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CIVILSESSION 18: AIRPORT

開催日:2018年10月20日
開催場所:東京・目黒 Impact HUB TOKYO

CIVILSESSIONはクリエイティブチームCIVILTOKYOのメンバーが様々な分野の方と行うアートセッションです。決められたキーワードを元に、発表者たちが一週間で作品を制作します。キーワード発表から一週間後にそれぞれの作品のプレゼンを行い、参加者の投票でグランプリを決定します。

第18回目のキーワードは「AIRPORT」。
CIVILTOKYOの3名とゲスト参加者4名の計7名で行いました。

ツカノツバサ(インタラクティブデザイナー/ブックコーディネーター)
・則竹貴子(アートマネージメント)
町田かおる(デザイナー)
松本遼(デザイナー)

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グランプリはツカノツバサに決定しました。

CIVILSESSION 18では「デザイン」を得意分野とする出場者が多くなりました。しかしその分野に固執した作品ばかりではなく、「料理」などこれまでのCIVILSESSIONでは出なかった新たなジャンルの作品も特色かと思います。また、AIRPORTという限定的な意味合いのキーワードを思い出深いものとして受け取る発表者や、対照的に単なる「もの」として受け取る発表者と、一つの単語の受け取り方にわかりやすく違いが現れた結果となりました。

ツカノはツアーコンダクターであった父に思い出深い旅の経験を聞き出し、その各ストーリーを料理で表現。大変な思い出には辛味を加えるなどの工夫を持たせ、観客全員に実食してもらうことでその思い出を共感させるという方法で、見事グランプリを獲得しました。

則竹は自身が空港にほとんど思い入れがないことを述べ、あえて思い入れを作るために空港へ宿泊した経緯を解説。その経験を元に、同行した写真家に撮影してもらった写真を使用して「別の場所へ繋がる」ことをテーマにした作品を制作しました。
町田は観葉植物を育てている自身の経験から、コバエが虫取りにかかる様子を飛行機が空港に降り立つ様子と重ね合わせ、それを元に新たな虫取りのデザインを提案。ターミナルタイプと滑走路タイプの2種を使い方と合わせてスケッチで紹介しました。
松本はairportという言葉の意味を調べていくなかで出会った空港にまつわる様々な面白い事象や物語をエッセンスとして自身が得意とするタイプデザインを制作。
伊藤は再会や別れなど、空港で起きる感情的な出来事を、夜空を飛ぶ飛行機の光の点滅とリンクさせました。空港付近で撮影したタイムラプス動画に映る飛行機の点滅をギターのフレットに重ね合わせ、光が指し示す音を奏でる動画を制作、披露しました。
杉浦は自身のパスポーの出入国記録を書き出した結果、15年以上前の空港での記憶も残っていることを説明。これは空港がドラマを生む場所であるからと考え、記憶の限りの思い出を絵に描き起こし、それを各出入国記録と照らし合わせた本を制作。
根子はAIRPORTを「飛行機を飛ばす場所」と捉えたことから、ブレインストーミングする際に考えを一見思いつかないようなところにまで発展させる(アイディアを飛ばす)WEBサービスを制作。3種のモード制作してその場で実演しました。


①則竹貴子(アートマネージメント)/airport

空港をきちんと感じようと思い、空港に宿泊した日の感覚を1つの作品にしました。
無機的な空間だと思っていた空港は虫の巣を覗き込んでいるようなどこかそわそわしてしまう1つの国のようで、果ての見えないそれはどこまでも続いているようでした。
夜の空港を切り取った六角形のパーツを繋げ、いつかどこかへ繋がる道を表現しました。

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②町田かおる(デザイナー)/コバエアポート

部屋を飛んでいるコバエが、コバエとり(コバエホイホイ)に降り立つ様子をみて、航空機がエアポートに着陸する様子に似ているなと思いました。
コバエとりをエアポートに見立てたら見た目にも洗練された、楽しいものになるかも。。と考えまして、「コバエアポート」というネーミングで、新しいコバエとりを2種類考えてみました。

①コバエアポート・ターミナル
「コバエホイホイ」という、コバエを玉ねぎ型の容器に誘引し殺虫する商品を元にして、容器を空港ターミナルに見立てたアイディアです。
中央のターミナルからコバエが好む香りを発生させ、香りにつられたコバエは航空機が降り立つように滑走路に降り立ち、ターミナル内へ入っていきます。暗闇では管制塔の光でよりコバエを引き寄せます。

②コバエアポート・ランウェイ(滑走路)
「粘着シート・ハエとりシート型」という、コバエを粘着性のあるシートに貼りつけて殺虫する商品を元にして、細長い形状を滑走路に見立てたアイディアです。
シートの香りにつられたコバエは航空機が降り立つように、コバエアポート・ランウェイの滑走路にとまります。暗闇では滑走路沿いの光でよりコバエを引き寄せます。

エアポートもコバエも昔から知っているものですが、じっくり考えたことも、両者を結びつけようと思ったこともなかったので今回よい経験になりました。

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③松本遼(デザイナー)

Coming soon...

