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息子を見送ったいくつもの朝

朝ごはんは決めていた。
おにぎりふたつと、出し巻き玉子と、おみそ汁、お漬物。

本当に、なんでもない朝ごはん

淡々と用意して、息子に声をかける。

ヒリヒリするような、緊張感は隠して。

食べ終わって、しばらくして準備して、家を出る。

受験の日。

「いってらっしゃい」と見送る。
会場に向かう、
学生服の背中に。

チラッと振り返って、小さく手を振ったことがあった。

息子も緊張しているんだろうな。
当たり前だけど。

そう思いながら見送ったいくつかの朝。


「もう親のできることはごはん作って、お金を出すだけよ」

息子が思春期で悩んでいたころ、先輩ママにそういわれた。
確かに、できることはそんなことくらい。

ごはんには、愛情をこめて。

お金には、学びへの思いを込めて。

あとは見守って。
時どき話を聞いて。
・・・話をしてくれる時は。


手をつないで通った保育園のあと。
小学校の初めのころ以外は、ずっと見送っていた。

手を振って、「行ってらっしゃい」と声をかけて。

その背中はどんどん大きくなって。
だんだん振り返らなくなって。
「いってきまーす」の声が低くなって。

離れていくことが
頼もしくもあるけれど、
寂しい方が大きかった。

子どもが新しいことに向かっていく。

そのことはうれしくて。

でもふとつぶやいてしまう。
「私、何もしてあげられていない」

あ、この言葉は。

『おおかみこどもの雨と雪』のラストシーンの言葉だ。

「私、まだ何もしてあげてないのに」
おおかみこどもの姉弟を育てた、母・花。
弟の雪が森に行って、もう戻らないという時に、呼びかける。

「私、あなたに何もしてあげてない」

この映画を見た時は、「あれだけのことをしたのに」と思った。

息子は小学生だった。

でも今はわかる。

親はそう思う。
いや、私はそう思う。

何もしていない。

もっと、ちゃんと、すれば、よかった、と。
後悔と、反省。
情けないくらいに、本当に、心からそう思っている。

できなかったことが、頭を駆け巡る。
ごめんなさい。

息子の進路はまだ決まっていないけれど。

見守る、しかできない。


※イラストは笑い猫さんからお借りしました。ありがとうございます。

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