ナポリタンは口の周りも思い出もベタベタしちゃう
急に思い出して食べたくなる味の一つ。
ケチャップ味の、ナポリタン。
私が子どものころはスパゲッティというと、ナポリタンか、ミートソースしかなくて。
私はミートソース派だった。
ある日、ナポリタンを食べた。
小さな町の、洋食屋さんで。
お子様ランチがなかったから。
代わりにお子様ランチにつきものの、ナポリタンを頼んだ。
おいしかったけれど、食べきれなくて。
「もう口の周り、汚して!」
と母に叱られながら、紙ナプキンでギュッとふかれた。
ちょっと痛くて、悲しかった。
食べきれなかったことも。
母が不機嫌で、少しだけ乱暴だったことも。
きっと、不仲の父と一緒の外出が、いやだったのだ。
今になって思う。
それ以来、あまりナポリタンを頼まなくなった。
ずいぶんあとで、会社の同期が
「ナポリタン、大盛りで」と頼んでいて、驚いた。
「このギトギトしているのが好きなんだ~」
と平らげていた。
それを見て、いいものだな、と思った。
また食べたくなった。
家で作るときは、ソーセージかベーコンにたっぷりの玉ねぎ、ピーマン。
たっぷりのケチャップに、隠し味で少ししょうゆかソースをまぜて味つけ。
具をよ~く炒めて、ゆであがったスパゲティをあえて、「これでもか!」というほどケチャップを入れる。同時に、ソースかおしょうゆを少し。
もう一度よくフライパンをゆすってよく絡ませて、ジクジク焦げるくらいになったらできあがり。
パスタ、じゃなくて、なつかしいスパゲッティ・ナポリタン。
息子も小さい時に好きだった。
「ケチャップのスパゲッピー、作って~」
いつの間にか、「パスタにしよう」というようになり、カルボナーラやトマトソース、ボンゴレ・・・になった。
この間、久しぶりにナポリタンを食べた。
神保町の有名店、さぼうる。
カフェじゃなくて、喫茶店。
こんもり盛られた、ナポリタン。
「量が多いんじゃなくて、お皿が小さいんじゃないの?」といったことがある。実際お皿はケーキ皿くらいだけど、量は、たっぷり。
ひと口食べて、粉チーズを振る。
マシュルーム、玉ねぎ、薄いベーコン?
ほんのりケチャップの酸味、柔らかすぎないスパゲッティー。こってりソースが絶妙に絡んでいる。
多いな、と思いながらもぐんぐん食べられる。
食べ終わって、「あ~、食べた!」という満腹感。
学生気分。
口の周りはベタベタ感。紙ナプキンで、そっとふく。
久しぶりに、家でナポリタンを作りたくなった。
年末のお昼に作ろうっと。
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