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うちのおにぎりから広がる、見る、読む、考えること

息子の朝ごはんと、お弁当におにぎりをよく作った。
受験の朝。

片手で食べられて、量を調整しやすい。
お昼に食欲がないとか、眠くなりそうだと思っても残しやすい。

これは朝ごはん用

いくつか作った中で気に入ってくれたのは、たくあん入り。

はじめはたくあんを細かく切って、すりごまと一緒にご飯に混ぜて握った。

「おいしかったけど、もう少し大きく切って具にしたほうがいいな。
しっかり味がするし」
息子はたくあん好きなのだ。

次はそうした。
やはりごはんには、白ごまを混ぜて。

お漬物とごはんの一体化。

相性はいいに決まっている。


長編の一節が、私をつかんだ。

戦場。
といっても合戦の最中ではない。
合戦に備えての石垣づくり。

石垣を作る名人を塞王さいおうという。

その頭・飛田匡介とびた きょうすけが石垣を積んでいるところへ、殿(京極高次)の妻・初から昼に握り飯が届く。

最後に取ろうとしたら、添えられるおしんこが、なくなっていた。
「かまわない」という匡介に、持ってきた次女・夏帆がいう。

石垣を摘む石がひとつ足りないとどうなのか、と。
それと同じだから、とおしんこを持ってこさせる。

城の住人の覚悟も示すものだった。

550ページを超える大長編『塞王の盾』(今村翔悟)の、ほんの小さな一場面。
今期の直木賞受賞作だ。

戦争は上に立つものと戦う武士ばかりが描かれる。
だが、その前に石垣や城を築き、守ろうとする職人がいる。
破ろうとする武器・鉄砲を作るものがいる。
その戦いを描いて、腹の底まで迫ってくる。

戦いは、その場で采配を振るい、刀を振り、鉄砲を撃つものだけではないのだと。

底には痛いほどの平和への希求があった。

匡介も戦によって孤児になった。
民を戦から守りたい。
その一心で石垣を積む。


今だからこそ、改めて思う。
平和を守るため。
戦の前にできることを。

握り飯は、石垣を積み、石垣の陰で食べるよりも。
青空の下で。
食卓で。

ゆっくりほおばりたい。
ほおばってほしい。



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