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入院体験が変わる新しい患者衣「lifte」ができるまで【後編】

2022年5月12日、クラシコは入院体験が変わる新しい患者衣「lifte(リフテ)」をローンチしました。肌触りや着心地の良さ、お見舞いのシーンでお客さまと気兼ねなく会える「きちんと見え」するデザインが特徴です。

前編では「患者衣プロジェクトが始まるまで」のストーリーを中心にお届けしました。後編はいよいよ「lifteの開発秘話」に迫ります。

クラシコ代表の大和と、「lifte」の企画・開発を担当した中尾、それぞれに語ってもらいました。

変更不可能な「既存の流通システム」

──前編は、患者衣の開発に向けて「流通」と「素材」、2つの課題があったという話がありました。

代表 大和(おおわ)

大和 そうですね。前回の話をまず整理すると、患者衣「lifte(リフテ)」は単に良いものをつくるという発想ではなく、全国の患者さんに届けることを前提に開発を進めてきました。そのためにはステークホルダーが少なくとも3者は関係してきます。

患者衣を実際に着る患者さん、運用をする医療従事者の方々、そして使用後に回収・洗濯・再納入をおこなうリネンサプライ会社のみなさんです。これまでの常識をすべて見直す、まったく新しい製品開発が求められました。

その際、流通面に強みがあり、患者衣への不満やニーズに対しどこよりも耳を傾けてきた株式会社エラン(以下、エラン)との共同開発が決まったことで大きな前進が見られました。

商品企画 中尾(なかお)

中尾 開発の初期段階でもっとも力を入れたのがリサーチでした。エランさんから全国で流通量の多いリネンサプライ会社を4社ほど紹介していただき、洗い方のちがいや流通の仕組みを徹底的に調べたんです。

こうして研究をすればするほど、既存の患者衣が、従来のシステムに最適化されているため、変えてはいけない部分が多くあることを知りました。そこを崩してしまえば、洗濯がしやすく、長く使え、たたみやすいといった利点までもが失われてしまいます。

ただしその結果、生地やデザインに対する不満が患者さん側にあふれていたことも事実です。エランのユーザー調査では、複数の問題点が指摘されるかたちとなりました。

エランによるユーザー調査より

中尾 一方で新しい発見もありました。「素材」に関する課題がクリアできれば、これまでの常識を変えられるということです。

激しく洗っても風合いが落ちず、色落ちも少ない素材を開発できれば、患者さんだけでなく、医療従事者の方々やリネンサプライ会社にとっても、運用がしやすい患者衣をつくることができる。

ここから、素材開発をコアに据えたプロジェクトがスタートしました。

新素材を開発「着心地と耐久性」の両立

──開発にかかった2年半は、その多くを「素材」の試作に費やしてきました。どのような試行錯誤があったのかを教えてください。

中尾 一緒に素材開発をする生地メーカー探しから始まったのですが、ここがまず大変でした。患者衣についての知識やノウハウがある生地メーカーであるほど、限界がどこにあるかも理解されていて、既存の枠を超えるような挑戦がなかなかできなかったんです。

そのなかで「絶対に成功させましょう!」と言ってくれた、生地メーカーと染工所がありました。患者衣に対するノウハウこそ無かったものの、医療の現場を変えることへの熱意があり、私たちクラシコとエランさんの想いをともにしてくれました。

大和 特に洗濯工場での試験は苦労が多かったですね。何度も挑戦した記憶がありますが、中尾さんは正確に覚えてますか?

中尾 素材開発の際に、全部で14種類の生地の試作品をつくりました。洗濯工場では同時に設計を変えた4〜5種類、最低でも6回は試験を繰り返しました。とにかく数をこなすことで知見をため、ブラッシュアップを続けたんです。

大和 最終的に、工業洗濯を85回実施しても毛玉が出ず、柔らかさ・風合いを長持ちさせることに成功しました。リネンサプライ会社の基準をクリアしただけでなく、ファッション性を感じさせるシャンブレー調生地の採用や、着丈や色味にもこだわった「きちんと見え」も同時に実現しています。

──試作品の完成後、病院でのトライアルを実施したと思います。実際の反応はどうでしたか?

中尾 1回目は試作品を医療従事者の方に、2回目は患者さんに実際に配ってみてのフィードバックをいただきました。自信作ではありましたが、初回は複数の改善点が見つかり、より現場を意識したデザインに再調整しました。

具体的には、どんなたたみ方でもサイズがわかる工夫や、やせ型の女性でも胸元がはだけないように結び紐を2ヶ所に用意するなどです。およそ380名に向けて実施した2度目のアンケートでは「明日からさっそく着たい」などの好評を得ることができました。

私たちがもっとも力を入れてきた素材についても、肌触りがよく温かい、体にフィットする感覚がある、柔らかな色合いに心が落ち着く、などの感想をいただくことができました。

入院体験を変える「lifte」とクラシコの挑戦

──最後に、これからクラシコが目指す新たな世界について、展望を聞かせてください。

大和 「メディカルアパレルのグローバルNo.1ブランド」を目指す。それが私たちが掲げるビジョンです。それによって成される社会は、世界中の医療現場に、もっと人間的で、感性的で、直感的な景色が広がる世界です。

着るものさえ特別な消耗品・備品という、衛生と安全に偏った扱いになってしまう病院の非日常を変えたい。昔から変わらない医療現場の「当たり前」を、もっとアップデートさせていきたい。

クラシコはこれまで、医療従事者向けのメディカルアパレルに限定した商品を主軸にラインナップを広げてきましたが、今後はもっと広くメディカルやヘルスケアの領域に対して展開する予定です。

今回発売された、入院体験が変わる新しい患者衣「lifte」は、まさに私たちの新たな挑戦そのものだと考えています。

中尾 私たちはモノづくり企業であり、モノを通したコミュニケーションでしかお客さまとかかわりを持てません。だからこそ、それを使う人・着る人にとって価値があるものをつくりたいんです。

今回の「lifte」もまた、患者さんにとっての価値となり、ほんの少し気持ちが軽くなるような、そんな体験をお届けできたらと思っています。

* * *

入院体験が変わる新しい患者衣「lifte」ができるまで【後編】【前編】はこちら)、いかがだったでしょうか。「lifte」を通じて、患者さんを含めたより広い医療環境の領域に新しい価値を提供していきたいとクラシコは考えています。

ぜひ、その世界観を体験してみてください。

※当記事は2022年5月に初掲載されたものです。


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