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息子を見送ったいくつもの朝
朝ごはんは決めていた。
おにぎりふたつと、出し巻き玉子と、おみそ汁、お漬物。
![](https://assets.st-note.com/img/1645479717185-S7qBvDFMW0.jpg)
淡々と用意して、息子に声をかける。
ヒリヒリするような、緊張感は隠して。
食べ終わって、しばらくして準備して、家を出る。
受験の日。
「いってらっしゃい」と見送る。
会場に向かう、
学生服の背中に。
チラッと振り返って、小さく手を振ったことがあった。
息子も緊張しているんだろうな。
当たり前だけど。
そう思いながら見送ったいくつかの朝。
「もう親のできることはごはん作って、お金を出すだけよ」
息子が思春期で悩んでいたころ、先輩ママにそういわれた。
確かに、できることはそんなことくらい。
ごはんには、愛情をこめて。
お金には、学びへの思いを込めて。
あとは見守って。
時どき話を聞いて。
・・・話をしてくれる時は。
手をつないで通った保育園のあと。
小学校の初めのころ以外は、ずっと見送っていた。
手を振って、「行ってらっしゃい」と声をかけて。
その背中はどんどん大きくなって。
だんだん振り返らなくなって。
「いってきまーす」の声が低くなって。
離れていくことが
頼もしくもあるけれど、
寂しい方が大きかった。
子どもが新しいことに向かっていく。
そのことはうれしくて。
でもふとつぶやいてしまう。
「私、何もしてあげられていない」
あ、この言葉は。
『おおかみこどもの雨と雪』のラストシーンの言葉だ。
「私、まだ何もしてあげてないのに」
おおかみこどもの姉弟を育てた、母・花。
弟の雪が森に行って、もう戻らないという時に、呼びかける。
「私、あなたに何もしてあげてない」
この映画を見た時は、「あれだけのことをしたのに」と思った。
息子は小学生だった。
でも今はわかる。
親はそう思う。
いや、私はそう思う。
何もしていない。
もっと、ちゃんと、すれば、よかった、と。
後悔と、反省。
情けないくらいに、本当に、心からそう思っている。
できなかったことが、頭を駆け巡る。
ごめんなさい。
息子の進路はまだ決まっていないけれど。
見守る、しかできない。
※イラストは笑い猫さんからお借りしました。ありがとうございます。
![](https://assets.st-note.com/img/1645481141657-48OIwUojWm.png?width=800)
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