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あなたの居場所はどこですか?~お探し物は図書室まで~

小学校の時から、私の居場所は図書室でした。
いじめられていたわけでもないし、普通に友達といた気もするのだけど、記憶はいつも図書室です。

小学校の時から乱読だった

毎日のように通っては借りて、図書カードが年に何枚もたまりました。
司書の先生がいた記憶はなく、カウンターにどなたがいたかも覚えていません。申し訳ないですね。

ただ名作シリーズ、伝記シリーズ、と読みたい本の本棚からどんどん選んでいました。

今も当時読んだ本はストーリーがさ~っと思い出せるものが多いです。
本の中に1,2枚入っていた挿絵とともに。

たとえば「小公女」「少女パレアナ」「野生の呼び声」・・・子供向けに書き直された「レ・ミゼラブル」や「月と六ペンス」。

伝記なら「ストウ夫人」「ナポレオン」「高峰譲吉」「フランクリン・ルーズベルト」「リンカーン」「ナイチンゲール」・・・。

そのころから、方向性はバラバラですね。

小学校の時に通った文庫で出会った本

小学校の卒業半年前に転校をしました。
中途半端な時期で、気持ちも落ち着きませんでしたし、居場所がないような気がしました。

でも家のそばに「文庫」と呼ばれていた小さな図書館というか、図書室を見つけたのです。
私はひとりで毎日のようにそこに通いました。

そこで借りた本で、今も覚えているのはドラ・ド・ヨングの「あらしの前」「あらしのあと」です。

今は岩波少年文庫から出ているんですね。当時はハードカバーでした。

オランダの片田舎で暮らしていた温かな一家。そこでナチスが進行して、家族は引き裂かれます。
家族一人一人の性格が生き生きと描かれていました。

そして、「あらしのあと」を読むと、ほとんど説明もなく、私の一番好きだった家族のひとり・ヤンという少年がいなくなっていました。
ショックでした。
「なぜ!なぜ?」と読みながら叫んだことをおぼえています。
第二次大戦という「あらし」の激しさ。

作者は実際にオランダ人で、ナチス侵攻の数日前にモロッコに逃れたそうです。今再読すると、きっと全く違う風景が現れることでしょう。

私の転校という小さな小さなあらしとは比べ物にならず、比べたわけでもありません。
ただくっきりとその本の表紙や感触までもが残っています。

居場所を見つけていく「お探し物は図書室まで」

小学校まで私が通っていたのは「図書室」です。
図書館よりも少し小さくて、守られているような空間でした。

「お探し物は図書室まで」(青山美智子・ポプラ社)も舞台はタイトルの通り、図書室です。
小学校に隣接した、コミュニティーハウスの一角にあります。

5人の登場人物が、悩みながら迷いながらふと図書室へ入ります。
そこで出会う小町さゆりさんという司書が秀逸。

とにかく大きくて、ずっと羊毛フェルトをやっているんですが、それを貸し出す本の「付録」としてくれるんです。
もちろん、本の選び方もすばらしい。

婦人服販売員や転職したメーカー勤務の男性、元雑誌編集者のお母さん、ニート、定年退職した男性。

私が一番共感を覚えたのは元雑誌編集者のお母さんです。
出産をして編集の仕事から離され、育児をしながら悶々とした日々を送る40歳の女性・夏美。

夏美は地球のような羊毛フェルトをもらいます。
忙しい、納得できない、悔しい・・・多くの感情に襲われた時に、ふとその地球儀を見ます。

コロコロ転がして、天動説と地動説を思い、ハッとします。

資料室に異動「させられた」。家事も育児も「やらされている」。自分が中心だって思うから、そういう被害者意識でしか考えられないのかもしれない。(中略)
地球は動いているのだ。朝や夜は「来る」ものじゃなくて「行く」ものなんだ。
今、私は何をしたい? どこに行きたい?
                (「お探し物は図書室まで」より引用)

夏美は行動を起こします。

このあとも、まだまだストーリーは続きます。
この本のいいところは、掘り下げていること。
「普通だったらきっとここで終わるだろうな」という話の、その先までグイッと突き詰めています。

ニートの浩弥くんは居場所を探しています。その感じはニートでなくても、「あ、わかる」と胸につまされます。

定年退職した正雄さんも、どんどん変わっていきますし、書店で働くお嬢さんとのやり取りがとてもいいです。

短編集のようで、読むと全体を通したストーリーがあり、読みごたえもありました。

この本は今年の本屋大賞の候補に入っています。選ばれても選ばれなくても、おススメしたい1冊です。
息子も「読みたい」といっているので、この後に渡します。
感想を聞きたいけれど・・・社会人の話ばかり。どうでしょうね。

私のかつての居場所が図書室だったように、登場人物にも居場所が見つかります。この本を読んで居場所を見つける人がいるかもしれません。

あなたがもしも居場所を探しているなら、見つかりますように。


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