読書人間📚『夜の谷を行く』桐野夏生
『夜の谷を行く』桐野夏生
初出2014年11月号〜2016年三月号 / 月刊文藝春秋
2017年3月 文藝春秋刊行
2020年3月 文庫第一刷
桐野さんの小説は、その時代の嘆きを記録に遺すかのように書かれる作品ばかりで、今回も日本の過去を思うことにより、現在の日本を考えることになりました。
わたしが生まれる前の時代、1971〜72年の「連合赤軍事件」を題材とした物語です。
深く掘り下げたことがないわたしにも一気に読み終える迫真の内容です。
また、弁護士、大谷恭子さんの解説までも、驚嘆する思いです。この事件とその内側にいた名の知れぬ女性たちの、もしかしたら? と言う内情に想いを馳せることができ、更に重厚な読書時間となりました。
時代の革命を求めた若者たちにより「総括」の名の下に12人の死者を出す残酷な殺人行為が行われた。「総括(リンチ)」により命を落とした者を「敗北死」とし、「総括」を助ける好意を「援助」と名付ける行為。事実、暴力により内臓破裂死や、食事をろくに与えず極寒の中縛り付け死に至らせ、アイスピックで何度も刺した上に絞殺、などの非道な行為が行われた。
学生や市民の運動は爆弾や銃にエスカレートし、その中から生まれたのが赤軍派の革命左派。この革命左派は「婦人解放」を掲げ、女性メンバーの割合が多かったと言います。
「女性兵士」となった、中には子を持つ彼女たちの心の内、真に願った野望を、桐野さんの物語によりあぶり出されます。
これから先、誰にも明かされないであろう、誰かの嘆きと怒り、悲しみの慟哭に寄り添ってみてもいいかもしれません。
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