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④伊藤佑一郎(写真家)/Score HND.2018.10.19.20:39-21:16

空港ってとても感情的な場所だと思います。
それは空港にいる人たちはみな遠く離れた土地や誰かに、それぞれの思いを馳せているから。希望を持って旅立つ人、何かを成し遂げようと降り立つ人、最愛の人との別れを惜しむ人、また最愛の人との再会を喜ぶ人。旅立ちの場所であり、別れの場であり、再会の場である空港は、その機能的な役割である「飛行機の発着場」というだけでなく、人の感情が激しく動く場所でもあるからそう思うのだと思います。
そしてそんな色々な思いをのせて飛ぶ飛行機も、同様に感情的な乗り物だと思うのです。夜、空を見上げると飛行機が飛んでいるときがあります。それは機体も見えずただの光の点滅でしかないのに、なにか自分の記憶を呼び覚ますような、感情のメタファーであるような気がしてきます。
今回の作品は空港に離発着する飛行機を題材にしたものです。空港に離発着する様子を昨日の2018年10月19日20:39~21:16までを20秒間隔でタイムラプス撮影し、その映像にギターのフレットをあて、飛行機の点滅を楽譜に見立てて音に変換した映像作品です。全部で113枚の写真で構成されている映像なのですが、一枚一枚の点滅にギターのフレットがリンクするように、113回に分けて弾き、映像とリンクさせました。ギター本来のコード進行とは違った点滅による和音は、不規則で決して美しい音色ではありませんが、光を音に変えることで、無機質な点滅に感情を与えたかった。そのための試みをしました。

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⑤ツカノツバサ(インタラクティブデザイナー/ブックコーディネーター)/YUMMY AIRPORT

ツアーコンダクターだった父親の壮絶な旅行の体験を、五感を通して体験できる「料理」という手法で表現した。5つの体験をシンボライズし、実際に観覧者に食してもらうことで、旅行体験の共有を企図した。

・Gimpo 1974 ―覚悟の韓国―
文世光事件の翌日、反日感情の高まる韓国へと向かう体験を表現。
その覚悟と緊張を体験してもらうべく、一つだけ激辛を忍ばせた。

・Irkutsk 1991 ―激動のソ連―
イルクーツク滞在中にモスクワでクーデターが勃発。
ソ連中の空港が全面閉鎖の恐れのある中、全83名のお客さまを無事に帰国させられるのか──。ビーフストロガノフを模したトッピングの中に、弾けるキャンディを仕込むことで暴動の刺激を再現した。

・Gobi Desert 1989 ―受難のモンゴル―
世界第4位の大きさを誇るゴビ砂漠。最高気温45度、夜には狼が現れるような過酷な環境の中、お客様が遭難してしまう。モンゴルを想起させるラム肉をベースに、捜索中の極限の緊張感を、カシスの酸味とマスタードの辛みで表わした。

・Denpasar 2001 ―戦慄のバリ―
デンパサールを離陸から2時間後、突如飛行機がUターンすることに。
「機長命令ですから」という不可解な理由の一点張りのせいで、乗客の間には「墜落への不安」が立ち込める──。カカオパウダーの黒さと苦味で不安感を、安堵の光をレモンピールで象った。

・Honolulu 1977 ―唯一のハワイ―
ハネムーンの甘い記憶をトロピカルフルーツとココナツリキュールで表現。一生に唯一の大切な思い出。

この作品作りを通して、親の「自分の知らない側面=仕事の顔」を垣間見ることができた。僕にとってのAIRPORTとは「いくら飛び立っても帰ってくる場所 ≒ 家族」だったのかもしれない──。

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⑥杉浦草介(デザイナー)/PASTPORT

18歳の頃から9年間ロンドンに住んでいた自分にとっては、初めて単身イギリスへ乗り込んだ時のことや、日本に帰国する誰かを見送る時の情景などをよく覚えています。同時に、一時的に日本へ帰る際もそうですし、イギリスからは他EU諸国へも安く行けるため、個人的には空港=海外へ行く場所、という印象が割と強くあります。
「パスポート」は、そんな空港という場所でよく利用するものの一つです。手元には期限切れのものを含めて3つのパスポートが残っていますが、ここには過去に自分が海外へ行った際の出入国記録がほとんど全て載っています(国によっては出国記録が押されない場合も有り)。この記録の中で船・電車の利用記録を除き、空港を利用したものだけを全て書き出してリスト化してみたところ、自分が「その日のその時に、その空港を利用したこと」を覚えているものがいくつかありました。

パスポートは個人の証明をするもので、気軽に人に見せたり渡したりするものでもありません。記載されている情報は名前や年齢を始め渡航履歴や、ある人には犯罪履歴などの、外的情報が載っています。でも個人の記憶や感想など、内的情報は何も載っていません。
スタンプが押されたその日に、その空港で、自分に何があったのか。この情景を記憶を頼りに描いてみました。自分は絵がうまくない上に、対象となる記憶自体も明確なものだけではないため、雑な描写のものが多くなります。発表の際にはこの空港での絵と、その背景に何があったのかを口頭で語りました。

もしこれが、そこら辺の路上や毎日通う学校、職場、駅などであれば、おそらく「何年何月何日の、その場所」と言われても思い出せないのではないかと思います。自分にとって普段とは少し違うドラマが発生し、それが日常とは少し違う「空港」という場所で起きたがために、これらを覚えているのではないか。空港とはそういった「ドラマを生む場所」なのではないかと思います。

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⑦根子敬生(デザイナー)/IDEA FLIGHT

飛行場は飛行機を「飛ばす」ところ。ということで、
ブレスト用ツールとして使える、アイデアを「飛ばす」WEBサービスを制作しました。

①ヘリコプターモード
キーワードに関連するワードを出して、アイデアを「近くに」飛ばす
(入力したキーワードの関連検索ワードを、ワードをクリックすると、その検索結果画面が表示される。)

②ジェット機モード
キーワードに関連しないワードを出して、アイデアを「遠くに」飛ばす
(ランダムな単語群から入力したキーワードの関連検索ワードから除外し、ワードをクリックすると、その検索結果画面が表示される。)

③ウォーキングモード
歩きながら、アイデアを飛ばす
(ブラウザ上で動く万歩計によって、30歩歩く毎にキーワードの関連検索結果の文章を読み出す)

精度上がったら公開します。

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