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入院体験が変わる新しい患者衣「lifte」ができるまで【前編】

「入院している患者さんは、患者衣に不満があるのでは?」

長年、医療現場と向き合い続けたクラシコは、いつしかそんな問いを抱くようになりました。実際にリサーチをすると、薄くゴワゴワした生地の質感や着崩れに対する悩み、袖を通したときに気持ちが沈むなどの意見が集まり、予感は確信になりました。

そして、2022年5月12日。

クラシコは入院体験が変わる新しい患者衣「lifte(リフテ)」をローンチしました。肌触りや着心地の良さ、お見舞いのシーンでお客さまと気兼ねなく会える「きちんと見え」するデザインが特徴です。

本来であれば、もっと早い時期にお届けをしたかったのですが、最終的には構想から5年、着手から2年半の歳月を要しました。解決しなければならない課題がいくつも立ちはだかったのです。

そこで今回、これまで変わらなかった患者衣を「クラシコがどう変えたのか?」を伝えるため、noteに開発ストーリーを綴ることにしました。

「袖を通した瞬間に、少しでもほっとしてもらいたい」

そんな願いを込めた「lifte」は、これからの入院体験をどのように変えるのか。医療現場の未来について一緒に考える機会になれば幸いです。

語り手は、クラシコ代表の大和と、商品部部長(※執筆当時)の松永、商品企画担当の中尾、以上3名です。

私たちが「入院体験」を変えたかった理由

──2年半をかけた「lifte」がついに発売となります。まずは開発のきっかけについて教えてください。

代表 大和(おおわ)

大和 2015年頃から少しずつ、患者衣に対してのニーズを感じてきました。ある大学病院の関係者から相談を受けたり、今回の開発メンバーである中尾も虫垂炎で1週間の入院をした際に不満を抱くなど、きっかけとなる出来事が重なりました。当時はほかに抱えるプロジェクトが忙しかったこともあり、本格的な検討を始めたのは2018年の話になります。

松永 2018年の時点で、患者衣の運用状況や実態を把握するため、2〜3ヶ所の病院や関連施設を訪問しました。そのときに「良いプロダクトはつくれそうだが、流通させるのは難しそう」と感じたのを覚えています。

既存の流通システムでは、リネンサプライ会社が患者衣を病院から回収し、洗濯・アイロン掛け、再び納入、というサイクルで運用します。この仕組みに乗らなければ全国の病院には届けられません。

課題は、強い洗剤・薬品を扱う工業洗濯と、しわを伸ばすロール仕上げ機への対応です。通常の素材ではこれらのクリーニングに耐えきれず、だからといって自社ECサイトでの販売ではお届けできる範囲が限られてしまいます。


──事前調査の段階では「開発は難しい」との判断でしたが、あきらめることなく開発を続けてきました。

商品企画 中尾(なかお)

中尾 私は以前、大学病院で看護師をしていた経験があり、その頃から医療現場のモチベーションを高めるために、美しさや可愛さ、カッコ良さという感性的なものが必要だと感じていました。クラシコに転職後はナースウェアを中心に手がけてきましたが、自分自身が2015年に入院したことをきっかけに、患者衣にも力を入れ始めます。

病気って、つらいじゃないですか。自分が死ぬかもしれない、あるいはそれに匹敵するような病気の治療を受ける人もいるわけです。そんなマイナスな気持ちの患者さんに対して、少しでもほっとしてもらえる患者衣をつくりたいと考えていました。

また同時に、安価で、相応の品質のものが大量に流通するメインストリームもひっくり返したかったんです。それが実現できなければ、どんなに優れた患者衣も一部の人だけのものとなってしまう懸念があったためです。

課題をともに乗り越える、共創パートナー登場

──患者衣「lifte」の開発は、2019年9月から本格化しました。当時の状況について詳しく教えてもらえますか?

大和 開発を進めるにあたり、まず「流通システム」の壁を乗り越える必要がありました。その問題が2019年の9月に解決されたんです。きっかけは、株式会社エラン(以下、エラン)との出会いでした。

「手ぶらで入院・手ぶらで退院」をスローガンに掲げる入院セットのパイオニア企業で、既存の患者衣に対して強い課題意識を持っていました。流通については強みがあるものの、モノづくりの部分では、前述した業界の制約によって難航していたというのです。

これは私たちにとって非常に大きな契機でした。流通に強みを持つエランさんと、メディカルアパレルのD2Cとして商品開発力に強みを持つクラシコ。

両社の掛け合わせは、一気に展開を加速させる十分な要因となりました。

2年半の開発期間を経て「lifte」発売へ

──2022年5月、いよいよ「lifte」が発売となります。現在の心境をあらためて教えてください。

大和 病院の暮らし(life)の質と気持ちをリフト(lift)する。これが「lifte」の由来です。人生を長く捉えると、本来は入院も生活の一部だと考えることができます。それにもかかわらず、現状は生活と切り離された場所に入院生活があると感じています。そんなのはおかしいですよね。
非日常とされてきた入院生活のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を、いまよりもっと暮らしの視点に近づける。患者衣「lifte」は、まさにクラシコのミッションを体現する商品になったと思います。

松永 私たちが掲げるのは「世界中の医療現場に、人間的で、感性的で、直感的な革新を生む。」というミッションです。

これまでは医師や看護師といった、医療従事者向けのプロダクトを中心に企画してきましたが、それらは最終的に誰のためになるかというと、患者さんのためです。クラシコとして、患者さんと近い距離でかかわれるところまでようやくたどり着けたのだと実感しています。

また、私が担ったのはプロジェクトの立ち上げまで。その後は中尾さんが中心となり、誰にも負けないほどの情熱で、力強く推進してくれました。その想いが感じられる、素晴らしい商品に仕上がったと思います。

中尾 「lifte」は2年半の開発期間を経てリリースされた自信作です。流通の課題をエランさんとの共同によりクリアした後も、工業洗濯に耐えられる素材の開発など数々のハードルを一緒に乗り越えてきました。

実際に着用される患者さんだけでなく、患者衣を運用する医療従事者の方、回収から洗濯・納入をおこなうリネンサプライ会社のみなさんなど、多くのステークホルダーの方々に満足していただける商品をつくる必要がありました。

だれもが無理だとあきらめてきた、患者衣による新たな入院体験。その一歩をついに踏み出すことができたんです。

* * *

次回、入院体験が変わる新しい患者衣「lifte」ができるまで【後編】をお届けします。具体的な商品開発から、医療現場と患者さんからのフィードバックをもとに改善した点、クラシコが目指す新たな世界についての内容です。

※当記事は2022年5月に初掲載されたものです。


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