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美術館をもっと身近に感じる~原田マハ

「やあ、また会いに来たよ」と初老の男性があいさつする。
少しくすんだ青い服を着た女性に。
女性の名はマダム・セザンヌ。

印象派の画家・セザンヌの妻の肖像画だ。

20210503マダムマネ

そんな美術館とのつきあい方がとても素敵で。

『デトロイト美術館の奇跡』

美術館には一生足を踏み入れないだろう、自分には縁がない存在だ。
そんな風に思っていた労働者が、妻の誘いで美術館に行く。そして足蹴く通うようになる。ある小説の始まりだ。

原田マハの『デトロイト美術館の奇跡』。
短くてすぐに読めるけれど、胸が熱くなる。

ストーリーは美術だけじではない。ある戦いが始まる。

行きつけの店のように常設展を覗く

美術館へ行きつけのお店みたいに、通う。
そうなればいい。
市民、区民は無料でいつでも常設展を見に行ける。
そうなったらいいな。

「僕はあの絵が好きで、よく見に行くんだ」
「あら、それも素敵だけれど私は2階の彫刻が好きよ」

そんな会話が日常になったらすてきだ。

今はほとんどの公立美術館はお休み中(東京)。

でも愛する行きつけの場所なら、そういう中でも応援したい。
開いたら、また通う。
私が愛するのは、東京国立博物館。
年間パスポートを持って、しょっちゅう見に行く。年パスだから、30分だけでもいいのだもの。

特別展も好きだけれど、常設展の焼き物や着物、日本画や仏像を見るのも楽しい。
東洋館のエキゾチックな彫刻や絵画、布も。

展示替えがあるので、時々見ないと次々に変わっていく。
茶道具も、着物も、器も、季節に合わせて。
たとえば今なら燕子花(かきつばた)のモチーフが出ていたかも。
これは尾形光琳の八橋蒔絵硯箱。燕子花の花が螺鈿(青貝の内側のキラキラしたところ)で描かれている。

20210503光琳八橋蒔絵硯箱

根津美術館には、同じく尾形光琳の燕子花屏風があり、毎年この時期に展示される。(5月11日まで休館)

20210503燕子花図屏風

美術館では、「これを見たい」とまっしぐらに向かってもいいし、そぞろ歩いて好きなものを探すのも好き。

好きな場所に、もっと心を通わせたい。できることをしたい。
好きだと周囲に伝えること。
リピーターパスなどを手に入れること。
メルマガに登録すること。
なんでもないことからでも。

楽しみ方がいろいろある。オンラインや、YouTubeの解説。
私もこれから見ようっと。

デトロイト市民が起こした奇跡

デトロイト美術館の話に戻ろう。

デトロイト市は財政難に陥る。
絵を売ってしのごう、と美術館の閉鎖がほぼ決まりかけるが、市民が立ち上がる。
美術館スタッフだけではなく、普通の、一般市民を巻き込んでいく。

大金持ちが寄付するだけではない、私たちみたいな普通の人が5ドルとか、1ドルとか、寄付していく。自分たちのこととして。

そして奇跡が起きた。

デトロイト美術館は今もデトロイトにある。
妻を亡くした労働者が、妻に会いに行くようにまたあいさつに行く。
「また会いに来たよ」


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