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ろうそくの灯りを吹き消して、祈りの灯りを消さないように

ろうそくの灯りをつけてみた。
お風呂場で。

日常を変えてみたくて。
旅に出たような気持ちに、なりたくて。

きれいだった。
思ったよりも明るくて、驚いた。
バスタブの水面に映って、キラキラ光った。

でも、なんだろう。
私の思うろうそくとは、違った。

どうしてだろう。


ろうそくといえば、すぐに浮かぶのは誕生日のケーキ。

みんな、特別の日の主役になれる。
息子も小さい時から、ろうそくを吹き消すのは大好きだった。

焼いたケーキにプレートをのせて。


手作りのケーキを焼いて、灯りを消して、ろうそくを立てて。
いつもは暗闇を怖がるけれど、この時ばかりは、わくわくして。

得意げに、「フー!」と思い切り吹いた。

いつからか、ろうそくは私にとって、特別な時のものになったのかもしれない。


3,4歳の時、とくに寝つきが悪くて困ったことがあった。
ずっと、寝つきは悪かったけれど、この時は特に。
絵本を何冊も・・・5冊も6冊も読まされて、「もう1回!」
ぐずぐずして、ゴソゴソ起きだして。

疲れ果てた。
私は眠いのに。
先に寝てしまって、泣かれたこともあった。

ある時、「ろうそくは子どもの気持ちも落ち着かせます」という文を読んだ。

ろうそくの灯りをつけてみた。
「これを吹き消したら寝ようね」と約束して。


目をキラキラさせて、
「うん! うん!」

フーッと吹き消して。

その日は、コロリ、と寝た。

次の日も
「今日も、フーッて、やる!」

2日くらいやって、うまくいって。

3日目になると
「今日もやろうか?」
「今日はいいや」

あっという間に、元に戻ってしまった。
私も、気持ちの余裕もなくて。

いつの間にか、なんとなく寝るようにもなって。

でも、目をきらりと輝かせながら、吹き消した日。

なつかしくて。

灯りは消したけれど、思い出は消えない。

「きょうというひの ちいさな いのりが
きえないように
きえないように・・・」

『きょうというひ』という荒井良二さんの絵本。


雪の日に、少女が灯りをともしていく。
雪の中に。
小さなかまくらをつくって。

消えないように。
祈りを込めて。

その情景が美しくて。

思いのこめられた、ろうそくの灯り。

私も、祈りを込めて、誰かのために。

ろうそくをともしたくなって。

ろうそくって、心の灯りかもしれない。

今度ともすときは、
願いを込めて。

思いを込めて。


大きくなった息子と、吹き消してもいいかもしれない。

祈りを込めて。


※イラストはumicoさんからお借りしました。ありがとうございます。




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