。
なぞなぞじゃなく、科学とは決められた前提条件のもとに成り立つ法則でしかないということだ。
じゃあ、1とは
【ショートショート】新しい生活様式
時代は2020年、オリンピックが日本で行われる事が決まってから人々は浮き足立っていた。
公共事業で多くの公共交通機関が整備されて、新しいホテルが次々に建設された。外国人観光客の受け入れ体制は万全であった。
TVでは写るCM全てがオリンピック一色、企業の株価はぐんぐん上がり、日本中が期待間に溢れかえってきた。
だが、しかしだ。もはや周知の事実だが、アジア発の新型の病原菌でよるパンデミックが起こ
【ショートショート】視力回復
私は、生まれつき目が不自由であった。
子供の頃はそれでも物を見ることが出来ていた。しかし、成長するにつれ、目が見えなくなっていき大人になる頃にはすっかり目が見えなくなっていた。
両親は、日本全国駆け回り、私の視力回復のために尽力してくれた。両親は、私のために人生の全てを捧げたのだ。日本屈指の医者は勿論、最強の魔術師や霊能力者、サプリメントや目のマッサージ、何でも頼った。頼りに頼り、頼りきって失